借地非訟における介入権価格の仕組みと地主が取るべき対応策とは?

借地権に関する紛争は、契約期間満了や地代の滞納などを契機として複雑化することがあります。特に「借地非訟(しゃくちひしょう)」と呼ばれる手続きにおいて地主が直面する「介入権価格」は、相場よりも著しく高くなることがあり、多くの地主が困惑しています。本記事では、借地非訟の概要と介入権の実態、そして地主として取るべき実践的な対応策について解説します。

借地非訟とは何か?制度の基本を理解する

借地非訟とは、借地権の譲渡・更新・建替えなどに関して地主と借地人の間で合意が得られない場合に、家庭裁判所に調停・審判を申し立てて解決を図る手続きです。特に借地権の譲渡や借地人が不在となった際などに使われるケースが多くあります。

この手続きでは、借地人や第三者が地主に土地を返還せずに借地権を売却しようとする場合、地主が「介入権」を行使することで、第三者に売却されるのを防ぎ、自らが借地権を買い取ることができます。

介入権価格が相場より高くなる理由

介入権価格は、家庭裁判所が鑑定を基に決定しますが、実際には通常の任意売買価格よりも高額になることが多くあります。主な理由は以下のとおりです。

  • 借地権に住居等が存在する場合の実用性評価:裁判所は「現状有姿」を重視し、住宅の使用価値も含めて評価します。
  • 市場価格ではなく鑑定評価がベース:公的鑑定人が定めた「適正価格」に基づくため、交渉余地が少ない。
  • 地主の経済的負担が考慮されにくい:地主側の収益や管理コストはあまり反映されず、一方的に高額評価されるケースもあります。

結果として、地主側にとっては「不当に高い価格で買い取らされる」ように感じられるのです。

借地人が介入権行使を誘導するパターンも

中には、借地人が意図的に住まなくなり、地代も払わず、更新交渉にも応じず、最終的に非訟申立てで裁判所判断に持ち込むケースがあります。

このような場合、借地人側にとっては、交渉の必要なく高値で買い取ってもらえる可能性があり、「戦略的放棄」ともいえる行為となることも。地主が対応を誤ると、一方的に不利な形で話が進んでしまうため注意が必要です。

地主ができる実践的な対策と心構え

このような借地非訟に巻き込まれた場合、地主としては以下の対策を検討すべきです。

  • 早期の専門家相談:不信な動きがあれば、弁護士や不動産鑑定士に早めに相談することが重要です。
  • 更新料・地代の書面請求履歴を残す:法的手続きで有利に進めるための証拠となります。
  • 借地権売却を受け入れる条件を明確に:価格・条件を事前に提示し、任意交渉を主導できるようにしておく。
  • 介入権行使は慎重に判断:感情的に応じるのではなく、価格と条件、メリット・デメリットを冷静に分析する。

特に、感情的に「弁護士を立てられた」「居住していない」などと反応してしまうと、不利な立場になりやすいので要注意です。

実例:地主が介入権行使で困ったケース

ある地主の例では、借地人が10年以上地代を据え置いたまま住まなくなり、買取を打診してきたものの希望価格が合わず、非訟手続きに進展。裁判所によって鑑定が入り、地主が提示していた額よりも300万円以上高くなる鑑定結果が出され、やむなく介入権行使に応じたというケースがありました。

このように、借地人が弁護士をつけて戦略的に動いた場合、地主側が不利に立たされることも多いため、慎重かつ早めの対応が求められます。

まとめ:借地非訟・介入権対応は戦略的視点が重要

借地非訟手続きにおける介入権行使は、地主にとって大きな経済的・心理的負担となることがあります。感情的に対応するのではなく、法律的な正当性と経済合理性を軸に判断することが重要です。相手の動きに違和感を覚えたら、早期に専門家へ相談し、長期的視点で土地活用や契約方針を見直すことをおすすめします。

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