漫画・アニメ・ゲームなどの著作権について、「他人の作品を勝手に金儲けに使ってはいけない権利」と理解されることがあります。方向性として分かりやすい説明ではありますが、法律上の著作権はそれよりかなり広い権利です。
著作権は単に「商売を禁止する権利」ではありません。作品をコピーする、インターネットで配信する、翻案する、公衆へ譲渡するといった利用方法ごとに権利が定められています。したがって、無料なら何をしてもよく、有料なら著作権侵害になる、という仕組みではありません。
一方、「出版社などの権利者側が公式マーケットを作り、二次創作グッズなどの売買を許可して手数料やライセンス料を受け取ればよい」という発想自体は、ライセンスビジネスの考え方として十分成立し得ます。ただし、実際に運営するには「誰が何の権利を持っているのか」「何を販売可能にするのか」など、いくつもの問題を解決する必要があります。
著作権は「勝手に金にするな」という権利だけではない
文化庁は、著作者の権利について、他人が著作物を無断で一定の方法により利用することを止められる権利として説明しています。著作権には複製権、公衆送信権、譲渡権、貸与権、翻訳・翻案権など、利用形態ごとの権利があります。[参照:文化庁 著作権テキスト]
例えば、他人が描いた漫画の1ページを許可なくコピーしてネットへ公開する行為は、「その人が1円も稼いでいないから著作権上問題ない」とは限りません。営利目的の有無とは別に、複製や公衆送信という行為が著作権の対象になるためです。
反対に、お金が動けば必ず著作権侵害になるわけでもありません。権利者から許諾を受けて商品を製造・販売するライセンスビジネスは当然可能ですし、法律上の例外として許諾なしで利用できる場合もあります。
買った漫画を中古で売ることと、キャラクターグッズを自作して売ることは違う
ここで非常に重要なのが、正規品の中古販売と、作品を利用して新しい商品を作る行為の違いです。例えば正規に購入した漫画単行本を読み終わり、その現物をフリマサービスで中古販売する行為と、漫画のキャラクターを印刷したステッカーを自分で100枚作って販売する行為は、著作権上まったく同じ問題ではありません。
文化庁の解説では、映画以外の著作物について譲渡権が説明される一方、一度適法に譲渡されたものについては、その後の譲渡に権利が及ばない仕組みが示されています。これが、正規に流通した本などの中古品を再販売できる重要な理由の一つです。[参照:文化庁 著作権制度解説資料]
例えば正規に購入した漫画本を1冊そのまま中古販売することと、その漫画をコピーしてもう1冊作り販売することは違います。後者では新たな複製が行われているため、複製権などの問題が生じます。
出版社が「公式フリマ」を作るアイデア自体は可能
出版社や権利者が公式マーケットを作り、「この範囲ならファンが作品を使った商品を販売してよい」と利用条件を設定する仕組みは理論上考えられます。販売額の一定割合を利用料として受け取る、商品ごとにライセンス料を設定する、販売数量を制限するといった制度設計も考えられます。
例えば仮に、ある作品について権利処理を行った公式サービスが「登録クリエイターは指定されたキャラクターを利用したアクリルグッズを年間100個まで販売可能。売上の一定割合をライセンス料として支払う」という契約を用意したとします。その範囲について必要な権利者から適切な許諾を得られる仕組みなら、無許諾販売とは大きく事情が変わります。
つまり「権利者側が場所を用意して、許可した範囲で二次利用を認め、対価を受け取る」という発想そのものがおかしいわけではありません。むしろ著作権のライセンスは、コンテンツビジネスで広く使われている考え方です。
ただし「出版社に手数料を払えば全部解決」とは限らない
難しいのは、出版社が必ず作品に関するすべての著作権を単独で持っているとは限らない点です。文化庁の資料でも、著作権は財産権として譲渡でき、法人が権利者となることもありますが、作品や契約によって実際の権利関係は異なります。
漫画であれば漫画家、出版社、原作者などが関係する場合があります。アニメ化されれば、さらにアニメーション制作や製作委員会など別の権利関係が加わることがあります。文化庁のメディア芸術関連資料でも、権利処理の相手は分野によって異なり、漫画では漫画家やプロダクション、アニメでは製作委員会など、複数の形があることが説明されています。[参照:文化庁 MACC 利活用に向けた権利処理]
