退職金を受け取る際に提出する「退職所得の受給に関する申告書」。その中でもC欄(以前の退職手当の受給状況)の記載要否について迷う人は少なくありません。特に「過去4年以内に退職金を受け取った経験があるが、今回の勤務と期間が重複していない」ケースでは、記載が必要かどうか判断に迷うところです。本記事ではC欄の記載ルールと税務上の意味を整理し、記入ミスによる不利益を防ぐポイントを解説します。
C欄とは?過去の退職金の受給状況を記載する欄
申告書C欄では、「過去4年以内に退職手当を受け取ったかどうか」を記載することになっています。これは税制上、退職所得控除の重複適用を防ぐ目的で設けられた項目です。
退職所得控除は、1つの勤務期間に対して一度しか適用できないため、過去に受け取った退職金の支給期間と今回の勤務期間が重なる場合には調整が必要となります。
勤務期間が重複しないならC欄の記載は不要?
結論から言うと、過去4年以内に退職手当を受け取っていても、勤務期間が一切重複していないのであれば、C欄への記載は不要です。
ただし、次の条件をすべて満たしているか確認することが大切です。
- 過去の退職手当の勤務期間と今回の勤務期間が完全に別
- 勤務先も別会社である(または雇用契約が明確に異なる)
- 前回の退職から新たな勤務開始までに空白期間がある
万が一でも一部の期間が重なる、または同一法人で異動のような形になっている場合は、C欄への記載が必要になる可能性があるため注意が必要です。
税務署のチェックポイント:控除の重複防止
税務署がチェックするのは「退職所得控除の適用期間が重複していないか」という点です。控除は「1年につき40万円(20年超で70万円)」が基本ですが、同じ勤務期間に対して複数の退職金が支給されると、その分控除額が二重に使われてしまう恐れがあります。
そのため、記載すべき情報を省略してしまうと、税務署から問い合わせや修正を求められる場合があります。
実例:勤務先・期間が明確に分かれているケース
たとえば、2021年にA社を退職し退職金を受給、その後2022年にB社に再就職し、2024年にB社を退職して退職金を受け取るというケース。
この場合、A社とB社の勤務期間が完全に別であれば、C欄には「記載なし」で問題ありません。ただし、退職所得の明細書や前回の申告書類を保存しておくと、万一の確認時にスムーズです。
迷ったら税理士や人事部に確認を
判断が微妙な場合は、会社の人事・労務担当者や税理士に相談することをおすすめします。形式的な書類ミスでも、税務処理や給付金手続きに影響する場合があります。
特に再雇用・転籍・グループ会社間異動などが絡むケースでは「別勤務」とみなされるか曖昧なケースもあるため、専門家の判断を仰ぐことが確実です。
まとめ:勤務期間が重複していなければC欄記載は原則不要
「退職所得の受給に関する申告書」のC欄は、過去4年以内の退職金受給があっても勤務期間が重複していなければ記載不要です。ただし、勤務実態や会社の繋がりによって例外もあるため、念のため確認を取りましょう。
正確な情報記載でトラブルを防ぎ、安心して退職金の受給を迎えるための一助となれば幸いです。