ネット誹謗中傷の損害賠償額はどう決まる?被害額が高額になるケースと判断基準

インターネット上での誹謗中傷が社会問題となる中、投稿者に対して損害賠償が命じられる判決も増えています。しかし、同じような投稿に見えても賠償額には差があり、「なぜあるケースでは33万円で、別のケースでは70万円になるのか」といった疑問を持つ方も多いでしょう。この記事では、誹謗中傷の損害賠償額がどのように算出されるかについて、実例とともに解説します。

誹謗中傷による損害賠償の法的根拠

誹謗中傷によって損害賠償請求が可能となるのは、主に民法709条の「不法行為」に基づきます。投稿が名誉毀損や侮辱、プライバシー侵害に該当する場合、加害者には損害賠償責任が生じます。

損害の内訳としては、精神的苦痛に対する「慰謝料」、投稿削除や発信者情報開示請求にかかった「弁護士費用」や「調査費用」などが含まれる場合があります。

損害賠償額に差が出る理由

同じような内容の投稿でも、損害賠償額に差が出る主な理由には以下のようなものがあります。

  • 投稿回数・期間の長さ:繰り返し投稿された場合、悪質性が高く評価されます。
  • 投稿の拡散力:X(旧Twitter)や5chなど不特定多数の目に触れる媒体は被害の拡大が大きくなります。
  • 内容の悪質性:事実無根の内容や差別的表現など、被害者の名誉を著しく傷つける内容は重く評価されます。
  • 被害者の立場:芸能人や公人など、社会的影響力のある人物の場合、社会的信用の毀損が大きく評価される傾向にあります。

実際の事例で見る賠償額の違い

例えば、ある女性タレントに対し「不倫」「枕営業」など虚偽の情報を5chに繰り返し投稿した人物に対し、70万円以上の損害賠償が命じられた事例があります(参照)。これは、投稿が数十回以上に及んでいたこと、明確に虚偽であったこと、そして拡散力の高い掲示板だったことが重視されました。

一方で、投稿が1回だけで悪質性がそこまで高くない場合には、賠償額が33万円前後にとどまることもあります(参照)。

裁判所が重視するポイントとは

損害賠償額を判断する際に裁判所が重視するポイントとして、以下のような要素があります。

  • 加害者が特定可能かどうか(匿名投稿か否か)
  • 被害者が実際に受けた精神的・社会的ダメージの大きさ
  • 投稿の削除対応や謝罪の有無
  • 反省や和解の意思の有無

裁判例を見ると、被害者側が専門の弁護士に依頼し、証拠収集を徹底している場合に賠償額が高くなる傾向があります。

加害者としてリスクを理解すべきポイント

たとえ軽い気持ちで投稿した内容でも、名誉毀損や侮辱と判断されれば高額な賠償請求がなされる可能性があります。特に繰り返し投稿を行った場合、裁判所は「執拗さ」や「悪質性」を重く見て厳しく対処します。

また、発信者情報開示請求によって匿名でも特定される可能性があるため、ネット上の発言には常に責任が伴うことを自覚すべきです。

まとめ:賠償額は投稿の質と量で大きく変わる

誹謗中傷の損害賠償額は、単に「言った内容」だけでなく、その頻度や影響、被害の深刻さなど多面的に判断されます。70万円という高額になる背景には、繰り返しの投稿や悪質な内容、被害者の社会的立場などがあることが多いです。

ネット上での表現の自由は大切ですが、その一言が法的責任を招くこともあると心得て、冷静で慎重な情報発信を心がけましょう。

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