相続が発生した際に見落としがちなポイントの一つが、生前贈与の「持ち戻し」です。特に2024年以降は税制改正の影響を受け、過去の贈与も相続税の課税対象になる可能性があります。この記事では、生前贈与の持ち戻し制度とその実務上の取り扱いについて、最新情報を踏まえて詳しく解説します。
生前贈与と相続税の関係
相続税の計算では、被相続人が亡くなる前に行った贈与についても、一部が「相続財産に加算」される仕組みがあります。これを「生前贈与加算」あるいは「持ち戻し」と呼びます。
現在(2024年7月時点)のルールでは、死亡前7年以内に受けた贈与が対象です。ただし、加算の対象は110万円を超える部分に限られ、基礎控除内の贈与(110万円以下)は原則加算不要です。
2024年の税制改正でどう変わったか?
2024年からは、生前贈与の加算期間が3年から7年に延長されました。この変更は、2024年1月1日以降に発生した相続に適用されます。
たとえば、2024年に亡くなった方の相続では、2017年以降の贈与のうち、一部が相続税計算に含まれる可能性があります。ただし、2024年時点で適用されるのは段階的措置ではなく、一律で7年に延長されました。
年間110万円以下でも申告不要ではない?
一般的に「年間110万円以下の贈与は申告不要」と思われがちですが、相続が発生した場合には、贈与税の申告義務とは別に相続税の計算上、贈与の加算対象になることがあります。
たとえば、2021年、2023年、2024年に各100万円ずつの贈与を受けた場合、いずれも贈与税の申告は不要ですが、相続税の計算では合計300万円が相続財産に加算されることになります。
実際の持ち戻し計算の具体例
次のようなケースを考えます。
- 2021年:株式100万円相当の贈与
- 2023年:現金100万円の贈与
- 2024年:現金100万円の贈与
2024年に相続が発生した場合、これら3年分すべてが7年以内の贈与に該当し、合計300万円が遺産に加算されます。これにより、基礎控除を超えると相続税が発生する可能性があります。
対策:申告と記録の重要性
相続税の調査では、預金履歴や証券口座などから贈与が確認されることが多いため、贈与を受けた場合には記録や契約書を残すことが重要です。また、相続税の申告ではこれら贈与分も自己申告しなければなりません。
特に複数年に渡る贈与を受けていた場合は、合算されると基礎控除を超えることも多く、申告漏れのリスクが高まります。
税理士への相談をおすすめするケース
次のような場合は、早めに相続税専門の税理士へ相談しましょう。
- 生前に定期的な贈与があった
- 相続人が複数いて財産評価が複雑
- 相続財産が自宅や株式などの評価が難しい資産で構成されている
専門家のサポートにより、過不足のない適切な申告が可能になります。
まとめ:7年ルールと贈与額に注意して相続税対策を
2024年以降は、生前贈与の持ち戻し期間が7年に延長され、贈与税の申告が不要な範囲でも相続税の対象になる可能性があります。正確な記録と専門家のアドバイスを活用して、円滑な相続手続きを進めましょう。