追突事故でむち打ちなどの症状が残り、医師から症状固定と診断された場合、次に気になるのが後遺障害等級の認定です。特に「通院期間が5ヶ月だった」「実通院日数が24回しかない」といったケースでは、通院期間や回数だけで認定の可否が決まるのか不安になることがあります。
結論からいうと、後遺障害認定は通院5ヶ月・24回という数字だけで一律に決まるものではありません。事故と残存症状との因果関係、症状の内容や一貫性、医学的な所見、治療経過などを含めて判断されます。ただし、通院期間や通院状況が審査上まったく無関係という意味でもありません。
この記事では、追突事故で症状固定となった場合を中心に、後遺障害認定の基本、通院期間・通院回数の考え方、むち打ちで問題になりやすいポイント、申請前に確認したい資料について整理します。
そもそも「症状固定」と「後遺障害認定」は別のもの
症状固定とは、一般的に、症状が安定して医学上一般に認められた治療を続けても、それ以上の治療効果が期待できなくなった状態をいいます。症状固定の時期については医師が医学的に判断します。
一方、症状固定になったからといって、自動的に自賠責保険の後遺障害等級が認定されるわけではありません。国土交通省は、後遺障害について、事故による傷害が治ったときに身体に残された精神的・肉体的な毀損状態であり、傷害との相当因果関係が認められ、その存在が医学的に認められるものなどと説明しています。[参照]
つまり、「まだ痛い」という事実と「自賠責上の後遺障害に該当する」という判断は同じではない点が重要です。症状固定は後遺障害申請を検討する一つの区切りであり、その後に別途、等級認定の審査があります。
通院5ヶ月・24回だけで「認定されない」とは決められない
交通事故の後遺障害について、「6ヶ月以上通院していなければ絶対に認定されない」「週○回以上の通院が必要」といった情報を目にすることがあります。しかし、少なくとも公的な後遺障害の定義は、単純に通院月数や通院回数だけを認定条件としているものではありません。
したがって、通院5ヶ月・実通院24回という情報だけを見て、認定される・されないと断定することは適切ではありません。事故の規模、負傷内容、症状の推移、検査結果、診断内容などによって事情が異なるためです。
たとえば同じ24回の通院でも、事故直後から一貫して首の痛みやしびれを訴え、医師の診察や必要な検査を受けながら治療していたケースと、長期間まったく受診せず症状固定直前に通院が増えたケースとでは、医学的な経過の見え方が異なります。
むち打ちで後遺障害認定を考えるときのポイント
追突事故では、頚椎捻挫、外傷性頚部症候群など、いわゆる「むち打ち」と呼ばれる症状が問題になることがあります。痛み、首の動かしにくさ、腕や手のしびれなどが症状固定後にも残る場合があります。
こうしたケースで大切なのは、単に通院回数を数えることではなく、事故から症状固定までの経過を医学的な資料によって説明できるかという視点です。事故直後の診断、症状の部位、症状が継続しているか、途中で大きな変化や不自然な中断がないか、画像検査や神経学的検査などの所見があるかといった事情が関係します。
後遺障害は、事故による傷害との相当因果関係があり、その存在が医学的に認められることなどが必要とされています。[参照] そのため、通院回数だけを増やせば認定されるという性質のものではありません。
後遺障害診断書の内容も重要になる
症状固定後に後遺障害等級の申請を行う場合、重要な資料の一つとなるのが後遺障害診断書です。現在残っている症状や検査所見などについて、主治医に医学的な内容を記載してもらいます。
ここで注意したいのは、医師が後遺障害診断書を作成したからといって、等級が保証されるわけではないことです。医師は患者の症状を診断しますが、自賠責における後遺障害等級の認定は別の手続きとして行われます。
そのため申請前には、事故直後から症状固定までの診断書、診療報酬明細書、画像資料など、審査に用いられる資料を整理しておくことが大切です。特に症状について医師に十分伝えていなかった場合、診療記録上の症状と本人が申請時に訴える症状との間に差が生じる可能性があります。
通院回数より「なぜ24回だったのか」も考える
実通院日数が少なめに見える場合には、その理由もケースによって異なります。仕事の都合で頻繁に通えなかった人もいれば、医師から一定間隔での受診を指示されていた人、自宅での経過観察をしていた人などもいるでしょう。
一方で、自己判断で長期間通院を中断していた場合などは、症状が継続していたことを資料上どのように確認できるかが問題になる可能性があります。事故後の症状と症状固定時の症状とのつながりを確認するうえで、治療経過は重要な情報になるためです。
したがって、「24回だから少なすぎる」「○回以上なら大丈夫」という考え方ではなく、その24回を含めた治療経過全体を見ることが重要です。
症状固定後は治療費の扱いにも注意
症状固定には損害賠償上も重要な意味があります。国土交通省によると、症状固定後の治療費については、自賠責保険の傷害による損害としては原則として認定されません。[参照]
一方、後遺障害として認定された場合には、その障害の程度に応じて逸失利益や慰謝料等が後遺障害による損害として扱われます。自賠責保険では、介護を要する後遺障害を除く後遺障害について第1級から第14級まで区分されています。[参照]
また、自賠責保険の後遺障害に関する被害者請求は、原則として症状固定日の翌日から3年以内が請求期限とされています。[参照] 時間が経過している場合は、期限についても早めに確認したほうがよいでしょう。
申請前に確認しておきたいこと
後遺障害申請を検討している場合は、まず現在残っている症状について主治医と確認することが基本です。特に、症状固定後も首の痛みやしびれなどが残っているのであれば、その症状が診療記録や後遺障害診断書に適切に反映されているか確認することが大切です。
事故状況や治療内容によって判断が大きく変わる場合には、交通事故案件を扱う弁護士などへ資料を見せたうえで相談する方法もあります。自動車保険に弁護士費用特約が付いている場合には、利用条件について保険会社へ確認してみるとよいでしょう。
なお、後遺障害の認定結果は個別事情によって異なるため、通院期間や回数だけを根拠に認定結果を保証する情報には注意が必要です。
まとめ:通院5ヶ月・24回という数字だけでは後遺障害認定の可否は決まらない
追突事故で5ヶ月間通院し、実通院日数が24回だったとしても、その数字だけで後遺障害認定が不可能になるとはいえません。一方で、通院期間や治療経過は、事故後の症状の継続性などを確認するうえで関係する情報となります。
後遺障害認定では、事故と症状との因果関係、症状の一貫性・継続性、医学的所見、治療経過、症状固定時に残った障害などを総合的に確認することが重要です。
症状固定の診断をすでに受けている場合には、通院回数だけを見て申請を諦めるのではなく、後遺障害診断書やこれまでの医療記録などを確認したうえで、個別の事情に応じて後遺障害申請を検討するとよいでしょう。