交通事故にはさまざまなパターンがありますが、複数の車両と原因が重なる事故では、過失割合の判断が複雑になります。特に、車両部品の落下(タイヤ脱落など)と追突事故が連続して起こった場合、それぞれの責任はどのように分担されるのでしょうか?今回は「前方に飛んできたタイヤを避けて停止した車に、後続車が追突したケース」について、過失割合の考え方を解説します。
事故状況を整理:それぞれの立場と動き
今回想定される事故構図は次の通りです。
- A車:国道を走行中に、前方にB車から脱落したタイヤが転がってきたため、安全確保のために停止
- B車:対向車線を走行しており、整備不良または固定ミスによりタイヤが外れた
- C車:A車の後方を走行中で脇見運転していたため、停止中のA車に追突
このような三者関係における過失割合は、保険実務や判例上の考え方を基に慎重に判断されます。
基本原則:停止していたA車に過失はあるのか?
A車は危険を回避するために停止していたわけであり、過失は極めて小さい、またはゼロと判断される可能性が高いです。追突事故において、先行車がやむを得ず停止した場合、原則として後続車の過失が問われます(道路交通法第26条の2)。
したがって、A車が「急ブレーキ」などで不適切な停止をしたという証拠がなければ、A車の過失割合は0%と認定される可能性が高いです。
B車(タイヤ脱落車)の責任:危険物の飛来と管理義務
B車のタイヤが走行中に外れたことは、車両整備不良や点検ミスによる重大な過失とされます。部品の脱落が他車の走行に影響を及ぼすことは予見可能であるため、民法709条に基づく不法行為責任が成立しうる要件です。
実際の判例でも「積載物・車両部品の落下により他車が回避行動を取らざるを得ず、結果的に事故に至った場合、落下車両の過失は大きい」と評価されています。
C車(追突車)の責任:脇見運転という過失の重さ
後続のC車がA車に追突した原因が「脇見運転」であれば、前方不注視による重大な過失と評価されます。通常、追突事故の過失割合はC車:100%、A車:0%が原則ですが、今回は「A車がやむを得ず停止していた」という事情があり、C車の責任はより明確です。
ただし、B車のタイヤ脱落が直接の原因とも言えるため、結果としてB車とC車の双方に50%ずつ過失が割り振られるような判断もあり得ます。
想定される過失割合:判例・保険実務ベースの一例
このような事案において、仮に裁判や保険会社間で協議が行われた場合、以下のような割合が検討されることがあります。
- A車(被追突・停止中):0%
- B車(タイヤ脱落):50%
- C車(追突・脇見運転):50%
これはあくまでも一つの想定例であり、道路状況・天候・ドライブレコーダーの映像などによっても変動するため、最終的な過失割合はケースバイケースで調整されます。
まとめ:複合事故の過失は“原因ごとの責任”で判断される
- A車がやむを得ず停止していた場合は、過失0%の可能性が高い
- B車は整備不良による危険物飛来の責任が問われる
- C車の追突は脇見運転による重大な過失
- 総合的にB車とC車で責任分担されるケースが多い
複合事故では、事故原因の“きっかけ”と“結果”の両方を分析することが重要です。過失割合に納得がいかない場合は、専門の交通事故に詳しい弁護士への相談をおすすめします。