X(旧Twitter)などのSNSでは、個人のイラストレーターが有償でイラスト制作を受け付けることが一般的になっています。依頼内容も、SNSアイコン、オリジナルキャラクター、いわゆるコテキャ(固定キャラクター)、イメージキャラクターなどさまざまです。
そこで気になるのが、個人同士がお金を払ってオリジナルキャラクターのイラストを依頼することに法律上の問題はないのかという点です。結論からいえば、第三者の著作物を無断利用するなどの問題がなく、依頼者と制作者の合意のもとでオリジナル作品を制作してもらうこと自体は、通常の有償制作として行うことができます。ただし、著作権の帰属や完成作品の利用範囲など、事前に確認しておきたい重要なポイントがあります。
オリジナルキャラクターの有償イラスト依頼そのものは問題ない
イラストレーターに報酬を支払い、指定したオリジナルキャラクターやイメージキャラクターを描いてもらうこと自体が法律で禁止されているわけではありません。文化庁も著作権契約書作成支援システムにおいて、イラストの作成を依頼する場合を想定した契約書式を公開しています。
文化庁の同システムでは、イラスト制作について、原則として作成者が創作したオリジナル作品を前提とし、第三者の著作権などが関係する場合には権利処理が必要になるという考え方が示されています。[参照]
例えば、自分で設定を考えたオリジナルキャラクターについて「海辺を歩いている場面を描いてほしい」「カフェで飲み物を飲んでいるイラストにしてほしい」と依頼し、イラストレーターが独自に描き起こすようなケースです。既存の漫画・アニメ・ゲームなど第三者のキャラクターを使用しないのであれば、少なくとも既存作品の二次創作とは問題を分けて考えることができます。
既存キャラクターの二次創作とは何が違うのか
法律上特に注意が必要になるのは、漫画、アニメ、ゲームなどの既存作品に登場するキャラクターや既存イラストの表現を利用するケースです。著作物を第三者が利用する場合、著作権法上の例外に該当しない限り、原則として権利者から許諾を得る必要があります。文化庁の分野横断権利情報検索システムでも、この基本的な考え方が説明されています。[参照]
一方、完全なオリジナルキャラクターであれば、既存作品のキャラクターをそのまま描く場合とは事情が異なります。ただし「オリジナル」と呼んでいても、特定作品のキャラクターデザインをほぼそのまま流用している場合などは別です。名称ではなく、実際にどのような表現を利用しているかが重要になります。
例えば「黒髪で青い服を着た高校生」という抽象的な設定だけで直ちに特定作品の著作権侵害になるわけではありませんが、特定キャラクターの特徴的な衣装、造形、装飾などを詳細に再現すれば、第三者の権利が問題になる可能性があります。
依頼者がキャラクターを考えても完成イラストの著作権を取得するとは限らない
有償依頼で特に誤解されやすいのが、「お金を払ったから完成イラストの著作権も自分のものになる」わけではないという点です。著作権は原則として作品を創作した著作者に発生します。
文化庁のクリエイター向け資料でも、特別な合意がない限り著作権はクリエイター側に発生し、著作権を譲渡しない場合には利用を許諾する範囲を明確にしておくことが重要だと説明されています。[参照]
例えば、依頼者が「赤髪で猫耳があり、黒いパーカーを着たキャラクター」という設定を伝え、イラストレーターが構図、表情、ポーズ、線、色彩などを創作して完成させた場合、完成した具体的なイラストについては制作者側に著作権が発生する可能性があります。そのため、依頼料を支払ったことだけを理由として、自由な転載、グッズ販売、改変などがすべて認められるとは限りません。
有償依頼では「何に使えるか」を事前に確認する
個人間のイラスト依頼では、著作権そのものを譲渡してもらわなくても、必要な範囲について利用許諾を受ける方法があります。文化庁も、既存イラストなどについて利用許諾を行うための契約書作成支援を提供しています。[参照]
依頼前には、少なくとも「SNSアイコンとして利用可能か」「Xなどへ投稿可能か」「トリミングや文字入れが可能か」「商用利用できるか」「グッズ化できるか」「制作者のクレジット表記が必要か」といった点を確認しておくとトラブルを防ぎやすくなります。
