駐車場などでのごく軽い衝突事故でも、「ムチ打ち症」と診断されるケースが存在します。しかし、目に見えない怪我だけに、本当に痛みがあるのか、それとも詐病(嘘の症状)なのかが周囲から疑われやすいのも事実です。今回は、こうした状況が発生する背景や、法的・医療的観点から見たポイントを整理して解説します。
軽微な接触でもムチ打ちになる可能性はあるのか?
ムチ打ちは、低速の追突事故でも発症することがあります。衝撃の程度だけで判断するのではなく、首の筋肉や靭帯に瞬間的な負荷がかかることで生じる頸椎捻挫です。
一方で、車両がわずかに動いた程度の衝撃で「本当に首を痛めるのか?」という疑問の声も多く、実際には症状の有無を医学的に証明することは難しいという問題があります。
1人だけが通院している状況は不自然?
同乗者4人中、運転者だけが病院へ通っているケースでは、周囲から「なぜ他の人は無傷なのか?」という疑念が生まれやすいです。とはいえ、座っている姿勢、体格、衝撃の受け方によって症状の有無は異なるため、一概に不自然とは断定できません。
むしろ、加害者や保険会社からすれば、「本当に必要な治療なのか」を慎重に見極める必要がある状況です。
「痛くないのに痛い」と言ったら詐病になる?
保険金を得る目的で症状を偽る行為は、詐欺罪(刑法246条)に該当する可能性があります。これは、交通事故後に通院する場合でも、「実際には痛みがない」「医師の診断を偽って受けた」といった証拠があれば、問題視されることがあります。
また、医師に“痛い”と伝えれば診断書は出るという点を悪用するケースもありますが、後の調査で不自然な点が明らかになれば、保険会社が支払いを拒否する・調査機関へ連絡することもあります。
保険会社の対応と調査の実態
保険会社は、一定額以上の支払いがある場合や、事故の状況と治療内容が見合っていないと判断した場合、医療照会・事故現場の再調査・調査会社による聞き取りを行うことがあります。
たとえば、診療報酬明細や通院記録、レントゲン等の結果と事故の衝撃度が合っていない場合には、疑わしい事例として保険金支払いを見直す対象になることもあります。
「小遣い稼ぎ」のような感覚は危険
たとえ数万円の慰謝料を得られたとしても、それが虚偽の通院や詐病であれば、最悪の場合、刑事告発や返金命令が下されるリスクがあります。
特にSNSや知人との会話で「本当は痛くないけど通ってる」などと発言すれば、証拠として残り、後々トラブルに発展することもあります。
まとめ:正当な請求と詐欺の境界線に注意
交通事故後の対応は慎重に行うべきです。本当に痛みがあるなら適切な治療を受けることは正当な権利ですが、虚偽の通院は詐欺に直結します。
- 軽微な衝突でもムチ打ちは起こり得るが、疑われやすい
- 1人だけが通院している場合、説明責任が重要
- 保険金目的の通院は詐欺罪になる可能性がある
- 保険会社は不審な点を調査する仕組みを持っている
「たかが数万円」と思わず、誠実な対応を心がけましょう。正当な補償は受けるべきですが、制度を悪用することは、信頼も将来も失う行為であることを忘れないようにしましょう。