交通事故で自分の過失が100%だった場合でも、自分が加入している任意保険に人身傷害保険、搭乗者傷害保険、自損事故保険などが付いていれば、自分のケガについて保険金を受け取れることがあります。特に人身傷害保険は、過失割合にかかわらず、約款の基準に従って治療費・休業損害・精神的損害などを補償する保険です。[参照]一方、自分の過失が100%で相手に責任がない事故では、相手側の自賠責保険から自分のケガについて支払いを受けることは原則できません。したがって「57日通院したから一律で○万円」とは計算できず、どの保険から支払われるのか、契約している補償の種類、事故から症状固定までの期間、実通院日数、家事への支障、後遺障害の有無を確認する必要があります。
過失100%の事故では相手の自賠責から自分のケガは原則補償されない
まず整理しておきたいのが、自賠責保険と自分の任意保険の違いです。自賠責保険は、自動車事故で「他人」を死傷させた場合の損害賠償を最低限補償する制度です。運転者自身のケガを補償する保険ではありません。[参照]
日本損害保険協会も、単独事故や相手側に責任がない事故、つまり自分の過失割合が100%となるようなケースでは、自賠責保険から自分自身のケガについて保険金を受け取れないと説明しています。[参照]
例えば自分が赤信号を見落として停止中の車に追突し、自分もむち打ちになった場合、原則として相手から自分の治療費や慰謝料を賠償してもらうことはできません。その代わり、自分の任意保険に人身傷害保険などが付いていれば、そちらから補償を受けられる可能性があります。
過失100%でも「人身傷害保険」があれば自分のケガを補償できる
人身傷害保険は、自動車事故で自分や同乗者が死傷した場合、保険金額の範囲内で、保険会社の約款に定められた基準によって算定された損害額を補償する保険です。
大きな特徴は、過失割合による減額を原則として受けず、自分の過失部分も含めて補償されることです。日本損害保険協会も、人身傷害保険では相手のいる事故か単独事故かを問わず、治療費や休業損害などを約款の基準に基づいて支払うと説明しています。[参照]
例えば事故の責任が自分100%でも、契約車に乗車中の事故が人身傷害保険の補償範囲に入っていれば、治療費、休業損害、精神的損害などが保険会社の算定基準に従って支払われる可能性があります。
「保険金が下りる」と言われたら最初に補償の名称を確認する
保険会社から「保険金が出ます」と説明されても、何の保険から支払われるのかによって計算方法は大きく違います。
| 補償 | 主な特徴 |
|---|---|
| 人身傷害保険 | 治療費・休業損害・精神的損害など実際の損害を約款基準で算定 |
| 搭乗者傷害保険 | 入通院日数やケガの内容などに応じ、契約で決めた金額を支払うタイプ |
| 自損事故保険 | 自賠責から補償されない100%過失・単独事故などで一定の保険金を支払う |
| 傷害一時金特約など | 一定の日数以上通院した場合などに定額の一時金を支払う商品がある |
例えば三井住友海上では、人身傷害保険について治療費や休業損害などの実際の損害額を保険金額の範囲内で支払い、別の傷害一時金特約では実治療日数に応じてあらかじめ決められた額を支払うと説明しています。[参照]
したがって、金額を予想する前に保険会社へ「今回支払われるのは人身傷害ですか、搭乗者傷害ですか、それとも一時金特約ですか」と確認するのが第一歩です。
専業主婦でも休業損害が認められることがある
「専業主婦なので仕事を休んだわけではないから、休業損害は0円」と考える必要はありません。家族のために炊事・掃除・洗濯・育児などを行っている家事従事者は、事故によって家事ができなくなれば、その家事労働について休業損害が認められる場合があります。
自賠責保険の請求案内でも、家族のために家事を行う主婦・主夫について休業損害を請求できると案内されています。[参照]
人身傷害保険についても家事従事者の休業損害を算定する商品があります。ただし、具体的な1日当たりの金額や認定方法は保険会社・契約時期・約款によって異なるため、一律に「専業主婦なら1日○円」と断定することはできません。
57日通院したから休業損害も57日分になるとは限らない
ここは特に注意が必要です。実際に57日医療機関へ通ったとしても、専業主婦の休業損害が必ず57日分認定されるとは限りません。
休業損害では「通院した日数」そのものではなく、事故によるケガのため実際にどの程度家事へ支障が生じたのかが問題になります。ケガの程度、治療内容、症状の推移、家事を代わってもらった期間などから保険会社が判断します。
