2024年〜2025年にかけて、スーパーや飲食店、病院、公共窓口などで「カスハラ(カスタマーハラスメント)には警察を呼びます」といった掲示を目にする機会が明らかに増えました。このような表記はなぜ急増したのか、背景にある社会的課題と企業の対応を解説します。
カスタマーハラスメントとは何か?
カスタマーハラスメント(略称:カスハラ)とは、客や利用者による理不尽な言動で、従業員に対して過度な要求・暴言・脅迫・長時間のクレームなどを行う行為を指します。
例えば「責任者を出せ」と大声で何度も要求したり、店員に土下座を強要したり、長時間にわたり電話や対面で罵声を浴びせ続けるような行為が典型例です。
2025年に掲示が増加した理由
2025年に入り、特に「警察を呼びます」といった強めの文言を掲げる店舗が増えた背景には、国の指針の公表と企業のリスク回避意識の高まりがあります。
厚生労働省は2022年に「カスタマーハラスメント対策マニュアル」を発表し、企業に対して具体的な対応を求める動きが加速しました。2024年には複数の大手企業(コンビニ、スーパー、鉄道など)が一斉に社内基準を設け、店舗に対応策の表示を始めたことが報道され、全国的な動きとなりました。
カスハラが社会問題化した背景
新型コロナ禍以降、「店員が注意したら逆ギレされた」「マスク着用を巡って暴力を振るわれた」といったトラブルが増加。これにより、サービス業従事者のメンタルヘルス悪化が社会課題となりました。
また、高齢化による「怒鳴る高齢客」問題、ネット上での動画晒し(いわゆる“バイトテロ”の逆)など、従業員側のリスクが顕在化してきたことも背景にあります。
「警察を呼びます」は脅しではない
このような掲示が一部で「やりすぎでは?」と捉えられることもありますが、実際には企業が従業員を守る法的根拠があります。
カスハラの内容によっては、刑法の「威力業務妨害罪」「脅迫罪」「侮辱罪」「名誉毀損罪」に該当する可能性があります。したがって、店舗側が警察を呼ぶことは法的にも正当な対応です。
企業の対策と現場の変化
- 従業員への研修強化:対応マニュアルの整備やメンタルケアの導入。
- カメラ設置や録音体制:トラブル時の証拠保全。
- 対応担当者の配置:一般従業員を守るために、責任者や専任スタッフが対応。
一例として、ある大手飲食チェーンでは2024年末から全国すべてのレジに「録音中」「迷惑行為には法的措置を取ります」という掲示を導入したところ、トラブルが大幅に減少したと報告されています。
まとめ:カスハラ対策は「働く人を守る」時代の常識
2025年以降に掲示が急増した背景には、カスタマーハラスメントの深刻化と、それに対応する社会の意識変化があります。企業が「お客様第一」の姿勢を守りつつも、従業員の安全と尊厳を守るための明確なメッセージが求められているのです。
私たち一人ひとりが「客の立場でも礼儀と節度を持つ」ことが、より良い接客環境づくりにつながります。