「おいしさそのまま糖質45%カット」などとうたった炊飯器の表示が、景品表示法違反(優良誤認)にあたるか否かを巡る裁判で、販売会社forty-four(東京)が勝訴し、消費者庁の措置命令が取り消される結果となりました。この判決は表示の合理性と消費者の認識をどう判断するかについて、今後の広告表示の基準にも影響を及ぼす可能性があります。
裁判の背景と消費者庁の措置命令
販売会社forty-fourは、自社サイトなどで「糖質カット炊飯器」として商品を販売し、「おいしさそのまま糖質45%カット」などと表示していました。これに対し、消費者庁は2021年に景品表示法に基づき、優良誤認にあたるとして措置命令を出しました。
理由としては、炊飯器の性能について十分な科学的根拠が示されていないこと、および一般的な炊飯器と同じような炊き上がりであると消費者が認識する表示とされる点が問題視されました。
販売会社の主張と裁判の争点
forty-four側は、表示はあくまで実験データに基づいたものであり、また「おいしさそのまま」といった表現は主観的なものであるため、優良誤認にあたらないと主張。さらに、炊き上がりの違いがある点は商品説明に明記しており、消費者に誤解を与えるものではないと反論しました。
争点は、消費者がこの商品を見て「一般の炊飯器と同じように炊けるが、糖質が大幅にカットできる」と認識し、著しく優良であると誤認するかどうかという点でした。
東京地裁の判断と理由
東京地裁は2024年7月、消費者庁による措置命令を取り消す判決を下しました。主な判断理由は以下の通りです。
- 商品表示が「著しく優良である」とまではいえず、消費者が過度に期待するような表現とは認められない
- 糖質カット効果については、裏付け資料をもとにした合理的説明がなされていた
- 炊き上がりの違いがあることも表示やサイト内で説明されていた
この判決により、優良誤認表示にはあたらないと結論づけられました。
消費者表示に関する今後の課題
今回の判決は、健康・ダイエット志向の高い消費者向け製品における表示のあり方について、行政と民間企業の見解のズレが表面化した事例とも言えます。過度な広告表示に対する消費者庁の警戒姿勢と、企業による表現の自由や商品訴求とのバランスが難しいテーマです。
企業側は今後も、表示に対して科学的な裏付けや消費者に誤認を与えないような補足説明が求められるでしょう。
まとめ:この判決が与える意味と消費者の目線
「糖質カット炊飯器」の裁判では、販売会社forty-fourが勝訴し、消費者庁の措置命令は取り消されました。これは表示内容の表現方法と、消費者がどう受け止めるかという視点が非常に重要であることを示した判決です。
企業側にとっては、商品訴求力を維持しつつ、誤解を招かない表現を工夫する姿勢がより求められるようになるでしょう。一方で消費者にとっても、「○○カット」や「健康に良い」といった表示には冷静に情報を読み解く力が必要です。