交通事故は誰にとっても身近なリスクですが、もしも相手が死亡する重大事故を起こした場合、自身の過失が1割でも「犯罪者」扱いになるのか心配になる方も多いでしょう。本記事では、過失割合と刑事責任の関係、そして過失致死罪に問われる可能性について詳しく解説します。
民事の過失割合と刑事責任は別問題
交通事故における過失割合(例:自分1割・相手9割)は、あくまで損害賠償責任を判断する民事上の考え方です。一方、刑事責任は「刑法や道路交通法に違反したかどうか」が基準になります。
つまり、過失割合が少ないからといって自動的に刑事責任を免れるわけではありません。逆に、過失割合が小さくても重大な違反行為があれば刑事事件として扱われることもあります。
過失致死傷罪とは?成立の条件
刑法第208条の2では「過失により人を死傷させた者は、過失致死傷罪に問われる」と定められています。ここで重要なのは「業務上の過失」かどうかで、運転中は一般的に業務上過失とされ、重く扱われます。
過失致死罪として扱われるには、次のような要素が問われます。
- 安全確認義務違反(信号無視、脇見運転など)
- 注意義務違反(スピードの出しすぎ、徐行義務違反など)
- 結果として死亡や重傷が発生した
これらが揃って初めて「犯罪」として立件される可能性があります。
過失が軽微な場合でも前科はつくのか?
過失割合が1割程度と軽微な場合でも、たとえば「ながらスマホ」や「不適切な車線変更」などの行為があれば、業務上過失致死罪として書類送検されるケースがあります。
ただし、必ずしも起訴→有罪になるとは限らず、刑事処分が不起訴や起訴猶予になることも多く、最終的に前科が付かない場合も少なくありません。
実例:過失が少なくても問われたケース
ある事例では、交差点で青信号で進行していた車が、信号無視した自転車と接触し、自転車側が死亡したというケースがありました。車側の過失割合は1割未満と判断されましたが、ドライブレコーダーに一瞬の注意不足が記録されており、過失致死で書類送検されました(最終的には不起訴処分)。
このように、たとえ自分の過失が小さくても状況や運転内容によっては刑事手続きに発展する可能性があるのです。
刑事処分の流れと前科がつく条件
交通事故で相手が死亡した場合、通常は警察の捜査が入り、実況見分・事情聴取・書類送検の流れになります。その後、検察庁が「起訴」するか「不起訴」にするかを判断します。
前科がつくのは「有罪判決を受けた場合」に限られます。略式命令(罰金)であっても、有罪であれば前科となります。ただし不起訴処分なら前科はつきません。
まとめ:軽微な過失でも油断は禁物
民事と刑事は切り離されて判断されるため、自分の過失割合が1割であっても刑事責任を問われる可能性はゼロではありません。特に死亡事故では警察の捜査対象になることは避けられず、状況次第で書類送検や刑事裁判につながることもあります。
ドライブレコーダーや現場の記録をしっかり残しておくこと、防衛運転を徹底することが自らの責任軽減につながります。