消費者金融への返済を長期間滞納していると、督促状だけでなく「訴訟等申立予告通知」のような、法的手続きを予告する通知が届くことがあります。この段階になると気になるのが、放置するといつ裁判になるのか、銀行口座や給与は差し押さえられるのか、新しく作った口座まで分かるのか、そして将来自己破産できるのかという点です。
重要なのは、債権者から届く「訴訟等申立予告通知」と裁判所から届く訴状・支払督促などは別物だということです。ただし、予告通知を無視すれば問題が消えるわけではなく、その後に訴訟や支払督促などへ進む可能性があります。
また、「1~2年放置してから自己破産すればよい」と単純に考えるのも注意が必要です。その間に判決等を取得されれば、財産に対する強制執行が問題になることがあります。ここでは、日本の一般的な制度を前提として、滞納から裁判、差押え、自己破産までを順番に整理します。
「訴訟等申立予告通知」は裁判所からの訴状とは違う
まず確認したいのは、封筒や書面の差出人です。貸金業者から届いた「訴訟等申立予告通知」は、一般的には「支払いがなければ訴訟などの法的手続きを検討・実施する」という趣旨の通知であり、その書面自体が裁判所の判決や差押命令というわけではありません。
しかし、債権者が支払いを受けられなければ、支払督促や民事訴訟などを利用して請求することができます。法テラスも、債務者が支払わない場合の法的手段として支払督促、民事調停、民事訴訟、少額訴訟などがあると説明しています。[参照:法テラス]
特に区別すべきなのは「貸金業者からの通知は無視してよい」という意味ではないことです。むしろ法的手続きへ移行する可能性が高まっていることを知らせる重要な書面として扱った方がよいでしょう。
裁判所から書類が来た後まで放置すると何が起きる?
その後、債権者が実際に裁判手続きを開始すると、裁判所から訴状や支払督促などが届く場合があります。ここからは単なる督促とは意味が大きく変わります。
裁判所から届いた書類を無視すると、債務者側の主張を十分に伝えられないまま手続きが進み、債権者が強制執行に利用できる「債務名義」を取得する可能性があります。法テラスによれば、相手の財産を差し押さえるには、判決、裁判上の和解調書、強制執行を認諾した公正証書など、公に権利が認められた文書が必要です。[参照:法テラス]
したがって、「今は返済するお金がないから裁判所の書類も放置する」という対応はおすすめできません。支払能力がないことと、裁判手続きに対応する必要がないことは別問題だからです。
銀行口座を新しく作れば債権者には分からない?
借金を滞納しているだけで、債権者が自由に全国の銀行口座をリアルタイムで閲覧できるわけではありません。しかし、だからといって「新しい銀行へ移せば絶対に発見されない」と考えることもできません。
現在の民事執行制度には、一定の要件を満たした債権者が裁判所を通じ、銀行などから債務者の預貯金に関する情報を取得する「第三者からの情報取得手続」があります。裁判所の案内では、預貯金について金融機関から取扱店舗、預貯金の種類、口座番号、金額などの情報を取得できる制度が説明されています。[参照:裁判所]
もっとも、こうした手続きには債務名義など一定の要件があります。単に返済が遅れた瞬間、債権者がすべての銀行口座を自由に検索できる仕組みではありません。
差押えを避けるために口座を隠すという考え方には注意
新しい口座を給与振込先として利用すること自体は通常の銀行利用ですが、債権者や裁判所から財産を隠すことを目的として資産を移動させる行為は別の問題を生じさせる可能性があります。とくに後から自己破産を考えている場合、財産の処分や隠匿については慎重でなければなりません。
法テラスの自己破産に関する説明でも、裁判所へ虚偽の書類を提出することなどは免責不許可事由の例として挙げられています。自己破産を検討しているなら、預金口座や所有財産は正確に申告することが基本です。[参照:法テラス]
「見つからない口座を作る方法」を考えるよりも、現在の収入・借入総額・財産を整理して、どの債務整理手続きが利用できるのかを確認する方が安全です。
預金口座が差し押さえられるとどうなる?
債権者が必要な債務名義を取得するなどの条件を満たし、預金債権に対する差押えを申し立てることがあります。差押えが行われると、対象となった預金について自由に引き出せなくなる場合があります。
法テラスによれば、差し押さえられた時点で口座に入っていた預金は引き出せなくなります。ただし、差押債権額を超える部分や、差押え後に入金された預金については扱いが異なり、再度差押えを受ける場合などもあります。[参照:法テラス]
つまり「一度口座を差し押さえられたら、その銀行口座に将来入るお金が永久に全部取られる」という単純な仕組みではありません。一方、債権者がその後あらためて強制執行を行う可能性はあります。
就職後の給与も差押えの対象になる可能性がある
就職後に勤務先が判明し、強制執行の条件が整っていれば、給与債権が差押えの対象になる可能性もあります。給与の場合には生活保障の観点から差押禁止部分が定められており、一般的な借金について給与全額がそのまま差し押さえられるわけではありません。
法テラスによると、一般的な給与・賞与については原則として手取額の4分の3に相当する部分が差押禁止とされ、手取額が44万円を超える場合には33万円までが差押禁止となります。[参照:法テラス]
給与差押えでは裁判所から勤務先にも差押命令が送達されます。そのため、給与差押えまで進むと勤務先に借金問題を知られる可能性があります。「会社に直接取り立ての電話が来ること」と「裁判所から正式な給与差押命令が勤務先へ届くこと」は分けて考える必要があります。
勤務先を債権者に知らせていなくても絶対に分からないとは限らない
借入時に登録していない新しい勤務先について、債権者が最初から当然に知っているとは限りません。しかし、法的手続きが進んだ場合には財産や勤務先に関する情報を取得する制度があります。
裁判所の「第三者からの情報取得手続」では、預貯金等の情報のほか、一定の種類の請求権について給与の支給者に関する情報を市区町村や日本年金機構などから取得する仕組みも設けられています。ただし、誰でも、どの借金についても無条件で勤務先情報を取得できるわけではなく、対象となる請求権や手続要件があります。[参照:裁判所]
そのため、「勤務先を申告していないから将来も絶対に知られない」とは断定できません。
古くて価値の低い車は自己破産すると必ず処分される?
