未遂罪はどれくらい減刑される?恐喝と恐喝未遂を例に「必ず半分」ではない仕組みを解説

刑事事件について調べていると、「未遂なら刑が軽くなる」「未遂罪は半分になる」といった説明を見かけることがあります。しかし、日本の刑法では、犯罪が未遂に終わったからといって、実際に言い渡される刑が自動的に半分になるわけではありません。

刑法43条は、犯罪の実行に着手したものの犯罪を遂げなかった場合について、刑を減軽することができると定めています。つまり通常の未遂では減軽は裁判所の裁量であり、「必ず減軽」ではありません。一方、自分の意思で犯罪を途中でやめた「中止未遂」では、減軽または免除が必要になります。

例えば恐喝罪は刑法249条で10年以下の拘禁刑とされ、同250条によって未遂も処罰されます。恐喝未遂だから一律に「恐喝既遂の半分の刑」と決まるのではなく、未遂に終わった経緯、行為の危険性、被害、前科、示談などさまざまな事情を踏まえて最終的な刑が決まります。

この記事では、未遂罪とは何か、「刑を減軽することができる」とはどういう意味なのか、恐喝罪と恐喝未遂罪ではどの程度違い得るのかを、現行刑法をもとに整理します。

そもそも未遂罪とは何か

刑法上の未遂とは、単に犯罪を考えたり準備したりしただけの状態とは異なります。刑法43条は、「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者」について未遂減免を定めています。

つまり、犯罪を実現するための行為を開始したものの、結果として犯罪が完成しなかった場合が基本的な未遂のイメージです。ただし、どの時点から「実行に着手した」と評価されるかは犯罪の種類や具体的事情によって異なります。

また、すべての犯罪について未遂が処罰されるわけではありません。刑法44条は、未遂を処罰する場合には各犯罪の条文で定めるとしています。そのため、それぞれの犯罪について「未遂罪を罰する」という規定があるか確認する必要があります。

[参照] e-Gov法令検索「刑法 第43条・第44条」

普通の未遂は「必ず減刑」ではない

刑法43条本文は、犯罪の実行に着手して遂げなかった者について、その刑を「減軽することができる」と規定しています。

法律用語として、この「できる」という部分が重要です。通常の未遂では、裁判所が未遂という事情を踏まえて法律上の減軽をすることができますが、必ず減軽しなければならないわけではありません。

例えば、結果こそ発生しなかったものの行為自体が非常に危険で、本人が最後まで犯罪を実現しようとしていたところ、偶然の事情で失敗したというケースもあります。そのような場合、単に「結果が出なかった」という一点だけで機械的に半分の刑にする制度にはなっていません。

「未遂なら半分」という説明はどこから来る?

「未遂は半分になる」と言われる理由は、刑法68条の法律上の減軽方法にあります。

同条では、有期拘禁刑を法律上減軽するときは、刑の長期と短期をそれぞれ2分の1減ずると定めています。そのため、裁判所が刑法43条による未遂減軽を実際に適用すれば、法律上選択できる刑の範囲が縮小します。

ただし、半分になるのは「実際に言い渡される刑期」ではなく、まず法律上の刑の範囲です。ここを混同すると、「既遂で懲役4年なら未遂は必ず2年」といった誤った理解になってしまいます。

[参照] e-Gov法令検索「刑法 第68条」

恐喝罪は10年以下の拘禁刑

刑法249条は、人を恐喝して財物を交付させた者について、10年以下の拘禁刑に処すると定めています。また、恐喝によって財産上の利益を得たり、第三者に利益を得させたりした場合も同様です。

ここでいう恐喝は、相手を畏怖させるような脅迫・暴行を用いて財物や財産上の利益を交付させる犯罪です。実際に財物などを交付させれば恐喝既遂が問題になります。

そして刑法250条は、詐欺・恐喝などが規定されている章について「この章の罪の未遂は、罰する」と定めています。したがって恐喝は、未遂に終わっても処罰対象になります。

[参照] e-Gov法令検索「刑法 第249条・第250条」

恐喝と恐喝未遂の違いを具体例で考える

例えば、相手を脅して10万円を要求し、相手が恐怖を感じて実際に10万円を渡した場合には、事情によって恐喝既遂が成立する可能性があります。

一方、同じような要求をしたものの、相手がお金を渡さず警察へ相談したため財物を取得できなかった場合には、実行着手などの要件を満たせば恐喝未遂が問題になります。

両者では「財物を取得した」という結果が発生したかどうかに違いがあります。しかし、恐喝未遂も犯罪として処罰されるため、「お金を取れなかったので無罪」ということにはなりません。

