「マルチ商法=最初に商品を買っただけで終わり」と考えている人は少なくありません。しかし現実には、その後も金銭的損失や人間関係のトラブルが続くケースが多く、特に高齢者が巻き込まれると深刻な事態に発展しやすくなります。本記事では、マルチ商法における金銭的リスクと家族ができる適切なアプローチについて詳しく解説します。
マルチ商法の仕組みと典型的なリスク
マルチ商法(ネットワークビジネス)は、会員が商品を購入し、さらに新しい会員を勧誘することで報酬を得る構造です。一見して「ビジネス」のように見えますが、実際には上位の人だけが利益を得て、それ以外は継続的に支出する構造になっている場合がほとんどです。
最初に商品を買うだけで済むことは稀で、「追加で買えば報酬が増える」「イベントに参加すれば成長する」といった名目で次々と支出が重なっていきます。
「これ以上損しない」は本当か?
多くの勧誘者は「最初に買うだけ」「リスクはない」と説明しますが、実際には。
- 新たな商品購入や定期購入の圧力
- セミナー参加費・交通費・宿泊費などの出費
- 販促物や資料の購入
- 新規勧誘のための交際費
など、予想以上の支出が続きます。やる気に火が付いている時ほど「成功するには投資が必要」と思い込み、損切りの判断が遅れる傾向があります。
高齢者が巻き込まれやすい理由
高齢の方は、社会的なつながりや目的を求めている傾向があり、マルチ商法は「人に感謝される仕事」「仲間と成功する」というポジティブな言葉で勧誘されるため、心理的なハードルが下がります。
また判断力や情報収集力が低下していることもあり、疑わしい情報でも信じやすくなるため、営業トークを鵜呑みにしてしまうことも多いです。
家族ができる現実的なアプローチ方法
いきなり「やめなさい」「騙されてる」と否定すると、本人が反発し信頼関係が壊れるリスクがあります。以下のようなステップを意識しましょう。
- 共感から始める:「それで楽しそうにしてるんだね」「どんな仕組みか教えて」と肯定的な態度で耳を傾ける
- 情報を一緒に見る:消費者庁や国民生活センターの資料を「一緒に見よう」と提案し、批判ではなく「一緒に考える」姿勢をとる
- 損益を可視化する:実際にかかった金額と得られた収益を一覧にすることで、冷静に判断してもらう
- 第三者の力を借りる:消費生活センターや弁護士への相談を促し、客観的な立場の意見として受け入れてもらう
実例:損失が膨らんだ高齢者のケース
ある70代女性は、最初に商品を10万円分購入したものの、半年後にはセミナー・交通費・定期購入などで累計80万円以上を支出。勧誘活動がうまくいかず、心身ともに疲れ、ようやく家族に相談したという事例もあります。
このように「元手だけ」と思っていても、時間とともに損失が増えるのは決して珍しくありません。
まとめ:最初の購入だけで終わるとは限らない
マルチ商法は、一度始めると継続的な支出や心理的な縛りが発生する可能性が高く、「最初の元手だけ」では済まないケースが非常に多いです。
高齢の家族が関与している場合は、強く否定するのではなく、共感と客観的情報を通じて対話の機会を持つことが重要です。必要に応じて消費生活センターや法的な支援も検討し、傷が浅いうちに適切な対応をとりましょう。