親から生前贈与を受ける予定がある場合、家族間でも「通帳を見せてほしい」「お金の使い道を確認したい」といった問題が起こることがあります。特に親が高齢になり、認知症や判断能力の低下が心配される状況では、贈与する側と受け取る側の双方を守るために慎重な対応が必要です。
この記事では、生前贈与で受贈者が通帳を見せる必要があるのか、親の財産管理をしている兄弟から確認を求められた場合の考え方、認知症の親が関係する場合に注意したいポイントについて解説します。
生前贈与を受ける人は通帳を見せる義務があるのか
基本的に、生前贈与を受ける側が自分自身の預金通帳を親族に見せなければならないという法律上の義務はありません。
贈与とは、財産を渡す人と受け取る人の合意によって成立する契約です。そのため、贈与者である親が「子どもに110万円を渡す」という意思を持ち、判断能力がある状態で契約が成立していれば、受け取る側の預金残高や生活状況が直接の条件になるわけではありません。
例えば、親が「毎年110万円を子どもに贈与したい」と考えている場合、子どもが現在いくら貯金しているか、年金をいくら受け取っているかによって、必ず贈与が無効になるわけではありません。
兄弟が親のお金を管理している場合に確認を求める理由
一方で、親の預金管理をしている兄弟が通帳を確認したいと考える背景には、親の財産を守る目的がある場合があります。高齢の親が認知症になっている場合、本人の意思確認が難しくなるため、家族が慎重になることは珍しくありません。
特に、親が施設に入居していたり、認知症の症状が進んでいたりする場合、後から「本人の意思ではなかったのではないか」「誰かが財産を勝手に動かしたのではないか」という争いになる可能性があります。
そのため、兄弟が贈与の状況を確認したいという気持ち自体は理解できます。ただし、だからといって受贈者本人の財産状況をすべて開示しなければならないということではありません。
認知症の親からの生前贈与で注意するポイント
生前贈与で最も重要なのは、贈与する親に判断能力があるかどうかです。認知症と診断されている場合でも、症状の程度によっては契約能力が残っていることがあります。
しかし、重度の認知症などで判断能力がない状態で行われた贈与は、後から無効と判断される可能性があります。そのため、贈与を行う時点で親本人が「誰に、いくら、なぜ渡すのか」を理解していることが大切です。
例えば、毎年決まった時期に親本人が子どもへ贈与する意思を示し、贈与契約書を作成して銀行振込で記録を残しておくと、後々の家族間トラブルを防ぎやすくなります。
110万円の生前贈与をする場合に残しておきたい証拠
年間110万円以下の贈与は、一般的に贈与税の基礎控除内となります。ただし、「毎年必ず110万円を渡す」という約束が最初から決まっている場合、定期贈与と判断される可能性があります。
そのため、生前贈与を行う場合は、毎回その都度の贈与であることが分かるように記録を残すことが重要です。
- 贈与契約書を作成する
- 銀行振込で記録を残す
- 贈与した日付や金額を記録する
- 親本人の意思確認を残す
現金手渡しよりも銀行振込の方が、誰から誰へ、いつ、いくら渡ったかが明確になるため、将来的な相続トラブルの予防になります。
兄弟との話し合いで大切なこと
親の財産管理をしている兄弟との間では、「疑われている」と感じて感情的になってしまうことがあります。しかし、財産問題は後の相続トラブルにつながりやすいため、できるだけ冷静に話し合うことが大切です。
例えば、「通帳を全部見せることは抵抗があるが、母本人の意思で贈与を受けることや、贈与の記録を残すことには協力する」というように、双方が納得できる方法を探すことができます。
もし家族だけで解決が難しい場合は、司法書士、弁護士、税理士、地域包括支援センターなど第三者へ相談する方法もあります。
高齢の親を守るために利用できる制度
親の認知症が進んで財産管理が難しくなっている場合、成年後見制度や任意後見制度などを検討することもあります。
成年後見制度は、判断能力が低下した人の財産管理や契約を支援する制度です。親のお金を誰が管理するのかについて家族間で不安や対立がある場合、第三者による管理が役立つことがあります。
また、地域包括支援センターでは、高齢者本人や家族の生活・介護・財産管理に関する相談を無料で受け付けています。
まとめ
生前贈与を受ける際、受け取る側が自分の通帳を親族に見せる法律上の義務は基本的にはありません。ただし、認知症の親が関係する場合は、贈与が本人の意思によるものかを明確にしておくことが重要です。
家族間で財産について不信感が生まれると、相続時に大きな問題になることがあります。贈与契約書や銀行振込など記録を残し、必要に応じて専門家へ相談することで、親の意思を守りながらトラブルを防ぐことができます。
大切なのは、誰が正しいかを争うことではなく、親本人の希望と財産を守るために、家族全員が納得できる方法を選ぶことです。