借用書の返済期限は何年先まで有効?10年・20年・30年後でも法的に認められるのか

個人間の金銭の貸し借りで作成される借用書。返済期限を設けることは一般的ですが、その期限が10年後・20年後・30年後と長期にわたる場合、果たして法的に認められるのでしょうか。また、そのような契約が贈与税回避などのリスクと見なされる可能性についても解説します。

借用書における返済期限の基本

借用書は民法に基づいた契約書であり、契約自由の原則が認められています。そのため、返済期限を当事者同士が合意すれば「10年後」や「30年後」であっても法的に無効とはなりません。契約内容に明確な意思表示と証拠があることが重要です。

ただし、一般的には返済能力や実現可能性が疑問視されるような長期の返済計画である場合、後に税務署などから「実質的に返済する意思がない=贈与」とみなされるおそれがあります。

返済期限が極端に長い場合の注意点

■ 実務上よくある疑念:
・契約者が高齢である
・返済計画が非現実的(例:30年後に一括返済)
・利息の設定がない、または極端に低い
・返済実績がまったくない

このようなケースでは、税務署が贈与と判断するリスクがあるため、形式上の借用書では不十分です。

借用書の信頼性を高めるポイント

  • 返済スケジュールを現実的に設定する(例:5年、10年)
  • 利息を設定し、金銭貸借契約書として公正証書にする
  • 毎年返済の実績を残し、通帳などで証拠を記録する
  • 第三者(税理士・司法書士)を立ち会わせる

こうした対応により、契約が形式的でないことを証明しやすくなります。

贈与税逃れとみなされるリスクとは?

税法上、返済の実態がない借用書による金銭の受け渡しは、「贈与」と判断されることがあります。特に無利息で返済期限も非常に先である場合、実質的には贈与と変わらないとされ、後から多額の贈与税が課されるリスクがあります。

たとえば:親から子へ3,000万円を貸したとする借用書を30年返済で作成し、実際には1円も返済されないままだった場合、税務調査で贈与と判定される可能性が高いです。

実例:税務署に否認されたケース

国税庁の事例集によると、親族間での借用書に関して「返済意思がない」と見なされ、贈与税の課税処分を受けたケースがあります。

この事例では、・利息の取り決めなし ・返済期限は30年後 ・返済の実績ゼロ という内容から、借用書の存在は形式的なものであり、実質的に贈与であると判断されました。

まとめ:返済期限の自由はあるが「実態」が問われる

借用書における返済期限は、当事者間の自由な合意によって10年・20年・30年先と設定可能です。しかし、実際の返済が行われなければ税務上は贈与とみなされるリスクもあります。

形式だけでなく実態の伴った契約を行うことが大切です。契約時には返済計画・利息・証拠の残し方などをしっかり整え、必要に応じて税理士や司法書士に相談することをおすすめします。

[参照] 国税庁:贈与とみなされる場合の解説

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