近所で消防車のサイレンが聞こえたり、道路で大きな交通事故が起きたりすると、「何があったのだろう」と気になってしまう人は珍しくありません。実際に現場まで見に行く人もいれば、気にはなっても近づかない人もおり、反応には個人差があります。
こうした行動は一般に「野次馬」と呼ばれることがありますが、災害や事故など普段とは違う出来事へ注意が向くこと自体は不自然ではありません。ただし、興味本位で現場へ近づくことと、事故を偶然目撃して通報・救護することは明確に分けて考える必要があります。
火災や交通事故の現場には二次災害の危険があり、見物人が消防・救急・警察活動の妨げになる場合もあります。気になる心理の仕組みと、実際に遭遇したときの適切な行動を知っておくことが大切です。
火事や事故を「見たい」と感じる人は珍しくない
サイレンや衝突音など突然の異変があると、人は自然にその方向へ注意を向けます。これは「事故が好き」という意味とは限らず、自分や家族に危険がないか、周辺で何が起きているのかを把握したいという気持ちも含まれます。
例えば自宅の近くで消防車が何台も止まれば、「自宅周辺に延焼する可能性はないか」「知人の家ではないか」「道路が通行できるか」と確認したくなることがあります。一方、遠くの事故で自分に関係がないと分かれば、そのまま離れる人もいます。
したがって、火事や交通事故が発生したときに見に行くかどうかは人それぞれです。興味から近づく人もいれば、危険だから近づかない人、必要な情報だけ確認する人もいます。
なぜ重大な出来事ほど気になってしまうのか
日常では起こらない出来事には情報としての新奇性があります。特に火災や大きな交通事故は生命や安全に関係するため、日常的な出来事より強く注意を引きやすくなります。
さらに「何が起きたのか分からない」という情報不足も好奇心を強める要因になります。消防車は見えるものの火災場所が分からない、道路が封鎖されているものの事故の状況が分からない、といった状態では理由を確かめたくなることがあります。
ただし、気になることと現場まで接近することは別です。安全上の必要がなければ、消防・警察などから発表される情報を確認するだけでも目的を果たせる場合があります。
火災現場を見物しに行くのは危険
火事の場合、炎が見えている場所だけが危険とは限りません。煙、有害な燃焼生成物、飛散物、爆発、建物の倒壊、延焼などによって、離れた場所にも危険が及ぶ可能性があります。
消防庁も火災を含む各種災害への備えや安全に関する情報を提供しています。火災を発見した場合は安全を確保したうえで119番通報することが基本です。[参照:総務省消防庁]
また、消防車が活動する道路へ見物人が集まれば、消防隊員の移動や資機材の搬送、救急車の進入などを妨げる可能性があります。既に消防活動が始まっていて自分が当事者でも目撃者でもないなら、規制や消防・警察の指示に従って距離を取るのが安全です。
交通事故では「見るための脇見」が新たな事故につながる
交通事故現場でも同様です。特に車を運転している最中、反対車線の事故を見ようとして速度を不自然に落としたり、事故車両へ視線を向け続けたりすることは危険です。
前方への注意がおろそかになれば、追突や車線逸脱など新たな事故を起こす可能性があります。事故現場付近では警察官の誘導、停止車両、歩行者、救急隊員など普段とは異なる状況が発生するため、むしろ通常以上に運転へ集中する必要があります。
「何が起きたか見たい」という気持ちより、自分が次の事故を起こさないことを優先するのが基本です。警察官や誘導員がいる場合にはその指示に従い、安全な速度で通過します。
事故を最初に目撃した場合は「野次馬」とは話が違う
興味本位で後から事故現場へ見に行くことと、事故発生を目の前で目撃することは状況が異なります。まだ警察や救急へ連絡されていない可能性があるなら、まず自分自身の安全を確保したうえで110番・119番への通報を検討します。
交通事故の当事者には道路交通法上、負傷者の救護や道路上の危険防止、警察への報告などが求められます。また、事故の目撃者であれば、後から警察に状況を尋ねられた際に目撃内容が重要な情報になることもあります。
負傷者がいる場合でも、交通量が多い道路へ不用意に飛び出すなど、自分まで事故に遭う行動は避けなければなりません。通報時には場所、負傷者の有無、事故の概要などを落ち着いて伝え、通信指令員の案内に従うのが基本です。
事故現場の撮影やSNS投稿にも配慮が必要
スマートフォンの普及によって、事故や火災を見かけるとすぐ撮影する人もいます。しかし、撮影できる状況だからといって何でも公開してよいとは限りません。
負傷者や被害者、その家族にとっては非常に深刻な出来事です。顔、ナンバープレート、自宅、勤務先など個人を特定できる情報が映り込む場合もあります。また、まだ家族へ連絡されていない段階で事故の画像が拡散される可能性も考える必要があります。
さらに救助の邪魔になる場所で撮影したり、立入規制を越えて撮影したりするのは避けるべきです。事故の記録が必要な当事者・目撃者の場合と、SNSへ投稿するための撮影は目的が異なります。
気になるときは現場へ行かず情報を確認する方法もある
自宅周辺で多数の消防車やパトカーのサイレンが聞こえ、「自分にも影響があるのでは」と心配になる場合があります。そのようなときでも、必ず現場まで歩いて確認する必要はありません。
自治体や消防本部、警察などが災害・交通規制情報を発信している地域であれば、公式サイトや防災情報を確認できます。避難指示などが出ている場合には、見物ではなく自分自身の安全確保を優先します。
一方、煙や炎を自分で発見し、まだ通報されているか分からない場合は「誰かが通報しているだろう」と決めつけず119番へ連絡することが重要です。消防庁は119番について、消防車・救急車が必要な場合の緊急通報として案内しています。[参照:総務省消防庁 119番緊急通報]
まとめ:火事や事故が気になっても「見物のために近づかない」が安全
火事や交通事故が起きたとき、何が起きたのか気になって見たくなる人はいます。一方で、危険を感じて近づかない人もおり、反応には個人差があります。異常事態へ注意が向くこと自体を特別なことと考える必要はありません。
ただし、興味本位で現場へ近づくことには、二次災害に巻き込まれたり、消防・救急・警察の活動を妨げたりするリスクがあります。運転中なら事故現場への脇見が新たな事故の原因になる可能性もあります。
偶然事故を目撃した、まだ通報されていない火災を発見した、負傷者がいるといった場合には、安全を確保して110番・119番へ通報することが優先です。それ以外では規制区域へ近づかず、必要であれば公的機関の情報を確認するという距離感が、安全で適切な対応といえるでしょう。