そのため、特定の出版社が公式サービスを作ったとしても、「そこで手数料を払えば、その出版社に関係するあらゆる漫画・アニメ・キャラクターを自由に商品化できる」とは限りません。作品単位、利用方法単位で権利関係を整理する必要があります。
公式マーケットを作るなら審査やルールも必要になる
仮に二次創作商品の公式マーケットを運営する場合、単に売上から手数料を徴収するだけではなく、販売できる商品の範囲を決める必要があります。
例えば、作品のイメージを大きく損なう商品、公式商品と誤認されるデザイン、第三者の著作物まで含んでいる商品などをどう扱うかという問題があります。また、著作権とは別の権利や契約上の問題が関係する場合もあります。
さらに著作権には財産的な権利だけでなく、著作者の精神的利益を守る著作者人格権もあります。文化庁は、公表権、氏名表示権、同一性保持権を著作者人格権として説明しています。[参照:文化庁 著作権テキスト]
つまり「売上の10%を払えば作品をどう加工してもよい」というほど単純には設計できません。何を作ってよいか、どこまで改変できるか、公式商品との区別をどうするかなどを利用規約や契約で整理する必要があります。
中古品販売と二次創作マーケットは分けて考える必要がある
「作品専門のメルカリのようなサービス」を考える場合、何を売るサービスなのかによって著作権との関係が大きく変わります。
| 販売するもの | 著作権上の主な考え方 |
|---|---|
| 購入済みの正規漫画本を中古販売 | 適法に流通した現物の再販売という問題 |
| 購入済みの正規グッズを中古販売 | 現物の再販売として考える |
| 漫画をコピーして販売 | 複製権などの問題が生じる |
| キャラクターを使った自作グッズを販売 | 複製・翻案など利用態様に応じた権利処理を検討 |
| 権利者が許諾した二次創作商品 | 許諾された条件・範囲に従って利用 |
特に正規品の中古売買については、「売れるたびに著作権料を払わなければならない」という一般的な仕組みにはなっていません。そのため、既存のフリマサービスで正規の中古漫画を販売する問題と、キャラクターを使って新しい商品を作る問題を一緒にしないことが重要です。
著作権は創作者に利用方法を決める権利を与える仕組み
著作権を理解するときは「勝手に金にするな」という禁止ルールとしてだけ捉えるより、「作品を一定の方法で利用することについて、権利者側が許可するかどうかや条件を決められる仕組み」と考えると分かりやすくなります。
権利者は利用を全面的に拒否することもできますし、「この条件なら利用してよい」と許諾することもできます。無料で利用を認めることも、ライセンス料を設定することも可能です。
文化庁も著作権について、複製・上演・演奏・上映・公衆送信など、著作物の利用形態ごとに権利が定められていると説明しています。[参照:文化庁 著作者の権利とは]
まとめ:公式マーケット構想は可能だが「手数料を払えば著作権問題が全部解決」ではない
著作権は単純な「他人の作品を勝手に金儲けに使うな」という制度ではありません。営利・非営利だけで決まるものではなく、コピー、公衆送信、譲渡、翻案など、著作物をどのように利用するのかによって権利が関係します。
一方で、権利者側が公式マーケットを用意し、許諾された範囲でファンによる商品販売などを認め、その対価としてライセンス料や手数料を受け取るというアイデア自体は十分考えられます。著作権は利用を全面禁止するだけの制度ではなく、許諾によって作品を利用してもらうこともできるからです。
ただし実現するには、作品ごとの権利者を確認し、複製・翻案など必要な権利を処理し、販売可能な商品や表現の範囲、公式商品との区別などをルール化する必要があります。また、正規品の中古売買は二次創作商品の販売とは別の問題です。したがって「出版社へ一定の手数料を払えば何でも販売できる」という単純な制度にはできませんが、権利者とファンを公式ライセンスでつなぐ仕組みという発想には、著作権制度上も十分な意味があります。