恐喝未遂の法定刑は単純に「5年以下」と決まっているわけではない

恐喝罪の法定刑は10年以下の拘禁刑です。そのため、「恐喝未遂なら半分の5年以下」と説明されることがありますが、正確には一段階説明が必要です。

恐喝未遂そのものについて刑法250条が「5年以下」と定めているわけではありません。まず恐喝罪と同じ刑罰規定が基礎になり、そのうえで刑法43条による未遂減軽を裁判所が行うかが問題になります。

通常の未遂について法律上の減軽が選択された場合、刑法68条に従い、有期拘禁刑の長期・短期が2分の1減じられます。恐喝罪の長期は10年なので、未遂減軽を適用した場合には長期は5年になります。

しかし、未遂減軽をすること自体が通常の未遂では任意です。そのため「恐喝未遂罪の法定刑は常に5年以下」と覚えるのは正確ではありません。

実際の判決が「既遂のちょうど半分」になるわけでもない

刑事裁判では、最終的な刑を決める際に犯罪の結果だけを見るわけではありません。

犯罪の計画性、脅迫の程度、要求した金額、被害者への影響、犯行回数、前科・前歴、犯行後の反省、被害弁償や示談の有無など、多数の事情が量刑に影響します。

そのため、仮に似た事件で恐喝既遂が拘禁刑3年になったとしても、「同じ事件の未遂版なら1年6か月になる」という計算はできません。別々の事件であれば、未遂事件のほうが重い刑になることさえ理論上あり得ます。

比較項目 恐喝既遂 恐喝未遂
財物・利益の取得 取得している 取得に至っていない
処罰 処罰される 刑法250条により処罰される
未遂減軽 なし 通常は裁判所が減軽できる
実刑が必ず半分になるか ならない

未遂にも「障害未遂」と「中止未遂」がある

未遂を理解する際には、犯罪が完成しなかった理由が重要です。

一般に、自分は犯罪を最後まで実現するつもりだったものの、相手が拒否した、第三者に阻止された、警察が来たなど外部的な事情によって犯罪が完成しなかったものは「障害未遂」と呼ばれます。

これに対し、犯罪を実行し始めた本人が、自分の意思によって途中でやめた場合には「中止未遂」が問題になります。

この違いは刑の扱いにも大きく影響します。

自分から犯罪をやめた中止未遂は扱いが大きく違う

刑法43条ただし書は、自己の意思によって犯罪を中止した場合について、「その刑を減軽し、又は免除する」と定めています。

通常の未遂では「減軽することができる」ので任意ですが、中止未遂については減軽または免除が必要になります。

例えば犯罪を実現できる状態だったにもかかわらず、自ら思い直して中止し、必要に応じて結果発生を防止したようなケースでは、中止未遂が成立する可能性があります。

ただし「警察が来たから諦めた」「相手がお金を持っていなかったからやめた」といった場合には、自発的な中止と評価されるとは限りません。中止未遂に当たるかどうかは具体的な事情によって判断されます。

中止未遂なら無罪になるという意味でもない

中止未遂については「刑を免除できる」という規定があるため、「途中でやめれば犯罪にならない」と誤解されることがあります。

しかし中止未遂でも、犯罪の実行に着手した以上、犯罪自体がなかったことになるわけではありません。刑法43条が定めているのは、成立した未遂罪について刑を減軽したり免除したりする制度です。

また、実行途中ですでに別の犯罪が成立している場合には、その犯罪について責任が残ることもあります。

未遂になった理由は量刑でも重要になる

同じ「恐喝未遂」という罪名でも、犯罪が失敗した経緯によって事件の評価はかなり違います。

例えば、相手から大金を取るため周到に計画し、強い脅迫を繰り返したものの警察に阻止されたケースと、比較的初期の段階で本人が反省して自発的に中止したケースでは、事情が大きく異なります。

