ニュースなどで「万引き」「窃盗」という言葉を目にすることは多いですが、これらは法律的には同じ「窃盗罪」に該当します。ただし、報道や日常会話ではあえて区別して使われることもあります。本記事では、その違いや意味、使い分けの基準について詳しく解説します。
そもそも「窃盗」とは?刑法での定義
「窃盗」とは、刑法第235条に定められた犯罪で、「他人の財物を窃取した者は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する」とされています。つまり、他人の物を無断で持ち出す行為全般が「窃盗罪」として処罰の対象となります。
たとえば、他人の家に忍び込んで財布を盗む、職場で同僚の荷物を持ち去る、スーパーで商品を無断で持ち帰るなど、いずれも窃盗です。
「万引き」とは?なぜ別の言葉が使われるのか
「万引き」は法律上の用語ではなく、主に小売店舗で商品を盗む行為を指す俗語です。店の中で犯行が行われることが多く、日常用語や報道、警察の表現として定着しています。未成年者の軽微な犯行として扱われることも多く、「万引き=軽い犯罪」と誤解されることがありますが、刑法上は明確に「窃盗罪」です。
一方で、宝石店やブランド店、高級時計店などでの犯行の場合、同じ店舗内での盗みでも「窃盗」と表現されることが多く、これは「被害額」や「社会的インパクト」が影響していると考えられます。
「万引き」と「窃盗」の違いは金額?場所?
法律的には区別はありませんが、一般に以下のような要素で使い分けがされやすい傾向があります。
- 犯行場所がスーパーマーケットやコンビニ → 「万引き」
- 高級店や大規模な計画的犯行 → 「窃盗」
- 未成年による犯行 → 「万引き」と表現されがち
- 被害金額が高額(数十万円以上) → 「窃盗」と表現されやすい
たとえば、1,000円の文房具をコンビニで盗んだ場合は「万引き」と報道されることが多く、30万円の時計を百貨店で盗んだ場合は「窃盗」とされることがほとんどです。
実例:報道や判例から見る表現の違い
2023年の報道例では、コンビニでおにぎりを盗んだ未成年が「万引き」と紹介された一方で、銀座の高級ブランド店からバッグを盗んだ事件は「窃盗」とされていました。このように、社会的影響や犯行の規模によって、同じ法律でも表現が変化します。
また、判例においても、量刑には盗まれた金額や犯行の手口、再犯の有無が重視され、「万引きか窃盗か」の表現は影響しません。
未成年や初犯への対応はどうなる?
未成年や初犯の場合、家庭裁判所での審判に付されたり、保護観察処分となることが多いですが、成人と同じく刑法第235条が適用されます。言い換えれば、「万引き」という呼称であっても、刑事処罰の対象になりうる重大な犯罪なのです。
仮に万引きであっても被害額が高額である、組織的犯行であるといった場合には、執行猶予のない懲役刑が科されることもあります。
まとめ:「万引き」も「窃盗」も刑法上は同じ罪
「万引き」と「窃盗」は、報道や日常会話で使い分けられる言葉であり、法的には区別がありません。被害の内容や社会的背景により、報道表現として変化するに過ぎず、どちらも刑法上は同じく「窃盗罪」に該当します。
軽く考えがちな「万引き」も、場合によっては重い刑罰が科されることがあるため、認識のズレが生まれないよう、正しい知識を持っておくことが重要です。