支払督促後の和解における将来の取引制限条項の有効性と実務対応

商品購入後に代金が支払われず、支払督促に発展するケースは珍しくありません。とくに同一顧客からの再度のトラブルを避けたいと考える事業者にとって、将来的な取引制限条項の導入は重要な課題です。今回は、和解契約において「再度の購入申し込みを成立させない」旨の条項を盛り込むことが可能か、またその有効性と注意点を詳しく解説します。

和解契約とは何か?

和解契約とは、民事上の紛争に関して当事者同士が合意によって解決を図る契約であり、契約自由の原則が認められています(民法第695条以下)。そのため、当事者間で自由に条項を定めることができます。

この自由には「将来的な申し込みに応じない」というような取引制限も含まれますが、公序良俗に反しない範囲での限定が前提です。

「再購入禁止」条項は有効か

基本的には、有効です。企業が自主的にリスク管理の一環として、トラブルを繰り返す顧客との将来取引を拒否することは、契約自由の原則に基づき認められています。これは、リピーターによる再度の債務不履行を防止する合理的な手段と見なされます。

ただし、差別的取引排除や信義則に反しないよう、正当な理由の明示や書面化が重要です。

和解契約書に盛り込む際の注意点

「本件和解成立後、乙が今後同種または類似の商品について購入申し込みをした場合でも、甲はその申し込みを受け付けないことができるものとする」といった文言がよく用いられます。

重要なのは、申込拒否の条件を明確にし、可能であれば拒否の対象となる商品や期間を具体的に記載することです。あいまいな表現は、将来の法的トラブルを生む恐れがあります。

企業側の実務対応とリスクマネジメント

和解後の管理体制として、該当顧客の購入履歴にフラグを立てる、受注システム上で自動キャンセル設定を導入するなどの実務対応が推奨されます。

一方、法人顧客である場合は名義変更などを通じて再度の申し込みが行われる可能性もあり、事前にその点についても契約で触れておくとより安全です。

過去の事例と裁判例の傾向

たとえば、継続的な売買契約において代金不払いが繰り返された事例で、和解時に「将来一切の取引を行わない」との条項が入れられ、それに基づく再契約拒否が有効と認められたケースもあります。

裁判所は企業の自主判断を尊重する傾向にあり、客観的な正当理由がある場合には排除条項が公序良俗違反とはされにくいです。

まとめ

繰り返し支払督促を受ける顧客に対し、将来の取引を制限する旨を和解契約に盛り込むことは、民法上の契約自由原則のもとで有効です。実務では、条項の文言の明確化と履行確保のための社内体制整備がポイントとなります。法的リスクを最小限に抑えながら、信頼できる取引環境を整えるための一手として、ぜひ検討すべき方法です。

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