交通事故などによる頭部外傷は、外見的な回復があっても脳への影響が残ることがあります。その中でも心配されるのが、数年後に発症する「外傷後てんかん」。この記事では、頭部外傷とてんかんの関係、発症リスク、予防の考え方について詳しく解説します。
頭部外傷とてんかんの関係とは
頭部外傷後に起こるてんかんは「外傷後てんかん(post-traumatic epilepsy)」と呼ばれ、脳に損傷を受けたことによって神経活動の異常が引き起こされる状態です。発症するのは事故直後とは限らず、数ヶ月から数年後に初めて発作が現れるケースもあります。
このような遅発性てんかんは、受傷時に出血・脳挫傷・くも膜下出血などがあった場合にリスクが高まるとされますが、外見上回復しているように見える人でも注意は必要です。
なぜ数年後に発作が現れることがあるのか
脳は非常に繊細な臓器であり、外傷によってダメージを受けると、その修復過程で神経ネットワークのバランスが崩れることがあります。この過程は時間をかけて進行するため、てんかんが数年後に初めて発症するケースもあるのです。
たとえば事故後に一度も発作が起こらなかったとしても、脳内の損傷部位に「過敏な電気信号」が蓄積し、ある日突然発作を誘発することがあります。
現在症状がなくても油断は禁物
「薬が出ていない=発症しない」というわけではありません。現在、てんかん発作が一度も起きていなければ抗てんかん薬の投与は行われないのが通常です。しかし、定期的な診察や検査で経過観察をすることが望ましいとされています。
脳波検査(EEG)やMRIなどを通じて、神経活動の異常が見られないかチェックすることも予防につながります。異常の兆候が見られれば、発作を未然に防ぐための投薬が検討されることもあります。
てんかん発症のリスク因子
頭部外傷後にてんかんを発症するリスクは、以下のような要因で高くなると報告されています。
- 脳出血やくも膜下出血の有無
- 脳挫傷などの重篤な損傷
- 意識障害の持続(30分以上)
- 外傷後すぐに発作を起こした既往
これらに該当する場合は、たとえ現在症状がなくても、神経内科での定期検査や予防的観察が重要となります。
心配を軽減するためにできること
発症リスクをゼロにすることは難しいですが、以下のような対策で安心材料を増やすことは可能です。
- 年に1回程度の神経内科または脳神経外科での健康チェック
- てんかんの前兆(意識のかすみ、まぶたのピクつき等)に注意する
- 睡眠不足や過度なストレスを避ける
また、万が一に備えて家族や身近な人に「発作時の対応方法」を共有しておくと安心です。発作時に慌てず対応できる環境があれば、心理的な不安も軽減されます。
まとめ:心配しすぎず、正しい知識と行動を
頭部外傷後にてんかんが発症する可能性はゼロではありませんが、全ての人がそうなるわけではありません。発作が起きる前に予測することは難しいですが、定期的な検査と注意深い観察によってリスクを最小限に抑えることは可能です。
もし不安が続くようであれば、かかりつけ医や脳神経専門医に相談し、必要に応じて検査を受けておきましょう。心配な気持ちに寄り添いながら、冷静に予防と対策を進めることが、何より大切です。