例えば事故直後の2週間はほぼ家事ができず、その後は徐々に家事ができるようになった場合、事故から症状固定までの全期間を100%家事不能として計算するとは限りません。逆に骨折などで長期間ほぼ家事ができなかったことが明確なら、比較的長い期間が対象になることもあります。
参考として1日6,100円で57日なら34万7,700円だが、そのまま受け取れるとは限らない
自賠責や一部の人身傷害の算定基準では、家事従事者について1日6,100円という基準が使われる例があります。その数字を単純に57日すべてへ当てはめると、6,100円×57日=34万7,700円です。
ただし、これは「57日のすべてについて家事に従事できなかったと認定された」という仮定での単純計算にすぎません。実際の保険金が34万7,700円になるという意味ではありません。
さらに人身傷害保険は保険会社ごとの約款に定める損害額算定基準で計算されます。日本損害保険協会も、実際にかかった治療費や休業損害などを約款基準で算出すると案内しています。[参照]
5月19日事故・8月22日症状固定なら治療期間は約3か月
5月19日に事故があり、8月22日に症状固定となった場合、事故日から症状固定日まではおおむね3か月強です。日付を単純に数えると約96日間になります。
その間に57日通院しているのであれば、通院頻度としては比較的高いケースといえます。ただし保険金の算定では「約96日間治療した」「57回通院した」という数字だけではなく、診断名、治療内容、症状の程度なども確認されます。
人身傷害保険では治療費・休業損害のほか、精神的損害も補償項目となるのが一般的です。例えば東京海上日動も、人身傷害保険では過失割合にかかわらず治療費、休業損害、精神的損害、逸失利益などが補償されると案内しています。[参照]
自賠責基準の慰謝料計算をそのまま当てはめるのは注意が必要
交通事故の慰謝料について、「4,300円×通院日数×2」という計算式を目にすることがあります。これは自賠責保険の傷害慰謝料を説明するときによく使われる基準です。
仮に事故から症状固定まで約96日、実通院日数57日で自賠責基準を参考計算すると、57日×2=114日ですが治療期間約96日の方が短いため、概算では4,300円×96日=41万2,800円という計算例になります。
しかし、自分の過失100%の事故について、自分自身が相手の自賠責から41万2,800円の慰謝料を受け取れるという意味ではありません。100%過失なら原則として相手側からの損害賠償はなく、自分の人身傷害保険などから支払われる金額は、その保険の約款に定める独自の算定基準によります。[参照]
人身傷害なら「休業損害+精神的損害+治療費」などを合計して算定する
人身傷害保険の保険金は、一つの「慰謝料」だけで構成されるわけではありません。
一般的には、治療費などの実費、通院交通費、休業損害、精神的損害などを保険会社の基準に従って積み上げます。後遺障害が認められれば、さらに後遺障害による逸失利益などが対象になる場合があります。[参照]
例えば治療費について保険会社がすでに病院へ直接支払っている場合、その治療費部分まで改めて本人の口座へ現金で振り込まれるわけではありません。そのため「損害額100万円=最後に100万円振り込まれる」とは限らない点にも注意しましょう。
専業主婦なら「家事従事者としての休業損害」が金額を左右しやすい
専業主婦の場合、給与所得者のような会社発行の休業損害証明書がありません。そのため事故前から家族のために家事をしていたことや、事故後どの程度家事へ支障が生じたかを確認されることがあります。
保険会社によっては家族構成、同居者、ケガの内容、家事への支障、通院状況などについて申告書の提出を求めることがあります。
例えば首・腰の痛みで「料理はできたが重い物を持てず買い物は家族に頼んだ」「洗濯物を持って階段を上がれなかった」「掃除機をかけられなかった」など、日常生活への具体的な影響を整理しておくと、保険会社へ状況を説明しやすくなります。
症状固定とは「痛みが完全になくなった日」という意味ではない
症状固定と聞くと、「治った日」と思われがちですが、必ずしもそうではありません。
国土交通省は症状固定について、症状が安定し、医学上一般に認められた治療を行ってもそれ以上の治療効果が期待できなくなった状態と説明しています。[参照]
そのため、8月22日に症状固定となった後も首や腰などに痛みが残り、通院を続けること自体はあり得ます。ただし交通事故の損害としての治療期間は、原則として症状固定までを区切りとして考えることが多くなります。
症状固定後の通院費は事故の治療費として認められないことがある
国土交通省は、自賠責保険について、後遺障害の症状固定後の治療費は原則として認定されないと案内しています。[参照]