例えば個人鑑賞目的で3,000円のイラストを依頼した後、その作品をアクリルキーホルダーにして販売する場合を考えてみましょう。制作者が許可したのが個人利用だけなら、販売まで当然に許可されたことにはなりません。商用利用を考えている場合には、依頼する時点で用途を伝えることが重要です。
DMのやり取りでも契約になることがある
個人間の依頼では正式な契約書を作らず、XのDMなどで「この内容を5,000円でお願いします」「分かりました」と合意して制作が始まるケースも多くあります。契約は必ずしも紙の契約書がなければ成立しないものではありません。
文化庁のクリエイター向け解説でも、契約は合意や約束であり、口頭やメールでのやり取りでも契約になり得ることが説明されています。一方で、後から「言った・言わない」という問題になる可能性があるため、内容を記録として残すことが重要です。[参照]
そのため、依頼時にはDMなどに「依頼内容」「料金」「納期」「修正回数」「支払方法」「個人利用・商用利用の範囲」「SNSへの掲載可否」「著作権の扱い」などを残しておくと安心です。依頼受付ページやプロフィールに利用規約が掲載されている場合は、それも保存しておくとよいでしょう。
著作権譲渡と利用許諾は別物
完成したイラストを利用する方法として重要なのが、著作権の譲渡と利用許諾の違いです。利用許諾では著作権を制作者に残したまま、依頼者に一定の使い方を認めることができます。一方、著作権そのものを譲り受ける契約を結ぶことも可能です。
文化庁は、著作権という財産権について契約によって譲渡することが可能だと説明しています。ただし、翻案などに関する著作権法27条・28条の権利については、譲渡契約で明確に扱う必要がある点などにも注意が必要です。[参照]
また、著作者人格権は著作権とは性質が異なります。例えば完成作品を大幅に改変する場合などには問題になることがあるため、「著作権を買ったのだから何をしても自由」と単純に考えないことが大切です。
依頼する前に確認しておきたいチェックポイント
個人のイラストレーターへ有償依頼するときは、次の事項を確認しておくとトラブル防止につながります。
- 依頼するキャラクターが第三者の著作権を侵害していないか
- イラストレーターが有償依頼を受け付けているか
- 料金と支払時期
- 納期と修正可能回数
- SNSへの掲載が許可されているか
- アイコンやヘッダーとして使用できるか
- 加工・トリミングが許可されているか
- 商用利用が可能か
- グッズ化が可能か
- 著作権を制作者に残すのか、譲渡するのか
- クレジット表記が必要か
特に「個人利用のみ」「商用利用は追加料金」「転載は禁止転載」「加工禁止」といった条件はクリエイターによって異なります。依頼者側の思い込みで判断せず、相手の利用規約を確認し、不明点は制作開始前に質問するのが安全です。
また、オリジナルキャラクターを依頼する場合には、そのキャラクター自体の設定やデザインについて誰がどの部分を創作したのかも整理しておくと、将来的に別のイラストレーターへ依頼したり、グッズ展開したりするときのトラブルを減らせます。
まとめ:オリジナルキャラの有償依頼では著作権と利用範囲を確認しよう
X(Twitter)などで個人イラストレーターへオリジナルキャラクターの制作を有償依頼すること自体は、一般的な制作契約として行うことができます。既存のアニメ・漫画・ゲーム等のキャラクターを使用しない完全なオリジナル作品であれば、既存作品の二次創作とは分けて考えることができます。
ただし、有償で描いてもらったからといって、完成したイラストの著作権やあらゆる利用権限が自動的に依頼者へ移るわけではありません。依頼時には、SNS掲載、加工、商用利用、グッズ化、著作権の帰属などについて確認しておくことが重要です。
また、「オリジナルキャラクター」として依頼する場合でも、第三者の作品に酷似するデザインなどが含まれていれば別の権利問題が生じる可能性があります。個別の案件で著作権侵害に当たるか判断が難しい場合や、大規模な商用展開を予定している場合には、著作権に詳しい弁護士などの専門家へ確認するとより安全です。