モラルハラスメントとカスタマーハラスメントへの対策は、近年注目が高まっていますが、実際にはどこまで進んでいるのか、本当に改善につながっているのかという疑問も多いでしょう。本記事では、現状の取り組みと課題を整理し、現実的な目線で解説します。
モラハラの現状と職場対策の進捗
2025年の厚労省調査では、職場でモラハラを受けた人は約31.4%に上ります(ハラスメント全体では55.1%):contentReference[oaicite:0]{index=0}。
一方で、企業に「ハラスメント対策がある」と回答した人は60%であり、実施済みと感じる人の内、約59.3%が対策が強化されたと回答しています。ただ、多くが「十分とは言えない」と感じているのが現実です:contentReference[oaicite:1]{index=1}。
カスハラ(顧客ハラスメント)の実情と制度整備
サービス業従事者の約10人に1人(10.8%)が過去3年間にカスハラを経験しており、特にコンタクトセンターでは83%が暴言や怒声被害を受け、90%がストレスを感じています:contentReference[oaicite:2]{index=2}。
2025年6月にはカスハラ対策が労働施策総合推進法で義務化され、事業主による雇用管理上の措置が求められるようになりました:contentReference[oaicite:3]{index=3}。
制度施策の進展と自治体の動き
2024年4月からは東京都を含む複数自治体でカスハラ防止条例が施行され、相談窓口設置や初期対応手順の整備が条例で義務付けられています。ただし罰則規定はなく、法制度への移行が求められています:contentReference[oaicite:4]{index=4}。
これに続き、国レベルでも2025年中の制度設計が進められていますが、実効性を懸念する声も出ています:contentReference[oaicite:5]{index=5}。
企業現場での対応と課題
多くの企業でカスハラ対策として「相談窓口の設置」「ガイドラインの周知」「研修実施」などが行われ始めていますが、それでも労働者の過半数が「対策は不十分」と回答しています:contentReference[oaicite:6]{index=6}。
また、対策が存在していても社員の80%以上が直接相談できず、ハラスメントが原因で退職した例も半数近くあるなど、現場の実感として改善が追いついていない状況もあります:contentReference[oaicite:7]{index=7}。
うまく進んでいると感じられない理由と今後の展望
モラハラ・カスハラともに、対策が義務化されたり条例が整備されたりと制度は整いつつありますが、現場レベルでは制度の浸透や具体的対応の実施までが追いついていないのが現実です。
特に、被害の線引きが難しく、加害者が顧客等外部者であるカスハラでは企業が対策を明示しにくい構造的課題があります:contentReference[oaicite:8]{index=8}。
まとめ
現在の状況を整理すると。
- モラハラやカスハラは被害者割合が高く、重大な社会問題となっている。
- カスハラ対策は法律や条例で義務化が進む一方、モラハラについては企業の自主対応が中心。
- 制度は整備されつつあるが、現場や被害者の実感としては「対策はまだ不十分」と感じられている。
- 今後は法制度の強化、企業での実効性ある運用、消費者の啓発が不可欠。
対策は着実に前進していますが、被害を実感している現場の声から見ると「十分に進んでいる」と感じるには、まだ道半ばと言えるでしょう。