近年、SNSでの情報発信が活発になる中、選挙とSNSの関係性も大きな注目を集めています。とくに選挙のたびに話題となるのが「投票用紙の写真投稿」に関する違法性と、それを促すような政党の行動に対する法的な評価です。本記事では、投票用紙の撮影がなぜ公職選挙法違反になるのか、またその行為を促す団体や政党が違法となる可能性について、法律的観点から詳しく解説します。
投票用紙の撮影とSNS投稿は公職選挙法で禁止されている
公職選挙法第57条では、選挙の投票の秘密が保障されており、他人に内容がわかるような行為、たとえば「投票用紙の撮影」は投票の秘密を侵害する行為として違法とされています。さらに、撮影された投票用紙をSNSなどへ投稿することで、その投票内容を第三者に明示する行為となり、違反に該当します。
実際に過去には、投票用紙を撮影しSNSに投稿した人が警告を受けたり、捜査の対象となった事例もあります。つまり「実害がなくても違法とされうる行為」なのです。
政党が投稿を促す行為は「幇助罪」にあたるのか?
問題は、ある政党が「投票用紙に書いて撮影してSNSに投稿しよう」と促すような内容をポスターや広告で示した場合です。こうした行為は、刑法第62条の「幇助」にあたる可能性があります。幇助とは、犯罪の実行を手助けすることであり、「違法なSNS投稿」を間接的に推奨・支援する行為と見なされるリスクがあります。
ただし、実際に幇助罪として成立するには、「違法性の認識」や「具体的な手段の提供」が問われるため、ポスターに記載しただけで即座に幇助罪が成立するとは限りません。状況により判断が分かれるケースが多く、明確な法的基準がないのが現状です。
違反が成立する可能性と注意すべき行動
一般有権者がうっかり投票用紙を撮影してしまい、それをSNSに投稿すると、意図がなくても公職選挙法違反として扱われる可能性があります。さらに、政党の働きかけがあった場合でも「本人が自ら行動したかどうか」が問われるため、投稿者個人の責任も重大です。
ポスターやキャンペーンで投稿を促す内容があっても、投票所ではスマートフォンの使用や撮影は厳格に制限されていることを忘れてはいけません。違反に問われるリスクを回避するには、選挙管理委員会のガイドラインを常に確認することが重要です。
過去の事例と警察・選挙管理委員会の対応
2020年には、某タレントが投票所内での写真をSNSに投稿し、厳重注意を受けた事例がありました。このケースでは違法性が問われ、マスコミでも大きく報道されました。
また、投票所での撮影が報告された場合、警察や選挙管理委員会が現地確認や調査を行うこともあり、選挙の公正性確保という意味でも厳しい対応が取られる傾向にあります。
まとめ:選挙とSNSの関係は慎重な対応が必要
選挙におけるSNSの活用が広がる中で、投票用紙の撮影や投稿は公職選挙法違反に該当するリスクが非常に高い行為です。また、それを促す行為を行った政党や団体にも、幇助や教唆といった法的責任が問われる可能性があります。民主主義を守るためにも、個々人が正しい知識を持って行動することが求められています。