自動車事故の被害に遭った際、「車に直前で給油したガソリン代は請求できるのか?」と疑問に思う方は少なくありません。特に、事故直前に満タン給油をした直後に全損となった場合、被害者としては納得できないのも無理はありません。本記事では、事故時のガソリン代請求に関する考え方と、実際の保険実務の対応例を解説します。
ガソリン代は「損害」として請求可能か
民法上、加害者(またはその保険会社)は被害者の損害を賠償する義務があります。ガソリンも財産の一部であり、事故直前に給油してほとんど使用していない場合、それが消失または無価値化したとみなせるならば、一定の損害として認められる可能性があります。
つまり、事故によって車が全損となり、ガソリンも無駄になったことが明らかであれば、その分のガソリン代も「付随的損害」として請求対象に含めることは理論上可能です。
実務上の扱い:保険会社の対応は?
保険会社によって対応は異なりますが、一般的に「少額なガソリン代は時価額に含まれている」として、明確にガソリン代のみを賠償するケースは多くありません。ただし、レシートがあり給油時間と事故の時間が近接している場合、交渉次第でガソリン代を加算する対応がされることもあります。
実際の報告事例では、「事故の5分前にレシートを発行しており、ほぼ未使用と説明したところ、保険担当者が数千円のガソリン代を含めて支払ってくれた」というケースも確認されています。
請求する際のポイントと注意点
- 事故の発生時刻と給油時間を証明するレシートなどの書類を保管しておく
- ガソリン量や金額を明確に記録しておく
- 事故直後に保険会社に対して丁寧に説明する
このようなポイントを押さえていれば、少額とはいえ損害として認定される可能性が高まります。
交渉時の実践的なアドバイス
「法的に請求可能か?」というよりも、「保険会社が柔軟に応じるか」が現実的な問題です。保険担当者に対しては「事故直前の給油でほぼ未使用の状態であること」「その証拠がレシートであること」を冷静かつ論理的に伝えましょう。
また、「車の時価額があまりにも低く、気持ちの面でも納得がいかない」と感情的な部分を含めて伝えると、相手も人間である以上、配慮が加わる可能性があります。
そもそも「時価額」だけで納得できない場合
自家用車の損害賠償は「時価額」が基本となりますが、修理費が高額な場合や思い入れの強い車両では、損失感が非常に大きくなります。
そのような場合には、ガソリン代などの実費分も含めて「損害賠償の一環」として粘り強く交渉していく姿勢が重要です。交渉が難航する場合には、弁護士特約を利用する選択肢も検討しましょう。
まとめ
事故による車両の損壊とともに無駄になったガソリン代も、理論上は「損害」として請求可能です。特に事故直前に満タン給油を行った証拠(レシート等)があれば、交渉材料として活用できます。
金額は少額でも、誠意ある対応を求めて保険会社と丁寧に交渉することが、被害者の正当な権利を守るためには欠かせません。