思い出の詰まった壊れたおもちゃを修理してあげたい――そんな善意から始めた個人の修理活動でも、インターネット上で取引をする場合には「特定商取引に関する法律(特商法)」への対応が必要なケースがあります。本記事では、営利目的でない活動であっても、どのような法的配慮が求められるか、わかりやすく解説します。
特定商取引法が適用される条件とは
特商法は、インターネットなどを通じた通信販売を行う事業者が消費者トラブルを防止するために義務付けられている表示ルールです。ここでの「事業者」とは、法人に限らず、反復継続して物品販売やサービス提供を行い、対価を得ている人を指します。
そのため、個人が趣味的におもちゃを修理し、部品代や光熱費などの実費程度の金額を請求している場合でも、継続的なサービス提供と見なされれば「事業者」として扱われる可能性があります。
必要な「特定商取引法に基づく表記」の項目一覧
通信販売を行う場合、以下の情報を「見やすい場所」に掲載する必要があります。
- 販売事業者の名称(氏名)
- 所在地
- 電話番号
- 代表者または運営責任者名
- 販売価格・サービス対価
- 商品代金以外の必要料金(送料、振込手数料など)
- 代金の支払時期と方法
- 商品の引渡時期・サービスの提供時期
- 返品・キャンセルに関する条件
- 個人情報の取扱いについて
住所・氏名などを公開したくないという懸念がある場合には、販売者としての責任を明確にする代替手段(たとえばバーチャルオフィスの住所や携帯電話以外の番号)を検討する必要があります。
物々交換は特商法の対象になるのか
たとえば「壊れたおもちゃ3つと引き換えに1つ修理して返す」という物々交換的な形式であっても、対価性が認められれば法律の対象になります。現物が対価になっているという考え方が成立するため、同様に特商法に準拠した表記が求められます。
一方で、完全にボランティア活動として報酬を一切受け取らず、ウェブ上にも価格情報や申し込みフォームが存在しない場合は適用外となる可能性もあります。ただし、判断は非常にグレーなため注意が必要です。
古物営業法に該当するか
修理の過程で壊れた部品を取り外して再利用・再販売するような行為や、中古のおもちゃを買い取って再販売する場合は「古物商許可」が必要になる可能性があります。ただし、おもちゃを一時的に預かって修理するだけであれば、古物営業には該当しないと考えられます。
「古物商」として扱われるかどうかは、警察庁の古物営業に関する資料も参考になります。
消費者庁に問い合わせるには
消費者庁には直接相談できる専用窓口があります。特定商取引法に関する問い合わせ先は、以下のURLからアクセス可能です。
メールフォームや電話での問い合わせも可能です。内容が個人活動か営利か判断に迷うケースでは、専門家や行政に相談するのが安心です。
まとめ:好意の活動でも法律に注意
たとえ善意から始めた個人の修理活動であっても、インターネットを通じてやり取りが発生する場合、法律上は「事業者」として扱われる可能性があります。特定商取引法や古物営業法の該当有無を正しく把握し、必要な表示義務を果たすことがトラブル回避につながります。
「商売じゃないから大丈夫」と思わず、もし不安がある場合は行政窓口や専門家への相談をおすすめします。