交通事故に巻き込まれた際に、既に痛めていた部位の症状が悪化した場合、その損害がどこまで保険でカバーされるのか気になる方は多いでしょう。特に「元々ぎっくり腰だったが、事故でさらに悪化した」といったケースでは、保険会社との交渉や医学的証明がポイントになります。本記事では、既往症がある場合の交通事故後の対応と、負傷認定の現実について解説します。
既往症の悪化も損害として認められるのか?
民法上、交通事故によって「既存の持病が悪化した」場合でも、それが事故と因果関係があると医学的に証明されれば損害として認められます。つまり、追突事故によってぎっくり腰が再発・悪化した場合も、保険会社に請求する権利はあります。
ただし、「どの程度の悪化か」「本当に事故が原因か」を医師の診断書で明確にする必要があります。事故後すぐに医療機関を受診し、事故が原因で症状が悪化した旨をカルテや診断書に残してもらうことが非常に重要です。
保険会社が認定する範囲と注意点
加害者側の保険会社が支払う補償範囲は、あくまで「事故によって新たに発生した損害」または「事故により症状が明確に悪化した部分」に限られます。よって、既往症自体に対して全額を請求することは難しく、悪化した分だけが認定されることになります。
例えば、事故前の腰の痛みを10とすると、事故後に15の痛みになった場合、その「5」の増加分が評価対象になります。これを「既存障害の加重損害」と呼びます。
交渉や証明には専門家のサポートが有効
保険会社は、加重損害の認定に対して厳格な姿勢を取ることが多く、被害者側の主張が通らないこともあります。そのため、必要に応じて弁護士や交通事故に詳しい行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。
特に後遺障害等級の認定や、損害賠償請求額の妥当性判断など、素人では判断が難しい部分はプロのアドバイスが有効です。
医師の診断書や経過記録の重要性
事故後はできるだけ早く病院に行き、「事故で悪化した」という客観的な記録を残すことが必須です。後になって症状が悪化したとしても、初期の診断書にその記載がなければ、事故との因果関係を否定される可能性があります。
整形外科やリハビリ科の診断をもとに、MRIやレントゲンなどの画像資料があると、保険会社との交渉にも有利に働きます。
人身事故扱いと示談のタイミング
事故を「人身事故」として扱うことで、通院慰謝料や後遺障害の認定など、より手厚い補償が受けられる可能性があります。物損事故のままでは、身体的な被害に対する賠償請求がしにくくなるため、事故直後に痛みを感じたら迷わず人身扱いにしましょう。
また、示談は治療が完了してから行うのが原則です。早急に示談してしまうと、後から悪化した症状が補償対象外になることがあります。
まとめ:既往症の悪化でも諦めないで
元々のぎっくり腰が追突事故で悪化した場合でも、医学的な裏付けがあれば保険会社は一定の補償を行います。ポイントは「早期の受診」「正確な診断書」「専門家のサポート」です。
ご自身の身体のためにも、泣き寝入りせず正当な補償を受けるための行動を取りましょう。必要であれば交通事故専門の弁護士への相談も検討してみてください。