自転車で歩行者をひきかけたとき怒鳴るべき?歩行者の急な進路変更と自転車側の注意義務・安全な対処法

自転車で走行中、前を歩いていた人が突然進路を変え、危うく衝突しそうになることがあります。歩行者が後方を確認せず、自転車の進路へ急に入ってきたように見えれば、「ちゃんと後ろを見てほしい」と腹が立つのも無理のない反応です。

しかし、その場で相手を追いかけて怒鳴ったり、「ちゃんと見ろ」と強い口調で責めたりすることが、安全上もっとも良い対応とは限りません。相手が謝るとは限らず、口論や挑発、場合によっては暴力沙汰へ発展して、最初のヒヤリとした出来事以上のトラブルになる可能性があります。

また交通ルール上、自転車は道路交通法上の「軽車両」です。特に歩道を通行している場合は歩行者優先が原則で、歩行者の通行を妨げる場合には一時停止しなければなりません。歩道以外でも歩行者の側方を通過するときには、安全な間隔を確保するか徐行することが求められます。

この記事では、歩行者が突然曲がって自転車と接触しそうになったケースについて、歩行者と自転車のどちらが注意すべきなのか、怒鳴ることにメリットはあるのか、同じ場面を事故にしないためにはどう走ればよいのかを整理します。

まず確認したいのは「どこを自転車で走っていたか」

歩行者と自転車が接触しそうになった場合、評価を大きく左右するのが走行場所です。

例えば、自転車が歩道を走っていて、その前を歩行者が歩いていたケースなら、自転車側にはかなり慎重な運転が求められます。警察庁は自転車安全利用五則で「車道が原則、左側を通行」「歩道は例外、歩行者を優先」と案内しています。

普通自転車が歩道を通行できる場合でも、原則として車道寄りの部分を徐行し、歩行者の通行を妨げることになるときは一時停止する必要があります。

[参照] 警察庁「自転車は車のなかま~自転車はルールを守って安全運転~」

歩道では歩行者が突然進路を変える可能性まで考えて走る

歩道を歩いている人は、常に一直線に歩くわけではありません。店へ入るために急に左へ寄ったり、知人に気付いて方向を変えたり、障害物を避けたりすることがあります。

もちろん、自分のすぐ後ろに自転車がいることに気付いているなら、歩行者側も周囲を確認して進路変更したほうが安全です。しかし、歩道ではそもそも歩行者が自転車の存在を把握していない可能性も考えなければなりません。

そのため、自転車で歩行者のすぐ後ろを走り、歩行者が少し横へ動いただけで衝突する距離まで近づいている状態は危険です。歩行者が予想外の動きをしても停止できる速度と車間を確保しておく必要があります。

歩行者の横を追い抜くときにも安全な間隔が必要

歩道以外の道路でも、自転車が歩行者のすぐ横を高速で通過してよいわけではありません。

道路交通法では、車両が歩行者の側方を通過するとき、安全な間隔を保つか徐行しなければならない旨が定められています。自転車も軽車両として車両に含まれます。

例えば歩行者の50センチほど横を速度を落とさず追い抜こうとすれば、歩行者が少し進路を変えただけでも接触する可能性があります。十分な横幅を確保できない場所なら、無理に追い抜かず速度を落として待つほうが安全です。

[参照] e-Gov法令検索「道路交通法」

歩行者が後ろを確認しなかったことに問題はないのか

歩行者側も、自分の周囲をまったく確認しなくてよいわけではありません。特に自転車通行帯や車道へ突然飛び出したり、車両の直前へ進路変更したりすれば非常に危険です。

例えば歩道から車道へ突然踏み出した、明確な自転車通行部分を横切った、周囲の交通状況を無視して急に方向転換したという事情があれば、事故になった場合に歩行者側の行動も検討されます。

ただし、事故の責任を考えることと、事故を防ぐ運転は別です。「相手も確認すべきだった」という考えが正しかったとしても、実際に衝突すれば自転車側にも大きな負担が生じます。

自転車側から見ると「相手が気付いていない」こと自体が重要な情報

前方の歩行者が自転車の存在に気付いていないようなら、それは腹を立てる材料というより、運転上の重要な情報です。

自分の存在を認識していない人は、いつ左右へ動いてもおかしくありません。そのため速度を落とし、十分な距離を取る必要があります。

イヤホンをしている人、スマートフォンを見ている人、子ども、高齢者、複数人で会話している人などは特に予想外の動きをする可能性があります。「こちらに気付いているだろう」と期待しない走り方が安全です。

