交通事故で被害者になった際、示談交渉を弁護士に依頼することで「慰謝料が増額される」と謳う法律事務所を多く見かけます。しかし、気になるのはその報酬。特に「増額された分だけ報酬が発生するのか?それとも総額から計算されるのか?」という点は、事前に明確にしておきたい重要なポイントです。本記事では、弁護士報酬の基本構造と、実際の契約時に注意すべき点を解説します。
弁護士報酬の基本は「成功報酬型」+「着手金」
交通事故案件では、多くの法律事務所が「着手金無料+完全成功報酬制」としています。これは、依頼者が事前に費用を払うことなく、弁護士が増額に成功した場合のみ報酬が発生する仕組みです。
成功報酬の計算には2通りの方式があります。
- ①増額分のみを基準にする方式:
保険会社の提示額から弁護士が増額させた金額にのみ、一定の割合(例:20%)をかける。 - ②総額から計算する方式:
示談金や慰謝料の最終受取額全体に対して報酬率を乗じる。
どちらが採用されるかは事務所ごとに異なるため、契約前に必ず報酬規定を確認する必要があります。
具体例:提示額と受取額に応じた報酬比較
例として、保険会社からの当初提示額が60万円、弁護士介入後に最終的に90万円になったケースを考えます。
- ①増額分基準(30万円×20%):報酬は6万円
- ②総額基準(90万円×20%):報酬は18万円
このように、報酬計算方式によって実質的な負担額は大きく変わります。仮に受取額の大半が治療費や休業損害であっても、②の場合は全体から報酬が差し引かれます。
報酬に含まれるその他の費用にも注意
報酬とは別に、以下のような費用がかかることもあります。
- 実費(郵送代、交通費、調査費):1~2万円程度が目安
- 日当や出張費:遠方対応や訴訟の場合に発生する可能性あり
「完全成功報酬制」とうたっていても、これらの費用が別途請求される場合があるため、契約書や料金表の確認が不可欠です。
「無料相談」でも事前に聞くべき確認事項
多くの事務所が無料相談を提供していますが、次の点を事前に質問しておくことが安心です。
- 報酬は増額分に対してか、全体に対してか?
- 具体的なパーセンテージ(相場は10~25%)
- 実費や出張費はどのくらいかかるか?
- 報酬が支払えない場合の分割や立替制度の有無
口頭ではなく、必ず書面(委任契約書)で確認するようにしましょう。
実際の相談例と対応結果
ある被害者の事例では、当初提示額80万円に対して120万円まで増額され、報酬は「増額分40万円の20%=8万円」で済みました。一方、別の事務所では総額120万円の20%=24万円が請求され、結果的に受取額が想定より大きく減ってしまったケースもあります。
このように、「どの事務所に依頼するか」だけでなく、「報酬の算出方式」によって実質手取りが大きく変動するのです。
まとめ:慰謝料増額に強い弁護士選びは「報酬の計算方法」まで見ることが大事
慰謝料を増額しても、報酬の仕組みによっては得をした感覚が薄れてしまうこともあります。「無料」「成功報酬」といった言葉だけで判断せず、報酬の計算基準(①増額分、②総額)を事前に確認しましょう。依頼する側として、契約時にしっかり確認・比較することが、後悔のない結果につながります。