前者は結果が偶然発生しなかっただけとも評価できるのに対し、後者は本人が犯罪結果を防いだこと自体が有利な事情になります。

したがって「既遂か未遂か」という二択だけでなく、なぜ未遂になったのかまで確認する必要があります。

被害金額がゼロでも被害がゼロとは限らない

恐喝未遂では金銭を取得できなかったため、財産的な被害額がゼロというケースがあります。しかし、それだけで被害そのものが存在しないとは限りません。

脅された被害者が強い恐怖を感じたり、生活に支障が出たりすることも考えられます。また、繰り返し脅迫していた場合には犯行態様自体が厳しく評価される可能性があります。

そのため「お金を取っていない=非常に軽い罪」という単純な判断もできません。

反対に未遂という結果が有利な事情になることもある

一方で、既遂の場合と比較すれば、財物を実際に取得していないことは量刑上考慮され得る重要な事情です。

被害者に財産的損失が発生していなかったり、犯行が早い段階で終了していたりすれば、既遂事件と比べて犯罪結果が小さいと評価される可能性があります。

このため実際の裁判では、未遂であることが法的な未遂減軽だけでなく、具体的な量刑判断の中でも意味を持つ場合があります。

示談や被害弁償などは未遂とは別の量刑事情

未遂減軽と、被害者との示談・被害弁償は別の問題です。

恐喝未遂でも被害者が恐怖を受けている以上、謝罪や示談が成立しているかは処分・量刑判断に影響する可能性があります。

反対に未遂であっても、反省がなく被害者への接触を繰り返すなどの事情があれば、不利に評価される可能性があります。

したがって「未遂だった」という一要素だけから、具体的な判決を予想することは困難です。

実刑・執行猶予の判断も「未遂だから」で自動的には決まらない

未遂事件であれば必ず執行猶予になる、というルールもありません。

実際に執行猶予を付けられるかは、最終的に言い渡される刑、前科など法律上の要件を満たすかに加え、事件の内容や本人の事情などを踏まえて判断されます。

恐喝未遂でも悪質性が高ければ実刑が選択される可能性がありますし、逆に既遂事件であっても具体的事情によって執行猶予が付くケースはあります。

罪名だけを見て「未遂=執行猶予、既遂=実刑」と分類することはできません。

2025年から「懲役」ではなく「拘禁刑」になった点にも注意

古い法律解説や過去の判決を検索すると、恐喝罪について「10年以下の懲役」と書かれていることがあります。

刑法改正により、2025年6月1日から従来の懲役と禁錮は「拘禁刑」に一本化されました。そのため現行刑法249条の表現は「10年以下の拘禁刑」です。

過去の事件や古い資料では「懲役」という用語が使われているため、検索すると両方の言葉が出てきますが、現在の制度を説明する場合には拘禁刑という表記になります。

恐喝と恐喝未遂を簡単に整理すると

ポイント 恐喝既遂 恐喝未遂
基本条文 刑法249条 249条・250条・43条
基本となる刑 10年以下の拘禁刑 恐喝罪の刑を基礎とする
通常の未遂減軽 対象外 裁判所が行うことができる
未遂減軽をした場合 刑法68条によって刑の範囲を減軽
自発的に中止した場合 減軽または免除
実際の刑 個別事情で決まる 個別事情で決まり、必ず既遂の半分ではない

この表から分かるように、「恐喝」と「恐喝未遂」の違いは単純な刑期の割り算ではありません。

まとめ|未遂は「必ず半分」ではなく、普通の未遂と中止未遂でも大きく違う

日本の刑法では、犯罪の実行に着手したものの犯罪を遂げなかった場合について、刑法43条が未遂の減免を定めています。

通常の未遂については「その刑を減軽することができる」と規定されているため、未遂になっただけで刑が自動的に半分になるわけではありません。裁判所が未遂減軽を適用するかを判断します。

「半分になる」という説明の根拠になっているのは刑法68条です。法律上、有期拘禁刑を減軽する場合には長期と短期をそれぞれ2分の1減じます。しかし、これは実際の判決を単純に2分の1にするという意味ではありません。

恐喝罪の場合、刑法249条の法定刑は10年以下の拘禁刑で、250条によって未遂も処罰されます。通常の恐喝未遂について未遂減軽が適用されれば、10年という長期は5年へ減じられますが、そもそも通常の未遂減軽は任意です。

さらに実際に何年の刑になるかは、要求した金額、脅迫の程度、計画性、犯罪がどこまで進んだか、なぜ未遂になったのか、前科、示談、反省などを総合して判断されます。そのため「恐喝既遂なら4年、未遂なら2年」のような固定的な計算方法はありません。

一方、自分の意思で犯罪を途中でやめた中止未遂については扱いが異なり、刑法43条ただし書によって刑を減軽または免除しなければなりません。外部の事情で失敗した通常の未遂より、本人が自発的に犯罪結果を防いだ場合を有利に扱う制度です。

したがって、未遂罪の刑を考えるときは、「既遂しなかった」という事実だけでなく、未遂を処罰する規定があるか、通常の未遂なのか中止未遂なのか、法律上の減軽が適用されるのか、具体的な量刑事情はどうかという順番で見ると理解しやすくなります。

[参照] e-Gov法令検索「刑法」

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