社用車や業務用資材としてのガソリンを不正に私用車に使用する行為は、明らかに業務上横領や窃盗の可能性があります。しかし、その不正を暴こうとする過程で誤った手段を選ぶと、逆に加害者になってしまうリスクがあるのです。この記事では、企業内のガソリン不正使用の疑いにどう対応すべきか、法律的な観点から詳しく解説します。
社用ガソリンを私用に使うのは違法か?
会社が購入したガソリンは法人の財産であり、業務目的以外で私的に使用すれば「業務上横領罪(刑法253条)」または「窃盗罪(刑法235条)」が成立する可能性があります。特に従業員が明確な意図をもって私用車に給油していれば、悪質性も高くなります。
ただし、刑事罰を科すには明確な証拠が必要となるため、会社側が証拠を掴めない状況では、処分や警察への告発が困難になる場合もあります。
証拠を得るために他人の物を破壊するのは犯罪
不正を暴くために、ガソリンタンクに異物(例:コーラ)を混入し、その結果として車両に損害を与えるような行為は「器物損壊罪(刑法261条)」や「威力業務妨害罪(刑法234条)」に該当する可能性が高いです。
たとえ不正を証明する意図があっても、「故意に損害を与えた」という事実は動かず、刑事・民事の責任を免れません。このような自己判断での報復行為は、逆に加害者として訴えられるリスクを伴います。
正当な証拠収集の方法とは?
不正行為を立証したい場合は、次のような合法的かつ正当な手段で証拠を収集することが必要です。
- 監視カメラ映像(車両置き場や給油場所の記録)
- 不審な給油スケジュールと運行記録の矛盾
- 他の従業員の証言や目撃情報
- GPSや燃料使用量のデータ
会社の管理責任者と連携し、内部監査や懲戒手続を通じて問題を解決していくのが正攻法です。
企業側の対応と内部通報制度の活用
不正が疑われる場合、会社としては就業規則や服務規律違反として調査を行い、懲戒処分・刑事告訴などの対応が可能です。近年では、コンプライアンス強化の観点から内部通報制度(公益通報制度)も整備されてきており、匿名での通報も認められています。
第三者通報窓口や労働局への相談も有効な手段であり、社員個人がリスクを負って立ち上がる必要はありません。
過去のトラブル事例とその教訓
実際にあった事例として、社用燃料の窃盗を告発するために同僚の車に傷をつけてしまい、逆に損害賠償請求されたケースがあります。告発の目的が正しくても、手段が逸脱すれば法的には一切の情状酌量がないことが分かります。
正義感や焦りから違法行為に走る前に、必ず法的な助言を得るか、会社の内部通報制度を活用することが望まれます。
まとめ:不正の証明は冷静かつ合法的に
ガソリンを私用に使う行為は明確に違法ですが、証拠を得るために他人の財産を傷つけたり操作するのは「自らが加害者になる」リスクを伴います。冷静に、合法的な証拠収集を行い、企業や専門機関に報告することが最も現実的で安全な対応です。
疑いを持ったときこそ、自らの正当性を損なわない行動を心がけましょう。どうしても対応が難しい場合は、消費者庁の公益通報制度などの外部機関への相談も検討しましょう。