自殺者を跳ねてしまった場合の運転者の法的責任とは?予見不可能な事故と刑事・民事の考え方

交通事故における加害者の責任は、通常、過失の有無によって判断されます。しかし、もしも「落下してきた人を跳ねてしまう」というような、極めて異常で予見困難なケースが発生した場合、運転者に責任が生じるのかは、多くの人が気になる点でしょう。この記事では、自殺者の落下に巻き込まれてしまった運転者の法的責任について、刑事・民事の両面から解説します。

交通事故における基本的な責任の考え方

交通事故における刑事責任や民事責任は、運転者に過失があったかどうかが中心になります。たとえば、前方不注意や信号無視など、運転者の注意義務違反が事故の原因となった場合、過失運転致死傷罪や損害賠償責任が問われることになります。

一方、全く予測不可能で、運転者がいかなる注意をしていても回避不能な事態については、「不可抗力」として過失が否定される可能性が高いです。

落下してきた人物を跳ねてしまったケースの法的見解

たとえば30階から自殺目的で飛び降りた人物が車の前に落下し、それを運転者が跳ねてしまったという想定では、基本的に運転者に法的責任が問われることは考えにくいです。

このようなケースでは、「自動車運転処罰法」上の危険運転致死や過失運転致死の構成要件を満たさず、警察の調査があっても不起訴処分になる可能性が高いでしょう。

民事上の損害賠償責任の可能性

民事では、被害者の遺族などから損害賠償請求を受ける場合があります。しかし、そのためには運転者に「過失」があることが前提です。今回のような極めて特殊な状況では、運転者が通常の運転をしていた限り、過失が認められることはほぼありません。

また、自動車保険の対人賠償責任保険は「法律上の損害賠償義務」が生じたときに支払われるため、過失がない場合は保険金も支払われない可能性があります。

警察対応と実務上の流れ

実際にこのような事故が起きた場合、警察は現場を検証し、関係者から事情聴取を行います。しかし、運転者の飲酒やスピード超過、スマホ操作などの違反がなければ、刑事事件として立件されないケースが大半です。

ただし、一時的に「被疑者」として扱われることはあり、その間の精神的負担は小さくありません。そのため、事故直後には弁護士へ相談するのが望ましいでしょう。

実際にあった類似判例とその判断

過去の判例では、踏切内に横たわっていた自殺志願者を列車が轢いたケースにおいて、運転士の責任が否定された例があります。これは、運転士が回避不可能な状況にあり、注意義務を果たしていたと判断されたためです。

この考え方は自動車にも当てはまり、落下してきた人を跳ねた場合も「予見可能性がなかった」として、責任を免れる判断がなされることが一般的です。

まとめ:自殺者との接触事故でも運転者の責任は限定的

今回のように、自殺を図った人物が落下し、それを偶然通りかかった車が跳ねてしまった場合、運転者に過失が認められる可能性は極めて低く、刑事・民事いずれにおいても責任を問われない可能性が高いです。

ただし、現実には精神的ショックや警察対応など、運転者にとって大きな負担となる点は否めません。そのため、冷静な対応と早期の専門家への相談が重要です。

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