「動いている車同士の事故は10:0にはならない」——そんな常識が過去のものになりつつあります。ドラレコの普及により、事故の証拠が客観的に残る時代において、過失割合が100:0になるケースも増えてきています。本記事では、そのような事例と法律的な視点、保険対応の実態について解説します。
そもそも「過失割合」とは何か
交通事故における「過失割合」とは、事故当事者それぞれが負う責任の割合を示したものです。一般的に、双方が動いている事故では7:3や8:2など、相互に過失があるとされがちです。
しかし、例外的に一方が完全にルール違反をしていたり、もう一方が防ぎようのない状況だった場合には、10:0が成立する可能性もあります。
10:0が認められやすい実際の事故例
① 一時停止無視で突っ込んできた車に衝突されたケース
一方が優先道路を走行しており、相手が一時停止の標識を無視して交差点に進入し衝突した場合。ドライブレコーダーで停止義務違反が明確であれば、過失割合10:0が認められる可能性が高いです。
② 無謀なUターン中に衝突
片側2車線以上の道路で、直進車の存在を無視して強引にUターンをした車両と接触した場合。ドライブレコーダーで直進車が制限速度内で安全運転をしていたことが証明されれば、加害者側100%となることも。
③ 赤信号無視の直進車が側面に衝突
自車が青信号で交差点を進入していたにもかかわらず、相手が赤信号を無視して衝突してきた場合。信号の状況がドラレコで明確に確認できると、相手の過失100%となる可能性があります。
なぜ「動いていたら10:0は無い」と言われていたのか
過去は証拠が曖昧なことが多く、保険会社は示談交渉の中で「お互い動いていたなら、どちらにも過失がある」としがちでした。
特に平成初期以前はドラレコもなく、双方の主張が食い違えば「相殺」せざるを得なかった背景があります。
ドライブレコーダーが変えた事故の証明
現代では、高性能なドラレコの映像が事故原因を明確に記録しています。これにより、証言ではなく「客観的な証拠」に基づいた過失割合の判断が可能となりました。
保険会社側もドラレコの映像には一定の法的重みを認めており、明らかな違反行為があった場合には10:0も認定されやすくなっています。
保険会社との交渉と注意点
ドラレコ映像があっても、保険会社が必ずしも10:0を認めるとは限りません。交通事故の判例に基づいた「過失割合の通達」に従う傾向があるからです。
そのため、自らの正当性を証明するために、以下のような対応が有効です。
- 事故直後のドラレコ映像を確保しバックアップ
- 警察への事故届出と実況見分調書の取得
- 状況証拠(標識、信号、目撃証言など)を収集
- 場合によっては弁護士に相談し交渉を依頼
まとめ:10:0も現実的な時代へ
動いている車同士でも、状況と証拠次第では10:0の過失割合が成立します。ドラレコの映像や現場の証拠を活用し、自分の無過失を冷静に主張することが重要です。
これからの交通事故対応は「証言」ではなく「記録」がカギ。事故後すぐの対応次第で、自分の立場を大きく守れる可能性があるのです。