交通事故で相手車両のスピード違反を立証する方法|ドラレコ・警察記録・実況見分調書は過失割合の証拠になる?

車と自転車の交通事故では、基本となる過失割合だけでなく、事故当時の速度、信号、道路状況、見通し、双方の進行方法などによって過失割合が修正されることがあります。なかでも争点になりやすいのが、相手車両に速度超過があったかどうかです。

しかし、事故後に単に「かなり速かった」と主張するだけでは、具体的な速度超過を証明するのは簡単ではありません。そこで重要になるのが、ドライブレコーダー、防犯カメラ、実況見分調書などの客観的な資料です。

この記事では、交通事故の民事上の過失割合を考える際に、相手車両の速度をどのような資料から立証できるのか、警察が作成した記録を利用できる可能性があるのかを整理します。

交通事故では速度超過が過失割合に影響することがある

交通事故の過失割合は、単純に「車対自転車だから何対何」と機械的に決まるものではありません。事故類型を基礎にしながら、個別の事故に存在した事情を考慮して判断されます。

そのため、相手車両に一定程度の速度超過が認められれば、過失割合を修正する事情として問題になることがあります。ただし、どの程度の速度超過で、どの程度過失割合に影響するかは事故類型や具体的状況によって異なります。

たとえば制限速度40km/hの道路で事故が発生した場合、「車が速く見えた」という印象と、「実際に60km/h程度で走行していたことを客観的資料から立証できる」というケースでは、証拠としての意味が大きく異なります。

相手車両の速度を立証するために使える主な証拠

交通事故で速度を争う場合、事故直前の車両の動きを客観的に確認できる資料を集めることが重要です。代表的なものとして次のような資料があります。

  • ドライブレコーダーの映像
  • 事故現場付近の店舗・住宅・施設などの防犯カメラ映像
  • 道路上の監視カメラ等の映像
  • 目撃者の証言
  • 事故車両の損傷状況
  • 路面の痕跡や停止位置
  • 実況見分調書や写真撮影報告書などの捜査記録
  • 車両に記録されたデータが利用できる場合にはその記録

特に映像が残っている場合、画面内に電柱、道路標示、建物、白線など距離を把握できる固定物が映っていれば、一定区間を車両が何秒で移動したのかを解析することで速度を推定できる場合があります。

たとえば実際の距離が20メートルと確認できる2地点を車が約1秒で通過している映像があれば、その時間と距離は速度を検討する重要な材料になります。ただし、映像のフレームレート、撮影角度、レンズによる歪み、距離の測定精度などが関係するため、争いが大きい事故では専門的な映像解析や事故鑑定が必要になることがあります。

警察の事故記録は民事だから無関係というわけではない

交通事故について警察が作成した資料は刑事手続・捜査に関する資料ですが、民事上の損害賠償や過失割合を判断する際にも利用できる可能性があります。「民事の話だから警察の記録は一切関係ない」というわけではありません。

交通事故では、警察による実況見分が行われていれば、事故現場の道路状況、車両の位置、当事者の指示説明、痕跡などが実況見分調書に記録されていることがあります。写真撮影報告書などの客観的資料が作成されている場合もあります。

法務省も、不起訴事件の記録は原則として閲覧できないものの、交通事故に関する実況見分調書等について、事件に関連する民事訴訟の裁判所からの送付嘱託や弁護士会からの照会に応じてきたことを案内しています。また、民事訴訟等で損害賠償請求権などを行使するために必要と認められる場合には、一定の範囲で実況見分調書等を閲覧できる場合があります。[参照:法務省「捜査段階での被害者支援」]

実況見分調書に速度そのものが記録されているとは限らない

注意したいのは、実況見分調書を入手できれば必ず相手車両の正確な速度が分かる、というわけではないことです。警察が事故当時の速度を直接測定していたとは限らないからです。

一方で、事故地点、衝突地点、車両の停止位置、道路上の痕跡、事故現場の写真などが記録されていれば、ほかの証拠と組み合わせて事故状況を検討する材料になる可能性があります。

また、警察や検察が保有する記録のすべてを自由に取得できるわけではありません。事件が起訴されたのか不起訴になったのか、申請者がどの立場なのか、資料を必要とする目的などによって閲覧・謄写できる範囲や手続が異なります。