「ちゃんと見ろ」と怒鳴ることに大きなメリットはない

危険な目に遭うと、その直後はアドレナリンも出ているため、相手へ一言言いたくなることがあります。

しかし「ちゃんと見ろや」「危ないだろ」と怒鳴っても、相手が素直に謝罪するとは限りません。「歩道なのだから自転車が止まれ」「そっちこそ危ない」と反論されれば、その場で言い争いになります。

さらに相手の性格は分かりません。暴言を返される、追いかけられる、身体的な争いになるなど、交通上のヒヤリハットとは別の危険を増やしてしまうことがあります。

衝突を回避できたのであれば、怒鳴らずそのまま離れることは「言い返せなかった」のではなく、余計なトラブルを増やさなかった合理的な対応です。

注意を伝えたいなら怒鳴るより短く冷静に伝える

どうしても相手へ危険だったことを伝える必要がある場合でも、攻撃的な言葉を使う必要はありません。

例えば停止したうえで「すみません、急にこちらへ来られるとぶつかりそうになるので気を付けてください」と伝える程度なら、目的が「喧嘩」ではなく「注意喚起」であることが分かりやすくなります。

それに対して相手が反発したり怒鳴ったりするなら、それ以上議論を続ける必要はありません。「事故にならなかったので大丈夫です」と切り上げて離れるほうが安全です。

ベルを鳴らして歩行者をどかせばよいわけでもない

歩行者の後ろを自転車で走っていると、「自転車が来たことを知らせるためベルを鳴らせばよい」と考える人もいます。

しかし自転車のベルは、歩道上の歩行者を退かせる目的で自由に鳴らすためのものではありません。道路交通法上、警音器は指定された場所や危険を防止するためやむを得ない場合などに使用するものです。

歩行者が邪魔だからベルを連打して道を空けさせるのではなく、安全に抜けないなら減速・停止して待つのが基本です。

ただし、まさに歩行者が自転車の進路へ入り衝突しそうになった瞬間など、危険回避のため警告が必要な状況ではベルを使うことが考えられます。

歩行者の後ろでは「突然横へ1歩動く」を想定する

事故を防ぐうえで実践しやすい考え方があります。それは、前の歩行者がいつでも左右へ1歩動くものとして走ることです。

例えば歩行者の真後ろ1メートルを速度を出して走れば、突然左へ進路を変えられた際に避ける時間がほとんどありません。

反対に十分な車間を空け、速度を歩行者に近いところまで落としていれば、進路変更されてもブレーキで止まりやすくなります。

これは「歩行者が正しいから譲る」という話だけではありません。自分自身が加害者になるリスクを下げるための防御運転です。

狭い場所では追い抜かないのが最も簡単な対策

歩行者と自転車の接触事故が起きやすいのは、十分な横幅がない場所で無理に追い抜こうとしたときです。

前方の歩行者との間に十分な間隔を確保し、広い場所へ出るまで待てば、多くの危険を回避できます。

数十秒待つことになっても、接触事故を起こして警察対応、保険会社への連絡、治療費や損害賠償の問題を抱えることと比較すれば小さな負担です。

自転車と歩行者が接触すると「軽く当たっただけ」では済まないこともある

自転車は自動車より軽いとはいえ、速度が出ている状態で人へ衝突すれば大きなけがをさせることがあります。

特に高齢者が転倒すると、骨折や頭部外傷につながる可能性があります。自転車側が転倒して負傷することもあります。

そのため「歩行者が急に曲がったのだから相手が悪い」で終わらせず、そもそも接触しない余裕を作ることが大切です。

実際に接触した場合はそのまま立ち去らない

今回のように「ひきかけた」だけで接触がなければ、通常は事故としての対応は必要ありません。

しかし実際に自転車と歩行者が接触し、相手が転倒したり負傷したりした場合は、「大したことなさそうだから」とそのまま走り去ってはいけません。

まず停止して負傷の有無を確認し、けががある場合には救護し、必要に応じて119番や110番へ連絡します。相手がその場では「大丈夫」と話していても、後から症状が出る可能性があるため、事故になった場合には適切な対応を取ることが重要です。

相手と口論になりそうなら距離を取る

危険な出来事の後は、自転車側も歩行者側も興奮している可能性があります。

こちらが「危なかった」と伝えただけでも、相手から強い言葉を返される場合があります。その際に言い返し続ければ、どちらが交通上正しかったかとは無関係な喧嘩へ発展してしまいます。