自己破産すると「車は必ず没収される」と思われがちですが、実際には車の所有関係、ローンの有無、現在の換価価値、各裁判所の運用などによって扱いが変わります。
たとえば10年以上経過し、走行距離も多く、市場でほとんど価値が付かない車であれば、高価な車と同じ扱いになるとは限りません。一方、購入価格が安かったという理由だけで「絶対に残せる」と判断することもできません。自己破産では原則として申立時点の財産状況を確認する必要があるためです。
なお、通常の強制執行にも自動車を対象とする手続があります。裁判所は、判決などに従った支払いがされない場合に、債務者所有の自動車を差し押さえて売却し、その代金を債権者へ分配する「自動車競売」を案内しています。軽自動車については手続が異なります。[参照:裁判所]
自己破産は「数年滞納しないとできない」制度ではない
自己破産についてよくある誤解が、「何年間か滞納してからでなければ申立てできない」というものです。自己破産は、一定期間ブラックリスト状態になるまで待って利用する制度ではありません。
法テラスは、自己破産を「債務の返済ができなくなった個人の申立てにより開始される破産手続」と説明しています。また、支払い可能な額がない、またはほとんどない場合には、自己破産の申立てなどが考えられるとしています。[参照:法テラス]
したがって、「今から1~2年間はすべて無視して、その後自己破産する」という待機期間が法律上必要なわけではありません。むしろその期間中に裁判、預金差押えなどが進む可能性があるため、返済不能が明確なら早い段階で選択肢を確認する意味があります。
自己破産すると借金は自動的にゼロになるわけではない
自己破産では、破産手続と免責手続を区別して理解することも重要です。最終的に免責許可決定が確定すれば、税金、罰金、養育費など一定の例外を除いて、対象となる債務について返済義務を免れることになります。
一方で、財産を不当に隠したり、裁判所へ虚偽の説明をしたりすることは重大な問題になります。法テラスは免責不許可事由の例として、浪費やギャンブル、詐欺的な手段による借入れ、裁判所への虚偽書類の提出などを挙げています。[参照:法テラス]
そのため、将来自己破産するつもりならなおさら、銀行口座、収入、車などの財産を正確に把握し、取引履歴を残しておくことが大切です。
返済できない場合に考えられる主な債務整理
借金問題の解決方法は自己破産だけではありません。一般的には、任意整理、個人再生、自己破産などが検討されます。それぞれ必要な返済能力や財産への影響が異なります。
| 方法 | 大まかな特徴 |
|---|---|
| 任意整理 | 裁判所を利用せず、債権者と返済条件について交渉する |
| 個人再生 | 裁判所を利用して債務を減額し、原則として一定期間で返済する |
| 自己破産 | 支払不能の場合に破産・免責手続きを行い、免責が確定すれば一定の例外を除く債務の支払義務を免れる |
法テラスによれば、任意整理では残元金を3~5年程度で分割返済する内容で合意するケースが多い一方、支払い可能な額がない、またはほとんどない場合には自己破産などが考えられます。[参照:法テラス]
毎月の収入が少なく、複数社への返済がすでに困難な場合は、「どの方法が得か」というより、現在の収入で継続返済が可能なのかを数字で確認することが出発点になります。
お金がなくても法律相談を利用できる場合がある
弁護士費用を払えないことを理由に相談そのものを諦める必要はありません。法テラスには、収入・資産など一定の要件を満たす人を対象とした民事法律扶助制度があります。
法テラスでは、経済的に余裕がない人を対象として無料法律相談や弁護士・司法書士費用等の立替制度を利用できる場合があります。利用には収入や資産などの条件があります。[参照:法テラス]
特に裁判所から訴状や支払督促が届いている場合には期限が設定されていることがあるため、「自己破産するのは数年後だから」と保管したままにせず、早めに内容を確認することが重要です。
まとめ|「訴訟等申立予告通知」を放置しても借金問題は停止しない
消費者金融から「訴訟等申立予告通知」が届いた時点では、それ自体が判決や差押命令というわけではありません。しかし、支払いがない状態が続けば、支払督促や訴訟などへ進み、債権者が債務名義を取得した後には預金などへの強制執行が問題になる可能性があります。
新しい銀行口座を作れば絶対に発見されない、勤務先を知らせなければ絶対に給与差押えされない、と考えるのは危険です。裁判所を通じて預貯金情報などを取得できる制度も存在します。また、将来自己破産を考える場合には、財産や口座を隠すのではなく正確に申告することが重要です。
そして自己破産は「1~2年間滞納してからでなければできない」制度ではありません。すでに継続的な返済が困難なのであれば、放置期間を作ることより、現在の借入総額、収入、預貯金、車などの財産を整理し、任意整理・個人再生・自己破産のどれが現実的なのかを早めに確認することが、余計な裁判や差押えのリスクを増やさないための重要な対応になります。