不起訴でも実況見分調書などを利用できる場合がある

「不起訴になったら警察関係の資料はもう使えない」と考える必要もありません。法務省によれば、不起訴事件記録は原則非公開ですが、民事訴訟等で被害回復のために損害賠償請求権その他の権利を行使する目的など、一定の場合には実況見分調書等の客観的証拠について閲覧・謄写が認められることがあります。

さらに法務省は、被害者等以外の者からの請求であっても、たとえば過失相殺事由の有無を把握するために加害者側が記録の閲覧・謄写を求める場合について、相当と認められるときには応じるという取扱いを示しています。[参照:法務省「不起訴事件記録の開示について」]

ただし、実際にどの資料を取得できるかは個別事件によります。捜査への影響や関係者のプライバシーなどを理由として、閲覧できない資料や一部がマスキングされる資料もあります。

防犯カメラやドラレコは早めに確保することが重要

速度を立証したい場合、警察記録だけに頼らず、事故直後から周辺の映像資料を探すことも重要です。店舗、マンション、駐車場、会社、ガソリンスタンドなどの防犯カメラに事故車両が映っている可能性があります。

ただし、防犯カメラの映像は保存期間が短いことがあります。時間が経過すると新しい映像で上書きされ、事故当時の記録が消えてしまう可能性があります。そのため、事故発生から日が浅い場合には、できるだけ早く映像の有無を確認することが大切です。

自分や相手方、後続車などのドライブレコーダー映像についても同様です。事故直前だけでなく、衝突する数秒前からの映像が残っていれば、車両が一定区間を移動する時間から速度を分析できる可能性があります。

映像から速度を計算するときは「根拠」を明確にする

映像解析では、「映像を見る限り速そう」という感覚的な評価より、距離と経過時間を客観化することが重要です。道路上に実際の距離を確認できる基準点があり、その間を移動する時間が映像から正確に測定できれば、速度推定の根拠が強くなります。

もっとも、一般の人が動画を再生して独自に計算した数字だけでは、相手方が撮影条件や計算方法の正確性を争うことがあります。過失割合への影響が大きいケースでは、交通事故の映像解析や事故鑑定を扱う専門家に分析を依頼する方法もあります。

事故車の損傷だけから「この壊れ方なら時速○km」と単純に判断することも困難です。車種、重量、衝突角度、ブレーキの有無、自転車側の動きなど多くの条件が関係するため、複数の資料を組み合わせて検討する必要があります。

過失割合でもめている場合に確認したいこと

相手方の速度超過によって過失割合が変わる可能性を指摘されている場合は、まず「何km/h以上の速度超過が認められれば、どのような理由で過失割合が修正されるのか」を確認すると争点を整理しやすくなります。

そのうえで、ドラレコ、防犯カメラ、事故現場の写真、目撃者、実況見分調書など、速度を裏付けられる資料が存在するかを確認します。相手方の保険会社との交渉中であれば、自分側の保険会社や担当者にも、どの証拠が不足しているのか具体的に確認するとよいでしょう。

過失割合によって賠償額が大きく変わる事故や、速度超過の立証が重要な争点になっている場合は、交通事故を扱う弁護士への相談も選択肢です。弁護士であれば、刑事記録の取得方法、証拠収集、必要に応じた照会や民事訴訟での手続などを個別事情に応じて検討できます。

まとめ|警察記録も含めて客観的な証拠を積み上げる

車と自転車の交通事故で相手車両の速度超過が過失割合に影響する場合、重要なのは「速かったと思う」という主観ではなく、具体的な速度を裏付ける客観的証拠です。

ドライブレコーダーや防犯カメラは有力な資料になり得ます。また、警察が作成した実況見分調書や写真撮影報告書なども、民事事件だから無関係になるわけではなく、一定の手続によって閲覧・謄写したり、民事上の立証資料として利用したりできる場合があります。

ただし、警察記録に必ず速度が記載されているわけではなく、記録の取得可否も事件の処分状況などによって異なります。速度超過が過失割合を左右する重要な争点であれば、映像の保存期間が過ぎる前に証拠を確保し、必要に応じて弁護士や事故解析の専門家に相談しながら立証方法を検討することが重要です。

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