インターネット上の掲示板やSNSでの心ない言葉により、精神的なダメージを受ける人が増えています。特に「デブ」「痩せろ」といった身体的特徴に関する中傷は、摂食障害やうつ病を引き起こす要因となり得ます。本記事では、こうした発言に対して発信者情報の開示請求が可能かどうか、またその法的根拠や実例を解説します。
「デブ」や「痩せろ」は誹謗中傷として認定されるか?
侮辱的な言葉であっても、開示請求の対象になるかどうかは、文脈や被害の程度によります。「デブ」「痩せろ」といった言葉が単発で投げられた場合、それだけでは開示が認められない可能性もありますが、繰り返されたり人格を否定するような文脈で使われている場合は、名誉毀損罪や侮辱罪、プライバシー侵害に該当することがあります。
特に「見た目を否定するような発言」が本人に与える影響が大きいと医師の診断書などで証明できれば、開示請求が認められた事例も存在します。
開示請求が認められるための要件とは
発信者情報開示請求は、プロバイダ責任制限法第4条に基づき、以下の条件が必要です。
- 違法なコンテンツが存在している
- 被害者が明確に特定されている
- 違法行為によって権利が侵害されたと認められる
- 開示が必要かつ相当である
これらを満たすことで、プロバイダや掲示板運営者に対して、発信者のIPアドレスやログイン情報の開示を求めることができます。
実際に開示が認められた裁判例
例えば、X(旧Twitter)上で「死ね」「消えろ」といった発言だけでなく、「豚みたい」「見てるだけで不快」といった外見に対する誹謗を受け、うつ症状を発症したという事案では、発信者情報の開示と損害賠償が認められた例もあります。
このように、「しね」などの直接的な暴力表現がなくても、継続的・反復的に身体的特徴を侮辱する発言であれば、法的に対抗する余地があります。
アイドルや有名人への中傷も対象となるのか
有名人に対する批判は「公共性」や「表現の自由」が考慮されやすいですが、単なる個人攻撃や悪意ある言葉の投げかけは許容されません。本人が明確に特定できる状態で、外見に関する継続的な誹謗中傷が行われていた場合、たとえ芸能人であっても、名誉毀損などの対象として開示請求が可能となることがあります。
特に、ファンや事務所などが代理人となって対応するケースも増えており、発信者の特定が進められる傾向にあります。
摂食障害・うつなどの精神的被害がある場合の証拠
開示請求や損害賠償請求を行う際には、精神的被害を立証することが重要です。以下のような書類や証拠が有効です。
- 医師の診断書(摂食障害・うつ病の診断)
- 誹謗中傷のスクリーンショット
- 被害を受けた日時・内容を記録したメモ
これらを準備することで、「発言と被害との因果関係」を証明しやすくなり、開示請求の成功率も高まります。
まとめ:精神的被害が明確なら「デブ」発言でも開示請求は可能
「デブ」「痩せろ」といった表現であっても、人格を否定するような文脈や継続性があり、かつ被害者に実際の精神的損害が出ている場合には、発信者情報の開示請求や損害賠償請求が認められる可能性があります。「しね」などの過激な言葉だけでなく、見た目を揶揄する言葉であっても深刻な影響を及ぼすことがあるため、泣き寝入りせず法的手段を検討することが大切です。