犯罪が発生した後、裁判が終わるまでの間に法律が改正され、刑罰が重くなるケースがあります。このような場合、裁判では改正後の厳しい法律が適用されるのか、それとも犯罪当時の法律が適用されるのか疑問に感じる人も多いでしょう。
この記事では、刑事裁判中に法改正が行われた場合の扱いについて、日本の刑法における「不遡及の原則」や、例外的なケースを交えながら分かりやすく解説します。
刑事裁判中に厳罰化されても原則は犯罪時の法律が適用される
刑事事件では、基本的に犯罪が行われた時点の法律を基準として処罰されます。そのため、犯罪後に法律が改正されて刑罰が重くなったとしても、原則として改正後の厳しい法律を適用することはできません。
これは「刑罰法規の不遡及の原則」と呼ばれるもので、日本国憲法第39条にも「実行の時に適法であった行為や、すでに無罪とされた行為について刑事上の責任を問われない」という趣旨が定められています。
例えば、ある犯罪の最高刑が懲役10年だった時期に犯罪を行い、その後の法改正で最高刑が懲役15年になった場合でも、裁判中だからといって15年の刑を科すことはできません。
なぜ裁判中でも新しい厳しい法律を使えないのか
もし裁判中に法律が厳しくなった場合、その新しい法律を適用できるとすると、国が後から刑罰を重く設定して過去の行為を処罰できることになります。
このような仕組みを認めると、国民は自分の行動が将来どのような扱いを受けるのか予測できなくなり、法治国家としての公平性が失われます。
そのため、刑罰については「行為をした時点で存在していた法律」を基準に判断することが重要視されています。
裁判中に法改正があった場合の具体例
例えば、2025年1月に犯罪が発生し、その時点では最高刑が懲役5年だったとします。その後、2025年6月に法律が改正され、最高刑が懲役10年に引き上げられた場合を考えます。
この事件の裁判が2025年7月に行われたとしても、裁判所は原則として犯罪が行われた2025年1月時点の法律を基準に判断します。つまり、最高刑5年の法律が適用されることになります。
裁判の開始時期や判決時期ではなく、「犯罪行為が行われた時点」が重要な基準になる点がポイントです。
刑罰が軽くなる法改正の場合は扱いが異なる
厳罰化の場合とは反対に、法律改正によって刑罰が軽くなった場合には、犯罪者に有利になるため新しい法律が適用されることがあります。
これは刑法第6条に定められている考え方で、犯罪後に法律によって刑が変更された場合、軽い刑を適用するというものです。
例えば、犯罪時には懲役5年以下だったものが、裁判中に改正されて懲役3年以下になった場合、新しい軽い刑罰が適用される可能性があります。
裁判中の法改正で注意すべきポイント
刑事裁判では、単純に「判決時点の法律を見る」という考え方ではありません。重要なのは、被告人が犯罪行為をした時点でどの法律が存在していたかです。
ただし、法律改正の内容が刑罰そのものではなく、手続きや裁判制度に関する変更である場合などは、別の判断になることがあります。
そのため、実際の事件では改正された法律の内容や施行時期、事件の具体的な状況を確認して判断する必要があります。
まとめ
刑事裁判中に法律が改正されて刑罰が厳しくなった場合でも、原則として犯罪を行った時点の法律が適用されます。
これは刑罰法規の不遡及の原則によるもので、後から作られた厳しい法律によって過去の行為を重く処罰されないようにするための重要なルールです。
一方で、刑罰が軽くなる法改正の場合には新しい法律が適用されることがあります。刑事事件では「いつ犯罪が行われたか」と「どのような法律改正なのか」が大きなポイントになります。