少額訴訟で勝訴し、相手に支払い命令が出たにもかかわらず、相手が支払いを拒否するケースは決して珍しくありません。特に個人間トラブルでは、支払い能力があるにもかかわらず「払えない」と主張するケースも存在します。この記事では、判決後に取れる法的手段と、弁護士による財産調査の範囲について解説します。
少額訴訟で勝訴した後の現実:支払い命令に法的強制力はあるのか
少額訴訟で支払い命令が出たとしても、相手が任意に支払わない限り、強制的に回収するには別途「強制執行」の手続きが必要です。強制執行とは、裁判所を通じて相手の財産(預金、給与、不動産など)を差し押さえる法的手段です。
たとえば「30万円の支払い命令が出たが相手が無視している」場合、判決をもとに裁判所に強制執行を申し立てることが可能です。
弁護士による財産調査はどこまで可能か?
弁護士は、民事執行法第204条の2等に基づき、裁判所の許可を得たうえで銀行口座の有無や残高を金融機関に照会することが可能です(いわゆる「弁護士会照会」)。
ただし、口座の残高や有無は確認できても、取引履歴(入出金明細)までは照会できません。これはプライバシーや営業秘密に関わる高度な情報であり、刑事事件などを除き民事では通常開示されません。
強制執行を進めるために必要な情報
強制執行を申し立てるためには、相手の銀行名・支店・口座番号などの情報が必要です。これを持っていない場合は、弁護士に依頼して照会をかけるか、間接的な方法(SNSや過去の取引履歴から推測)で情報を収集するしかありません。
また、銀行預金以外にも給与や不動産、車なども差押え対象となるため、相手の勤務先や所有物についてもできるだけ情報を集めておくと良いでしょう。
取引履歴が必要な場面とその取得方法
どうしても取引履歴が必要な場合は、当事者自身または刑事事件としての捜査協力を通じてでなければ取得は困難です。民事ではほとんどのケースで認められません。
ただし、詐欺的な回避(預金を隠すなど)を証明できる事情がある場合は、弁護士を通じて別途手続き(仮差押など)を講じることで間接的に情報を引き出せる可能性があります。
費用対効果を見極めたうえでの行動が重要
強制執行や弁護士照会にはそれなりの費用と時間がかかります。30万円の回収に5万円以上かかるようであれば、費用対効果を慎重に判断すべきです。まずは内容証明郵便で再度催促し、それでも応じないようであれば、弁護士に相談し「執行可能性があるか」を見極めるのが現実的です。
まとめ:取引履歴は原則見られないが、口座の有無や残高は照会可能
少額訴訟で勝訴しても、回収には別途行動が必要です。弁護士による財産調査は強力な手段ですが、取引履歴までは見られない点には注意が必要です。まずは専門家に相談し、回収可能性とコストのバランスを考えた現実的な選択を行いましょう。