賃貸借契約が終了したのに使用人が居座れる?司法書士試験で問われる明渡し請求の可否と法的背景

司法書士試験において問われる不動産賃貸借に関する論点の一つが、「賃貸借契約終了後に同居していた使用人が物件に居座る場合、明渡しを請求できるかどうか」というテーマです。本記事では、事案の背景と法律構成をもとに、正しく理解しておくべきポイントを解説します。

事案の整理:Cはなぜ居座れるのか?

問題の設定は次のとおりです。Aが所有する甲建物を、Bが賃借して居住。CはBの使用人として甲建物で同居していた。AB間の賃貸借契約が解除された場合、AはCに明渡し請求ができるのか?

一見、「賃貸借契約が終わったのだから、Cも出て行くべきでは?」と思いがちですが、法的にはそう単純ではありません。司法書士試験でもこのような『関係当事者の法律関係』を正確に把握する力が問われます。

Cは「賃借人」ではないが「占有者」である

CはBの使用人であり、Aとの直接的な賃貸借契約関係には立っていません。すなわち、Cには甲建物を使用する法的権限(本権)がないといえます。

しかし、民法上、使用人などが同居人として物件を使用していた場合、本人(賃借人)Bの占有補助者としての立場が認められます。したがって、Bが明渡すべき立場になった時点で、Cもその地位を失い、原則的には退去すべき立場にあります。

それでもCに明渡し請求できないとされる理由

この事案では、「AはCに対して明渡し請求ができない」とされていますが、これは法的に次のような考え方によります。

CはBに従属する立場で居住していたにすぎず、独自にAの占有を侵害しているわけではないため、C個人に対して明渡しを求めるには、まずBに対する明渡し請求・執行手続きを通じるのが筋とされるからです。

つまり、賃貸借契約の終了によりAが占有回復を求める先は、直接的な賃借人であるBであり、使用人であるCには通常、独自の占有権限がないため、単独で訴訟対象にはなりにくいという整理です。

実例:判例・試験での典型論点

判例(最判昭和35年12月16日)でも、「賃借人の家族や使用人は、あくまで賃借人の占有に従属して居住しているにすぎない」との判断があり、賃借人への明渡し命令によって、従属者も排除されるとの立場が示されています。

司法書士試験の選択肢でも、「賃借人に従属する者は、契約終了後であっても特段の事情がない限り、直ちに第三者から明渡し請求を受けることはできない」との記述が正解肢とされることがあります。

無断で居座り続けたら?Cが単独占有に転じた場合の法的対応

ただし、賃借人Bが退去し、Cだけが物件に残り続け、明らかにAの意思に反して単独で居座っているとみなされるような状況になると、Cに対しても不法占拠として明渡し請求が可能となる場合があります。

このような事態では、Cが新たに独自の占有を主張していると評価されるため、AはC個人を被告として訴訟を提起し、明渡しを求めることができます。

まとめ

司法書士試験で問われるこの事案では、建物の使用人Cはあくまで賃借人Bに従属する立場であるため、契約解除後も直ちにAがCに対して明渡し請求を行うことはできないとされます。

ただし、Bが退去し、Cが事実上の占有者となった場合などには、不法占拠とみなされ、Aが直接Cに対して明渡しを請求できる場合もあるため、状況に応じた法的整理が重要です。

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