卒業証書を“お遊び”で作成したら法的に問題?私文書偽造の罪とリスク解説

大学や高校卒業証書を“お遊び”で作る行為は、軽い気持ちでも重大な法的リスクを伴います。本記事では、卒業証書の偽造に関する刑法上の扱いをわかりやすく解説し、お遊びの範囲で済まされるのか、リスク回避のために知っておくべきポイントを整理します。

卒業証書は「私文書」?それとも「公文書」?

卒業証書が私立学校で発行された場合は「私文書」とみなされます。一方、公立学校が発行したものは「公文書」に該当する可能性が高く、扱いが全く異なります。

私文書偽造と公文書偽造では、適用される刑法の条文と法定刑が違いますので、まずこの区別が重要です。

私文書偽造罪と有印私文書偽造罪の違い

私文書偽造罪(無印)は他人の印章や署名なしで文書を偽る行為に対し、刑法159条3項で1年以下の懲役または10万円以下の罰金が規定されています :contentReference[oaicite:0]{index=0}。

一方、有印私文書偽造罪(印章や署名あり)は、他人の署名や印影を無断で使用して卒業証書を偽造した場合に成立し、3ヶ月以上5年以下の懲役が科されます :contentReference[oaicite:1]{index=1}。

行使(提示・提出)したらさらに重くなる

偽造した卒業証書を誰かに提示したり、公の場で使用したりした場合、「偽造私文書等行使罪」(刑法161条1項)が適用され、偽造罪と同等の刑罰が科せられます :contentReference[oaicite:2]{index=2}。

たとえ「お遊び」として作った証書でも、用途をもって提示した時点で犯罪となり得ます。

公立の卒業証書を偽造した場合のリスク

公立学校発行の証書を偽造した場合は「有印公文書偽造罪」(刑法158条1項)や「偽造公文書等行使罪」(同条)に問われる可能性があります :contentReference[oaicite:3]{index=3}。

法定刑は1年以上10年以下の拘禁刑となり、私文書の場合よりもさらに重い罰則が科される点に注意が必要です :contentReference[oaicite:4]{index=4}。

「お遊び」としての偽造はどこまで許されるのか?

提示や提出など「行使」の目的がなければ、犯罪の構成要件は満たされない可能性もあります。しかし、作成の時点で「行使目的」があると判断されると有印偽造罪に該当し得ます :contentReference[oaicite:5]{index=5}。

つまり、「見本として作った」「誰にも見せない」など明確に証明できるならリスクは低くなりますが、不透明な作成目的では法的責任を免れません。

判例から見る卒業証書偽造の扱い

最高裁判例(昭和42年)は、公立高校教諭が偽造卒業証書を父親に提示した行為を「偽造公文書行使罪」に該当すると判断しました :contentReference[oaicite:6]{index=6}。

この判例では単なる満足目的でも「提示=行使」にあたると認定されており、行為の意図より提示行為そのものが問題となった点は重要です。

ポイントを押さえたリスク回避の方法

  • 提示・提出を絶対にしない(行使による罪のリスク回避)
  • 名義人の署名や印章を使用しない形で非公式に楽しむ
  • 公立学校に関係する証書は絶対に偽造しない

これらを守れば刑事罰のリスクを大きく下げられます。

日常のつもりでも罪になることもある

「みんなに見せるけど学歴詐称のつもりはない」といった軽い気持ちでの提示でも、行使目的が認定されれば刑事罰対象となります。

特に地方公共団体の首長など公職者が提示した事例では、偽造有印私文書行使罪が指摘されるケースも報道されており、社会的責任も伴います :contentReference[oaicite:7]{index=7}。

まとめ

卒業証書をお遊びで作る行為は、たとえ悪意がなくても作成や提示の仕方によっては、

  • 私文書偽造罪(最高5年以下の懲役)
  • 偽造文書等行使罪(提示・提出時)
  • 公文書偽造罪(公立証書の場合、最大10年以下の拘禁刑)

など刑事罰の対象となることがあります。日常の“冗談”でも、提示や使い方によって法的に重大な影響を及ぼす可能性があるため、軽視せず慎重に判断することが重要です。

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