交通事故に遭った際、多くの人が「慰謝料は弁護士に頼めば上がる」と期待します。実際、弁護士に依頼することで慰謝料の金額が自賠責基準や任意保険基準よりも高くなる「弁護士基準(裁判基準)」が適用されることが一般的です。しかし、中には「思っていたほど増額されなかった」「弁護士基準より低かった気がする」という声もあります。この記事では、弁護士に依頼しても慰謝料が期待より下回ることがある理由と対策について詳しく解説します。
弁護士基準とは何か?他の基準との違い
交通事故の慰謝料には3つの基準が存在します。
- 自賠責基準:法律で定められた最低限の補償。金額は低め。
- 任意保険基準:保険会社が独自に設定。非公開で低額傾向。
- 弁護士基準(裁判基準):過去の裁判例に基づき、最も高額となるケースが多い。
一般的に、弁護士に依頼することで任意保険基準から弁護士基準への引き上げが期待できます。
なぜ弁護士に依頼しても慰謝料が下回ることがあるのか?
実は「弁護士に依頼すれば必ず弁護士基準の満額になる」というわけではありません。以下のようなケースでは、結果的に下回ることがあります。
- 通院日数や治療実績が少ない:慰謝料額は治療期間や通院頻度に比例する。
- 過失割合が高い:被害者側にも責任がある場合、賠償額は減額される。
- 後遺障害等級が認定されなかった:後遺症が認められないと慰謝料の増額が難しい。
- 交渉の段階で和解を選んだ:裁判を避けるために弁護士が妥協することもある。
弁護士基準はあくまで「裁判で認められる可能性のある上限額」であり、交渉の中で相手の提示額と折り合う場合には、そこから下がる可能性があるのです。
実例:期待より慰謝料が低かったケース
ある被害者は、むち打ちによる通院を3か月間行い、弁護士に依頼して保険会社と交渉。弁護士基準の慰謝料は約53万円程度と予想されたものの、相手保険会社との早期解決を優先し、最終的に45万円で和解に至ったというケースが報告されています。
弁護士も依頼者の意向(早期解決・裁判回避)を考慮するため、常に満額を求めるとは限らないことがわかります。
慰謝料を最大化するためのポイント
慰謝料を弁護士基準で受け取るためには、次のような点を意識することが大切です。
- 通院実績をしっかり記録:日数・頻度・症状は明確に残す。
- 後遺障害等級の認定申請:症状が残る場合は等級認定を必ず検討。
- 弁護士とよく相談:方針(裁判に進むか、交渉で決着か)を共有しておく。
- 弁護士選びも重要:交通事故分野に強く、実績のある事務所を選ぶ。
これらを実践することで、弁護士基準に近い金額の慰謝料を得る可能性が高まります。
まとめ:弁護士に依頼すれば安心、とは限らない
弁護士に依頼することで慰謝料が上がる可能性は高いものの、交渉経過や事故の内容によっては弁護士基準を下回ることもあります。期待とのズレを防ぐためには、通院記録や後遺障害の有無、交渉方針などを弁護士と共有しておくことが不可欠です。
大切なのは、現実的な金額と手続きを理解した上で信頼できる弁護士に依頼すること。そうすることで、損をせず納得のいく解決に近づけるはずです。