電車での人身事故は、乗客にとって大きな精神的ショックとなることがあります。事故の音や振動、緊急停止、閉じ込められた状況などが記憶に焼き付き、後々まで影響を与えるケースも少なくありません。本記事では、実際に人身事故に遭遇したときの心の反応やトラウマのケア方法について、臨床心理学の知見や体験談を交えながら解説します。
人身事故に遭遇した際に起こりやすい心理的反応
人身事故に居合わせた人は、恐怖・不安・ショック・罪悪感などさまざまな感情を抱くことがあります。とくに事故の瞬間に音や衝撃を感じた場合、その感覚がフラッシュバックとして再体験されることがあります。
こうした反応は「心的外傷後ストレス反応(PTSR)」と呼ばれるもので、誰にでも起こり得ます。強い反応が数週間以上続く場合は、「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」に移行する可能性もあります。
トラウマとなるかどうかは人それぞれ
同じ状況に遭遇しても、まったく気にしない人もいれば、深刻な影響を受ける人もいます。これは、過去の経験や性格的傾向、身体のコンディションなどが影響しているためです。
ある人は「事故に遭遇したとき、車内に冷静な人がいて安心できた」「イヤホンで音楽を聴いていたため詳細を知らなかった」といった理由から、強い記憶として残らなかったという声もあります。こうした視点から自分に合った対処法を見つけることも有効です。
不安を和らげるためのセルフケア方法
- 深呼吸法:不安を感じたときは、ゆっくり鼻から吸って、口から吐く呼吸を5回程度繰り返すだけでも心が落ち着きます。
- 安心できる場所でリラックス:自分が安心できる空間で音楽を聴く、お風呂に入るなど五感を落ち着かせることが有効です。
- 信頼できる人に話す:気持ちを口に出すことで整理が進みます。家族や友人、カウンセラーに話すこともおすすめです。
再び電車に乗るのが怖いときの対処法
再度の電車利用に不安がある場合、少しずつ慣らしていく「段階的曝露」が有効です。いきなり長距離に挑戦するのではなく、以下のようなステップで段階を踏みましょう。
- 近くの駅まで電車で1駅だけ乗ってみる
- 安心できる人と一緒に乗る
- ピークを避けて空いている時間帯を選ぶ
また、イヤホンで音楽やラジオを聞いて音を遮断することや、乗車中に心を落ち着けるグッズ(アロマ、ガム、ぬいぐるみ)を持つのも助けになります。
専門機関のサポートを活用しよう
もし、フラッシュバックや動悸、呼吸困難などが日常生活に影響を及ぼしている場合は、精神科や心療内科への相談をおすすめします。カウンセリングや薬物療法など、適切なサポートを受けることで早期回復が期待できます。
学校にスクールカウンセラーがいる場合は、まず相談してみるのも良いでしょう。大学には学生相談室なども用意されています。
まとめ:経験を無理に忘れようとせず、回復を焦らないことが大切
人身事故に遭遇した経験は、誰にとっても心に残るものです。怖さを感じたのは自然な反応であり、自分を責める必要はありません。焦らず、少しずつ回復を目指していくことが大切です。
自分に合ったケア方法を見つけ、不安に寄り添ってくれる人とつながることで、きっと前に進める力が湧いてくるはずです。