スマートフォンや小型カメラの普及により、撮影行為が日常化している現代。中には「堂々と撮影すれば盗撮ではないのでは?」という誤解を持っている方もいますが、それは非常に危険な認識です。本記事では、盗撮行為に関する法的な定義や、誤った理解がもたらすリスクについて詳しく解説します。
盗撮罪の本質は「撮影方法」ではなく「目的と状況」
盗撮とは、主に他人の身体や衣服の中、または私的空間を無断で撮影する行為を指し、「こっそり」か「堂々と」かは関係ありません。重要なのは、撮影された本人の同意がなく、プライバシーを侵害しているかどうかです。
たとえば、電車内でスカートの中を撮影する行為は、周囲に見せびらかしながら撮影していたとしても盗撮と見なされ、都道府県の迷惑防止条例違反等で処罰対象となります。
「迷惑防止条例違反」での適用が主流
日本では刑法に明確な「盗撮罪」は存在しませんが、各都道府県の迷惑防止条例により、「公共の場や施設で他人の下着等をのぞき見、撮影する行為」が禁止されています。罰則は懲役や罰金などが科されることもあります。
たとえば東京都の場合、「公共の場所において、衣服等で通常隠されている身体の一部を撮影した者」に対して、1年以下の懲役または100万円以下の罰金という厳しい処分が科されることもあります。
堂々としていても無断撮影なら違法の可能性
一見すると正面から堂々と撮影しているような行為でも、被写体の許可がなければプライバシー権の侵害にあたります。特に「顔がはっきり映っている」「身体の特定部位をズームしている」などの映像は、SNSで拡散された場合、名誉毀損や肖像権侵害にもつながりかねません。
たとえば街中で女性の胸元をアップで撮り続けていたケースでは、相手が気づいて通報したことで、迷惑防止条例違反として検挙された例もあります。
公共の場で撮影するときの注意点
風景や観光地を撮るつもりでも、無関係の他人の顔が意図せず映り込んでいることはよくあります。そのような場合、映像の使用方法によってはトラブルになることがあります。特に以下の点に注意が必要です。
- 人物が主題となっていないか
- 露出の多い服装の人にズームしていないか
- SNSやYouTube等で公開する予定があるか
事前に声をかけて許可を得る、ぼかしを入れるなどの配慮が必要です。
悪質と判断された場合の処分は厳格
盗撮行為は初犯でも書類送検や勾留されることがあり、前科がつく可能性も否定できません。特に学校や職場への影響が大きく、懲戒処分や退職に至るケースも報告されています。
また、繰り返しの盗撮行為では、刑事処分だけでなく刑務所への収監となる重い判決が下されることもあります。
まとめ:撮影の自由とプライバシーの境界を正しく理解しよう
「堂々と撮っていれば盗撮ではない」という考え方は誤解であり、盗撮の違法性は撮影方法ではなく、相手のプライバシー権を侵害しているかどうかによって判断されます。
現代では撮影機器が手軽に使える一方で、撮る側の責任とモラルが強く求められています。ルールを正しく理解し、他人の尊厳と権利を尊重する姿勢が何よりも大切です。