近年、移動式オービス(速度違反自動取締装置)の導入が進む中、万が一それに接触し破損させた場合の賠償責任が問われるケースも増えてきました。この記事では、10:0の過失でオービスを破損した場合の損害賠償や、その評価額・資産価値に関する注意点を解説します。
移動オービスとは?設置主体と資産区分
移動オービスは、警察や自治体が交通違反の取締強化を目的に導入している機器です。多くは高性能なセンサーやカメラを搭載し、数百万円以上の価格で導入されています。
導入主体は主に都道府県警察であり、公的資産として扱われます。そのため、破損した場合には損害賠償が求められるケースがあり得ます。
過失割合が10:0の場合の損害賠償の原則
過失割合が明確に加害者側にある(10:0)場合、原則として損害を全額賠償する義務が生じます。これは民法709条に基づく不法行為に基づく損害賠償の原則です。
例えば、車が誤って路肩に突っ込み、設置中のオービスに接触して破損させた場合、加害者(ドライバーまたは運転者の所属する法人)が、修理費用あるいは新品交換費用に相当する額の損害賠償責任を負う可能性が高いです。
全額請求される?減額は可能?
一見すると新品価格がそのまま請求されるように思えますが、実際には「減価償却」や「残存価値」などが考慮される可能性があります。特に、すでに数年使用されている機器であれば、時価に基づいた算出になるのが一般的です。
また、一部の部品が再利用可能であれば、減額の対象となることもあります。ただし、これは機器の状態や警察の方針、保険会社との協議次第で変わります。
オービスの返還要求はできる?
破損したとはいえ、オービスは警察などの公的機関の所有物であり、廃車とは違って個人に返還されることは通常ありません。したがって、「センサー類の取り外し」「部品の返還」を求めることは現実的には困難です。
とはいえ、弁護士を通して「残存価値の査定に使いたい」などの理由を提示し、警察側との交渉を図る余地はあります。過去に民事で同様の交渉が成立した例もありますが、稀です。
実例:保険を活用しての対応
こうした損害は多くの場合、任意保険の「対物賠償責任保険」でカバーされます。特に「公物」や「公的資産」に対する損害も補償対象に含まれることが多く、保険に入っていれば自己負担なしで解決できる場合がほとんどです。
ただし、免責金額の設定や契約内容によっては一部自己負担が発生する可能性があるため、事前の確認が重要です。
まとめ
移動オービスとの接触事故では、過失が100%ある場合には原則全額賠償となります。ただし、減価償却や部品の再利用などを根拠に減額交渉する余地もありますが、機器の返還要求は現実的ではありません。
重要なのは、こうした事故にも対応できる任意保険に加入し、事故発生時には速やかに警察・保険会社・弁護士へ連絡を取ることです。