刑法における正当防衛の成立要件とは|判例を通じて理解するテスト対策のポイント

刑法総論の学習において「正当防衛」は重要なテーマのひとつです。法学部の試験では、判例と結びつけて各要件を論述させる設問がよく出題されます。本記事では、正当防衛の成立要件を明確に整理し、具体的な判例も交えてわかりやすく解説します。

正当防衛とは何か|刑法36条の基本構造

正当防衛は、刑法36条1項に基づき、違法性が阻却される行為として認められます。条文は「急迫不正の侵害に対して、自身または他人の権利を守るために、やむを得ずした行為は、罰しない」と規定しています。つまり、要件を満たせば違法性がないと判断されるのです。

この条文を要素分解すると、以下の3つの要件が必要です。

  • ① 急迫不正の侵害
  • ② 防衛の意思
  • ③ 相当な防衛行為(必要性・相当性)

急迫不正の侵害とは何か

「急迫」とは差し迫った危険が現実に存在することを意味し、将来の危険や過去の危険では成立しません。また、「不正」とは法秩序に反する違法な侵害行為を指します。相手が正当行為をしていた場合は不正な侵害とは認められません

代表的な判例:最判昭和37年5月24日では、攻撃が終わった直後の反撃について、「急迫性を欠く」として正当防衛を否定しました。つまり、反撃のタイミングにも厳格な判断がなされます。

防衛の意思の存在

次に、「防衛の意思」が必要です。これは、自己または第三者の権利を守るために行為したという主観的要件です。単に怒りや報復感情だけで行動した場合は正当防衛とはなりません。

ただし、判例は防衛意思の「認定」に寛容な傾向にあります。たとえば、防衛行為と認められる客観的状況があれば、怒りの感情があっても防衛の意思があったと推定されることもあります。

防衛行為の相当性

正当防衛の核心はここにあります。行為が「やむを得ない程度」でなければ、防衛としては認められません。つまり、必要性(手段の適切性)と相当性(程度の均衡)が求められるのです。

重要判例:最判昭和54年11月16日は、刃物をもった加害者に対してナイフで反撃した被告人の行為について、「やむを得ない手段であった」として正当防衛を認めました。

過剰防衛との関係

必要性や相当性を超えた場合、正当防衛は成立せず、代わりに刑法36条2項の「過剰防衛」が問題となります。過剰防衛は、正当防衛に準じたものとして刑が減免される制度です。

判例における判断基準:過剰防衛においては、「防衛の意思があったかどうか」と「行為が明らかに過剰であったか」が争点になります。特に相手が無力化された後の暴行は、過剰防衛ではなく単なる暴行罪になる可能性があります。

テスト対策としての論述ポイント

正当防衛に関する論述問題に対しては、以下のように構成するとよいでしょう。

  • 1. 刑法36条の条文構造の要約
  • 2. 3要件の解説(急迫不正の侵害、防衛意思、相当性)
  • 3. 判例を1つずつ挙げて論点と結論を示す
  • 4. 過剰防衛との関係を述べる

例えば、「相手がナイフを持っていた状況で、被害者が刃物で応戦した事例(昭和54年最判)では、正当防衛が認められた」というように、判例を端的に紹介しながら論述するのが効果的です。

まとめ:正当防衛の成立要件は判例で具体化する

正当防衛は、刑法上の重要な違法性阻却事由の一つであり、試験でも頻出です。単なる条文の理解にとどまらず、判例によってどのように具体化されているかを押さえることが得点の鍵となります。実務でも重要な概念であるため、ぜひ繰り返し復習し、正確な理解を深めていきましょう。

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