車の整備後に不具合が発生し、整備業者がその責任を否定した場合、果たして消費者側にはどのような権利と対応手段があるのでしょうか?特に、ショックアブソーバー交換後にハンドルの傾きやアライメント不良が起こるケースは珍しくなく、安全面にも関わる重大な問題です。本記事では、法律的な観点から整備ミスと費用負担について解説します。
ショックアブソーバー交換とアライメントの関係
ショックアブソーバーは車のサスペンションの一部であり、交換によってタイヤの角度やハンドル位置に影響が出ることがあります。特にフロント側を交換した場合、アライメント(トー角、キャンバー角など)の狂いが発生しやすく、ハンドルが傾いた状態でないと直進できないなどの症状が出ることもあります。
整備後にアライメント調整を行わないと、タイヤの偏摩耗や燃費の悪化、最悪の場合は走行中のハンドル操作の不安定さが生じ、事故のリスクが高まります。
整備不良は「瑕疵」に該当するのか
民法上、整備業者とユーザーの間には「請負契約」が成立します。この契約に基づいて、業者は「仕事を完成させる義務」があり、その成果物に不具合(瑕疵)がある場合、瑕疵担保責任(民法第562条など)が問われる可能性があります。
具体的には、ショックアブソーバーを交換したにもかかわらず、ハンドルの傾きやアライメント不良を放置して引き渡した場合、「仕事の完成」とはいえず、整備不良と見なされる可能性があります。
説明義務違反と消費者契約法の観点
整備業者が「アライメント調整は自己責任で行ってください」といった免責ルールを後出しで主張した場合、その主張が有効となるかは疑問です。なぜなら、事前の説明が不十分であれば、説明義務違反とされ、民事責任を問われる可能性があるためです。
また、消費者契約法では、業者の一方的な免責条項は消費者にとって著しく不利益な内容である場合、無効とされることがあります(消費者契約法第10条)。
費用請求に応じない業者への対応策
本来であれば、整備不良の修正費用(今回の例ではアライメント調整代)は整備業者側が負担すべきです。口頭でも「費用を店舗で賄う」と約束していた場合、その約束は「準委任契約の修補義務」または「債務不履行」に基づいて履行を請求する余地があります。
対応策としては以下の通りです。
- まず内容証明郵便で費用請求を行う
- それでも応じない場合は、簡易裁判所で少額訴訟(60万円以下)を検討
- 国民生活センターや自動車整備振興会へ相談
領収書や連絡履歴(メール・LINEなど)が証拠として重要になります。
整備業者の法令遵守と安全責任
道路運送車両法では、整備業者は「道路運送車両の安全確保」に対して一定の責任を負っています。もし整備後の状態が原因で事故が発生した場合、整備業者に業務上過失傷害罪が問われることもあり得ます。
また、業者が認証工場である場合、国交省への苦情申し立てにより、行政処分や認証取消が行われるケースもあります。
まとめ:泣き寝入りせず、法的対応を
ショックアブソーバー交換後の不具合放置は、民法上の瑕疵に該当する可能性が高く、整備業者には修正責任があります。一方的な免責主張や費用負担拒否には、法的手段による対抗も検討しましょう。
消費者契約法や民法の観点からも、泣き寝入りせずに正当な請求を行うことが大切です。必要に応じて法テラスや行政機関のサポートも活用してください。