警察に被害届を出したいのに「まず証拠を見せて」と言われたら?受理されないのか・相談から事情聴取までの流れを解説

犯罪被害について警察へ電話相談したところ、「担当部署から折り返す」「警察署に来てもらい、被害届や供述調書を作ることになる」と説明されたのに、その後連絡がなく、改めて問い合わせると「まず署で証拠を確認したい」と言われることがあります。

このような対応を受けると、「被害届を受理する気がないのでは」と不安になりますが、証拠を持って警察署へ来るよう求められたことだけで、被害届が受理されない可能性が高いとは判断できません。電話相談と警察署での正式な届出・事情聴取は別の段階であり、来署後に詳しい事実関係や資料を確認することは十分考えられます。

警察庁は、犯罪被害者等からの被害の届出について、その内容が明白な虚偽または著しく合理性を欠く場合を除き、迅速・確実な受理に努める方針を示しています。[参照:警察庁・犯罪被害者白書]

「証拠を見せてほしい」は被害届を断るという意味とは限らない

警察へ最初に電話した段階では、担当者は被害者本人の説明を中心に状況を把握しています。被害の種類によっては、実際のメッセージ、振込履歴、契約書、写真、録音、診断書などを確認しなければ、犯罪としてどのような事実が問題になっているのか判断しにくいことがあります。

そのため、「一度署に来て証拠を見せてください」という案内は、それ自体として不自然なものではありません。電話では分からなかった日時、場所、相手との関係、具体的な被害内容などを対面で整理することもあります。

また、最初に電話対応した警察官と実際に事件を担当する部署・警察官が異なることもあります。最初の担当者が「被害届や供述調書を書くと思う」と説明していても、それは今後想定される手続を案内したもので、来署した瞬間に必ず両方を作成するという確約とは限りません。

折り返しを忘れられたことと被害届の受理判断は分けて考える

「担当部署から折り返す」と言われたにもかかわらず1週間連絡がなく、問い合わせた結果「電話するのを忘れていた」と説明されたのであれば、連絡対応として不安や不信感を抱くのは自然でしょう。

ただし、その連絡漏れから「警察が事件として扱う気がない」「被害届を受理しないつもりだ」とまでは判断できません。事務的な連絡漏れと、被害申告を受理するかどうかの判断は別問題だからです。

むしろ再度連絡した結果、具体的に来署して証拠を確認したいと言われているのであれば、まず指定された日時に資料を持参し、担当者へ被害内容を説明することが重要です。

警察庁は被害の届出を迅速・確実に受理する方針を示している

警察庁の「迅速・確実な被害の届出の受理等について」という通達では、被害者から届出意思が示された場合の対応について具体的な方針が示されています。被害の届出は迅速・確実に受理できる警察官が対応し、直ちに対応できない事情がある場合には、他の警察官を受理に当たらせるなど適切な措置を講じることとされています。[参照:警察庁]

さらに、事件が相談先警察署の管轄外であっても、被害の届出は即時受理するという取扱いも示されています。必要に応じて、その後に犯罪地を管轄する警察署などへ事件が引き継がれる仕組みです。

したがって、単に「証拠が十分そろっていない」「担当部署が別だった」というだけで、被害者自身が最初から届出を諦める必要はありません。ただし、申告内容から犯罪に当たる事実が認められるかどうかは個別事情によるため、具体的な内容を警察へ正確に説明する必要があります。

来署するときは証拠と時系列表を準備すると説明しやすい

警察から「実際の被害の証拠を見せてほしい」と言われた場合は、手元にある資料をできるだけ原形のまま持参しましょう。どの資料が必要か分からなければ、事前に担当部署へ確認する方法もあります。

事件の種類によって異なりますが、一般的には次のような資料が手掛かりになります。

  • 相手とのLINE・メール・SMSなどのやり取り
  • 振込・送金・決済などの履歴
  • 契約書、領収書、請求書など
  • 写真・動画・録音データ
  • 相手の氏名・アカウント・電話番号など分かっている情報
  • 被害が発生した日時・場所・金額などを整理したメモ

特に役立つのが時系列表です。「○月○日○時頃に何があった→その後相手からこの連絡が来た→○日にこの被害が発生した」のように並べ、対応する証拠があれば番号を付けます。記憶が曖昧な部分は推測せず、「時刻不明」「おおむね○月頃」などと記載するほうが適切です。

被害届と供述調書は同じものではない

被害届は、犯罪による被害を警察へ届け出るものです。一方、供述調書は、捜査の過程で被害者などから詳しく事情を聴き、その供述内容を警察官などが書面化したものです。

そのため、「被害届を提出する=必ずその場で供述調書も完成する」という単純な関係ではありません。事件の内容によっては長時間の事情聴取が必要になったり、後日改めて詳しい供述調書を作成したりすることも考えられます。

また、被害届と告訴も別の手続です。告訴には犯罪事実の特定など別の論点があり、警察庁も警察本部・警察署に告訴・告発への対応体制を整備しています。被害届を出したい場合は、まず「被害の届出をしたい」という意思を明確に伝えることが大切です。

来署したら「被害届を提出したい」と明確に伝える

相談だけで終わることを避けたい場合には、来署した際に「今日は相談だけではなく、この被害について被害届を提出したいです」と明確に意思表示するとよいでしょう。そのうえで、警察官から質問された事項に事実ベースで回答します。

その場で被害届の作成に進まない場合は、「追加で必要な資料は何ですか」「次にいつ来ればよいですか」「被害届について今後どのような手続になりますか」と具体的に確認しておくと、次の行動が明確になります。

担当者名、部署、相談した日時などもメモしておくと、その後問い合わせる際に便利です。警察庁の通達では、一定の被害届について届出人が希望する場合に、届出日時や連絡先などを記載した書面を交付する試行的な取組も示されています。

もし被害届について対応してもらえない場合は理由を確認する

実際に警察署へ行っても被害届の作成・受理に進まない場合は、感情的に対立するより、「被害届を提出したい意思がありますが、現時点で受理されない理由は何でしょうか」と確認することが重要です。

例えば追加資料が必要なのか、被害事実をさらに特定する必要があるのか、そもそも申告内容について犯罪に該当する事実が確認できないと判断されているのかによって、次に取るべき対応が変わります。

警察の対応そのものについて問題があると考える場合には、都道府県警察の相談窓口などへ相談する方法があります。また、警察法に基づき都道府県公安委員会へ警察職員の職務執行について文書で苦情を申し出る制度もあります。ただし、まずは担当部署で被害申告の内容と届出意思を明確に伝え、対応理由を確認するのが現実的です。

まとめ:証拠確認を求められただけで「被害届を受理されない」と考える必要はない

警察から最初に「被害届や供述調書を作ると思う」と言われ、その後「まず署に来て証拠を見せてほしい」と説明が変わったように感じても、それだけを理由に被害届が受理されない可能性が高いと判断する必要はありません。電話相談の段階では詳細な資料を確認できないため、来署後に証拠や具体的な経緯を確認することはあり得ます。

折り返し連絡を忘れられたことは対応上の問題として気になりますが、それと被害届の受理判断は分けて考えましょう。警察庁も、明白な虚偽または著しく合理性を欠く場合を除き、犯罪被害の届出を迅速・確実に受理する方針を示しています。

来署時には証拠を原形のまま準備し、出来事を時系列に整理したうえで、「相談だけではなく被害届を提出したい」と明確に伝えることがポイントです。その場で受理に進まない場合には、追加で必要な資料、担当部署、今後の手続、受理に至らない理由を具体的に確認しておくと、次の対応につなげやすくなります。

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