任意保険の人身傷害でも、症状固定後の治療費については約款・事故状況に応じて扱いが異なりますが、一般には症状固定までの治療が損害算定の中心となります。
したがって8月22日以降も通院している場合は、「現在の通院費は人身傷害保険で対象になるのか」「健康保険を使って自己負担で通院する扱いなのか」を保険会社に確認しておく必要があります。
痛みが残っているなら後遺障害の手続きが関係する可能性もある
症状固定後にも痛みやしびれ、可動域制限などが残っている場合には、後遺障害について検討するケースがあります。
国土交通省によると、交通事故による傷害について治療効果がこれ以上期待できず、将来にわたって回復が見込めない症状が残った場合、医師の判断を受けて後遺障害に関する手続きを行うことができます。ただし、事故と残った症状との相当因果関係などが必要です。[参照]
単に「まだ痛い」というだけで必ず後遺障害として認められるわけではありません。診断内容、画像所見、神経学的所見、治療経過などを踏まえて判断されます。
100%過失事故では後遺障害も相手の自賠責ではなく自分の保険を確認する
通常の被害事故なら、自賠責の後遺障害等級認定が重要になります。しかし自分の過失100%で相手に賠償責任がない事故では、自分自身について相手の自賠責から後遺障害保険金を受け取るという構造にはなりません。
この場合は、自分が契約している人身傷害保険や搭乗者傷害保険などに後遺障害の補償があるかを確認します。
人身傷害保険では、後遺障害が生じた場合に逸失利益や将来の介護料などが補償対象となる商品があります。[参照]
57日通院のケースで最終的な受取額を出すために必要な情報
実際の受取額をかなり正確に計算するには、少なくとも次の情報が必要です。
- 加入している自動車保険会社
- 事故日時点の契約内容・約款
- 人身傷害保険の有無と保険金額
- 搭乗者傷害保険・傷害一時金特約の有無
- 事故日から症状固定日までの日数
- 実際の入院日数と通院日数
- 診断名とケガの程度
- 専業主婦として実際に家事へ支障があった期間
- 治療費を誰が支払ったか
- 症状固定後に後遺障害として扱われる症状があるか
特に「保険金が下りる」とだけ聞いている場合、最も重要なのは補償名です。人身傷害なのか、搭乗者傷害の一時金なのかで、数万円単位の定額給付になる場合もあれば、休業損害や精神的損害を積み上げて数十万円以上になる場合もあります。
保険会社に確認するときは「最終支払見込額の内訳」を聞く
自分で計算するより確実なのは、担当者へ内訳を確認することです。
「専業主婦ですが、家事従事者としての休業損害は認定されますか」「何日分で計算予定ですか」「精神的損害はいくらですか」「傷害一時金はありますか」「症状固定後の通院は対象外ですか」「後遺障害の手続きは必要ですか」と順番に確認すると、金額の根拠が見えやすくなります。
人身傷害保険は約款基準で損害額を認定する保険なので、単純な通院日数だけで計算するより、保険会社の提示する損害額明細を確認する方が確実です。
まとめ:100%過失・専業主婦・57日通院でも保険金はあり得るが、契約内容が分からないと金額は確定できない
自分の過失が100%の交通事故でも、人身傷害保険などへ加入していれば、自分のケガについて保険金を受け取れる可能性があります。人身傷害保険は過失割合にかかわらず、約款の基準で治療費、休業損害、精神的損害などを補償する保険です。[参照]
一方、自分の過失100%なら、相手に賠償責任がない限り、相手側の自賠責保険から自分の治療費や慰謝料を受け取ることは原則できません。[参照]そのため「57日通院したので自賠責慰謝料が○万円」という計算をそのまま当てはめないよう注意が必要です。
専業主婦については、家族のために家事を行っている家事従事者として休業損害が認められる可能性があります。ただし57日通院したから57日すべてが休業日になるとは限りません。参考として1日6,100円を57日に単純に掛ければ34万7,700円ですが、これはあくまで全57日が家事不能として認定された場合の参考計算です。
また5月19日から8月22日の症状固定までは約96日間で、57日の通院があったとしても、人身傷害の精神的損害や休業損害は加入している保険会社の約款に従って計算されます。症状固定後も痛みが残っている場合には、事故による治療費の扱いと、後遺障害について確認する必要があります。[参照]
最終的な金額を知るには、保険会社へ「今回支払われる保険の正式名称」「専業主婦の休業損害はいくら・何日分か」「精神的損害はいくらか」「一時金特約があるか」「症状固定後の扱い」「後遺障害手続きの有無」を確認するのが最も確実です。これらが分かれば、実際に口座へ振り込まれる見込額をかなり具体的に計算できます。