近年、SNSやチャットアプリを通じて「加工された身分証の画像」を見せ合うケースが増えています。こうした行為は一見軽い冗談のように思えますが、実際には法的リスクを含んでいる可能性があります。この記事では、身分証明書を加工して他人に見せる行為が犯罪にあたるのかどうかを、具体例とともに解説します。
加工された身分証画像の取り扱いは要注意
たとえ冗談であっても、身分証の画像を加工する行為には「有印公文書偽造罪」や「私文書偽造罪」が問われるリスクがあります。特に運転免許証やマイナンバーカードなど、行政機関が発行する証明書を対象にした加工は、厳重な注意が必要です。
実際に、「加工して見せただけ」「使っていない」という主張が通らないケースもあります。加工して表示した時点で、偽造の意思があったとみなされる可能性があるからです。
写真を見せるだけでも偽造に該当する可能性
「販売や利用目的ではなく、知人に見せたいだけ」という場合でも、加工の程度や状況によっては犯罪構成要件に該当するおそれがあります。特に以下のような場合は要注意です:
- 年齢や氏名、生年月日などの公的情報を変更している
- 加工内容があたかも本物と区別がつかないレベル
- 相手に「本物だ」と誤解させる意図がある
このような条件がそろえば、「行使の意図があった」とされる可能性があります。
コラージュやネタ画像でも例外ではない
ネット上では「ネタとして加工した身分証をアップした」などのケースが見受けられますが、こうした行為でも警察が摘発した事例があります。特に、SNSや掲示板での拡散が伴うと、名誉毀損や信用毀損にも発展するリスクがあります。
例えば、偽造身分証画像をLINEで送信しただけで、警察がサイバー犯罪として操作に入ることもあり、想像以上に重い事態になることがあります。
犯罪として成立しうる関連法規
身分証の加工と表示によって問われうる主な法令は次のとおりです:
- 刑法第155条:有印公文書偽造罪
- 刑法第159条:私文書偽造罪
- 刑法第233条:信用毀損・業務妨害罪
これらは「未遂」であっても処罰対象となり得るものであり、単に見せる意図であっても法的リスクが高いと言えます。
また、未成年がこのような行為に関与することで、将来的な就職や進学などに影響する可能性もあるため、極めて慎重な対応が求められます。
安全な情報管理の意識を
現代社会では、身分証の画像も立派な「個人情報」です。加工・使用の可否に関係なく、写真を第三者に見せたり加工したりすること自体が、プライバシー侵害やなりすまし犯罪のリスクを高めます。
情報を共有する際は、「公開してよいものか」「加工の意図が正当か」を十分に見直し、軽はずみな行動を避けることが重要です。
まとめ:身分証の加工は軽い気持ちでも慎重に
たとえ知人に見せるだけでも、身分証を加工した画像を作成・提示する行為には法律上のリスクが潜んでいます。特に公文書を模した場合は「犯罪」として処罰される可能性もあるため、ネタや冗談で済まされるものではありません。
個人情報と法律に対する正しい理解を持ち、情報の取り扱いには常に責任を持つことが求められます。