隣接する土地の整地作業中、誤って自分の所有地内にあった果樹が伐採されてしまうトラブルは、近年の土地売却や境界線の曖昧さから少なくありません。本記事では、伐採された果樹に対する損害賠償金の妥当性や、補償交渉において注意すべきポイントについて詳しく解説します。
誤伐採による損害賠償の法的根拠
民法第709条では「故意または過失により他人の樹木を損壊した者は、その損害を賠償する責任がある」と規定されています。
整地業者が境界線の確認を怠った場合は「過失」と判断され、伐採された樹木1本ごとの価値に応じた損害賠償請求が可能です。
果樹1本の評価額と賠償金額の相場
伐採された果樹の種類・樹齢・実の収穫可能性によって、補償額は大きく異なります。例えば。
- 5年物の柿・梅など:1本あたり2〜4万円程度
- 10年以上の実付き果樹:1本5〜10万円以上になるケースも
- 接ぎ木済みや希少品種であればさらに高額
そのため、「3本で10万円+植樹」という提案は妥協案としては悪くない金額設定ですが、果樹の樹齢・収穫量次第ではやや低く見積もられている可能性もあります。
植樹による補償の位置づけ
加害者側が提示する「植樹」は、被害回復措置として誠意を見せている一例ですが、以下の点に注意が必要です。
- 同等種の果樹かどうか
- 植樹後の維持管理責任は誰が負うか
- 苗木の購入費や植樹費用は賠償金に含まれるのか別途なのか
「10万円+植樹」として明示されている場合、金額に植栽費用が含まれていないなら、その分の追加補償を求めることも可能です。
境界線トラブルの責任の所在
土地境界線にまたがる形で誤伐採が行われた場合でも、整地作業前に境界確認を怠った施工主(あるいは委託元)が責任を問われます。
特に売却された土地の新所有者が整地を依頼している場合、その責任もしくは監督義務が問われるため、相手との交渉において明確な説明を求めましょう。
実例:果樹を誤伐採されたケースでの和解事例
例として、柿の木2本・ミカン1本を誤って伐採されたケースでは、「1本5万円×3本+別途植樹費用5万円」という内容で示談に至った事例があります。
一方で、「庭木としての樹木」と判断され、1本1万円未満とされた事例もあり、果樹としての利用実態が重視されました。
まとめ
果樹の誤伐採に関する損害賠償では、「木の本数」「種類」「樹齢」「利用目的」が重要な評価軸となります。
今回の「10万円+植樹」という提案は相場的には中程度の水準で妥当ともいえますが、果樹の状況次第では増額交渉の余地もあります。文書化して合意を残すこと、また迷った際は司法書士や弁護士への無料相談を活用することも一案です。