接触事故が起きていないなら、相手が怒り始めた時点で距離を取るのが合理的です。接触事故が起きていて現場を離れられない場合には、口論を避け、必要なら警察を呼んで第三者を介して対応します。

ドライブレコーダー型カメラを利用する方法もある

自転車で通勤・通学する機会が多く、交通トラブルが心配なら、自転車向けドライブレコーダーやアクションカメラを使用する方法もあります。

事故になった場合、直前に歩行者が急に進路を変更したのか、自転車がどの程度の速度だったのかなどを確認する資料になる場合があります。

ただしカメラがあるから強気に走ってよいわけではありません。映像は責任追及のためというより、安全運転をしたうえで万一の事故状況を記録する手段として考えるのが適切です。

歩道と車道では自転車側の立場が大きく違う

状況 安全上の考え方
歩道を自転車で走行 歩行者優先。徐行し、妨げる場合は一時停止
歩行者を後ろから追い抜く 十分な側方間隔を確保。狭ければ待つ
歩行者が突然横へ動く 起こり得る動きとして速度・車間に余裕を持つ
衝突しそうになった まずブレーキ・回避を優先
危険を伝える 怒鳴るより冷静かつ短く伝える
相手が反発する 接触がなければ口論せず離れる
実際に接触・負傷 停止して救護・必要な通報を行う

「どちらが悪いか」より事故を回避できたことのほうが重要

交通上のヒヤリハットが起きると、「相手が悪かったのではないか」と考え続けてしまうことがあります。

もちろん歩行者も周囲を確認し、急な進路変更を避けることが安全につながります。しかし事故が起こらなかったケースでは、相手へ勝ち負けを認めさせることに大きな意味はありません。

むしろ「次に同じ状況になったら、もう少し距離を空けよう」「追い抜く前に速度を落とそう」と自分側で変更できる部分を見つけるほうが、今後の事故防止には役立ちます。

怒りが収まらないときは「事故にならなかった利益」を考える

危険な目に遭った直後は、「相手は何も気付かず歩いているのに、こちらだけ嫌な思いをした」と感じることがあります。

しかし結果として衝突せず、けが人も出ず、警察や保険会社との対応もなく、その場を離れられたのであれば、それはかなり大きな利益です。

相手を呼び止めて怒鳴れば、一瞬は気が晴れるかもしれませんが、その代わりに口論という新しい問題が発生する可能性があります。何も起こらず終わった場面を、わざわざ別のトラブルへ変えないことも安全管理の一部です。

まとめ|歩行者の急な進路変更には腹が立っても、怒鳴るより事故を防げる距離を取るほうが得策

前を歩いている人が後方確認をせず突然左へ進路を変え、自転車で衝突しそうになれば、「ちゃんと周囲を確認してほしい」と感じるのは自然です。歩行者側も交通状況に注意することは大切です。

ただし、自転車側も「相手がこちらに気付いている」という前提で走らないことが重要です。歩行者は店へ入る、障害物を避ける、知人に気付くなどの理由で突然左右へ動くことがあります。

特に歩道を自転車で通行していたのであれば、道路交通法上も歩行者優先です。警察庁は、普通自転車が歩道を通行できる場合でも徐行し、歩行者の通行を妨げる場合には一時停止するよう案内しています。

危うく接触したものの事故にならなかった場合、相手へ「ちゃんと見ろ」と怒鳴らず、そのまま離れた対応は決して間違いではありません。怒鳴ったところで相手が反省する保証はなく、反論されれば口論になり、交通事故とは別のトラブルへ発展する可能性があります。

危険だったことを伝えたい場合でも、「急にこちらへ来られるとぶつかりそうになるので気を付けてください」と冷静に一言伝える程度で十分です。相手が反発するようなら、それ以上やり合わず離れるのが安全です。

そして次回同じ場面に遭遇したときは、歩行者が突然左右へ一歩動いても停止できるだけの車間と速度を確保します。十分な横幅がなければ追い越さず待つことも有効です。

交通では、相手の行動を完全にコントロールすることはできません。だからこそ「歩行者ならこちらを確認するはず」と期待するより、確認しない人、急に曲がる人、こちらに気付いていない人がいる前提で運転することが、自分を事故の加害者にも被害者にもしないための現実的な方法です。

[参照] 警察庁「自転車は車のなかま~自転車はルールを守って安全運転~」

[参照] 警察庁 自転車ポータルサイト「自転車の交通ルール」

[参照] e-Gov法令検索「道路交通法」

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