労働基準法23条の金品返還義務と解雇時の取り扱い|退職・死亡・解雇の違いと実務対応

退職後の給与や退職金、私物などの返還義務を定めた労働基準法第23条は、企業側と労働者双方にとって重要な規定です。条文には「労働者が死亡し、又は退職した場合」と記載されていますが、解雇の場合にはどうなるのでしょうか?この記事ではその疑問を丁寧に解説します。

労働基準法第23条の基本内容

労働基準法第23条は、労働者の退職または死亡後、会社が遅滞なく金品を返還しなければならない旨を規定しています。具体的には「退職した日から7日以内に、金銭その他の物を支払わなければならない」とされています。

条文では「死亡」「退職」と明記されているため、「解雇」が文面にない点が疑問視されがちです。しかし、法律上の「退職」には、自主退職だけでなく解雇(会社都合退職)も含まれると解釈されています。

「解雇」も23条の適用対象になるのか?

結論から言えば、「解雇」も労働基準法第23条の「退職」に該当します。これは厚生労働省の行政解釈や実務でも一貫しており、会社都合退職・懲戒解雇も同様に7日以内の金品返還義務が生じます。

実際、労働基準監督署が企業を指導する際も、「退職には解雇も含まれる」として行政指導を行っています。つまり、解雇であっても、賃金未払いや私物の引き渡し遅延がある場合には法的問題となるのです。

金品返還の対象となるものとは?

返還義務のある「金品」には以下が含まれます。

  • 未払い賃金(最終月の給与・残業代・各種手当)
  • 退職金(支給規定がある場合)
  • 年次有給休暇の未消化分の買い取り(就業規則等で明記されている場合)
  • 会社預かりの私物(ロッカー内の私物、健康保険証など)

例:社員が6月末で解雇された場合、会社は原則として7月7日までにすべての金品を返還しなければなりません。

返還が遅れた場合のリスクと労働者の対処法

返還が遅れると、会社側は労働基準法違反となり、労働基準監督署から是正指導を受ける可能性があります。また、労働者側が民事訴訟や労働審判を起こすことも可能です。

実際に、退職金が支払われず労働者が訴えた結果、遅延損害金の支払いが命じられた判例も存在します。特に解雇が突然であった場合、生活資金の確保の観点からも早急な支払いが必要です。

企業が注意すべき実務ポイント

  • 解雇通知書を渡すと同時に未払い賃金の精算手続を開始する
  • 会社備品の返却や私物引き渡しの手順をマニュアル化しておく
  • 退職時の精算内容を明記した「金品精算書」などを作成・保管する

これにより、労使トラブルを未然に防ぐことが可能となります。

まとめ:解雇時も23条により速やかな金品返還が義務

労働基準法第23条は、「解雇」も「退職」の一形態として適用されます。つまり、解雇された労働者に対しても、会社は7日以内に未払い金や私物などを返還しなければなりません。

企業は円滑な退職手続を行うための体制整備が求められ、労働者は返還が遅れた場合には労働基準監督署などに相談することが適切です。労使双方が法的根拠を理解しておくことが、トラブル回避の第一歩です。

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