パーソナルジムで契約前と説明が違ったら取消しできる?消費者契約法の不実告知・キャンセル不可条項・証拠を解説

パーソナルジムで数十万円の契約をした後、「契約前に聞いていたサービス内容と実際の条件が違った」と分かった場合、契約書に「契約後のキャンセル・返金不可」と書かれていても、それだけで必ず契約を取り消せなくなるとは限りません。

重要になるのは、単なる心変わりによる解約なのか、それとも契約するかどうか、あるいはどのプランを選ぶかという判断に影響する重要な事項について、事実と異なる説明を受け、それを事実だと誤認して契約したのかという点です。後者では消費者契約法による取消しが問題になる可能性があります。

ただし、「説明が違った=必ず全額返金」と自動的に決まるものでもありません。実際の説明内容、その事項の重要性、説明によってどのような誤認をし、それによって契約したのか、さらに双方の主張を裏付ける資料などを個別に検討する必要があります。

契約前に事実と違う説明をされた場合は「不実告知」が問題になる

消費者契約法は、消費者と事業者との情報量や交渉力の格差を踏まえ、不当な勧誘によって締結された契約について取消しの制度を設けています。消費者庁も、重要事項について事実と異なることを告げ、消費者がその内容を事実であると誤認して契約した場合の「不実告知」を取消しの対象として説明しています。[参照:消費者庁 消費者契約法]

例えば、あるパーソナルジムにAコースとBコースがあり、「Aコースには特定設備の利用が付くが、Bコースには付かない」というだけなら、それ自体が事実であれば問題ではありません。しかし消費者が「Bコースに追加料金でその設備を付けられますか」と具体的に質問し、実際には追加できるにもかかわらず「できません」と回答されたのであれば、不実告知に該当する可能性を検討する余地があります。

特に、そのオプションを利用できるかどうかがプラン選択の重要な判断材料だったことを事業者側も認識していた事情があれば重要です。ただし、実際に何と説明されたのか、法律上の「重要事項」に該当するのか、誤認と契約との因果関係が認められるのかは個別事情によって判断されます。

「その説明がなければ契約内容が違った」という因果関係が重要

不実告知を考えるうえでは、単にスタッフが間違ったことを言ったというだけでなく、その説明によって消費者が誤認し、その誤認に基づいて契約の意思表示をしたという関係が重要になります。

例えば「希望するサーキットを低額コースには追加できない」と説明されたため、「サーキットを諦めて低額コースを選ぶ」「サーキットを使うため不要なサービスを含む高額コースを選ぶ」といった二択で悩んでいたとします。その後、実際には低額コースへ追加料金でサーキットを付けられたと判明したのであれば、オプションの可否はコース選択に直接影響していたと主張する材料になります。

反対に、誤った説明と契約判断との関係がほとんどなかった場合には、取消しを主張するハードルは上がります。そのため「何が事実と違っていたか」だけでなく、正しい説明を受けていたらどの契約を選んでいたのかまで時系列で整理することが大切です。

「契約後のキャンセル・返金不可」と不実告知による取消しは別に考える

契約書に「契約後のキャンセルはできません」「返金は行いません」という条項がある場合、通常の自己都合による中途解約については重要な契約条件になります。しかし、それと消費者契約法に基づく取消しの主張は同じ問題ではありません。

「やっぱり通いたくなくなったので解約したい」という通常の解約と、「事実と異なる勧誘によって誤認して契約したので意思表示を取り消す」という主張は法的な性質が異なります。したがって、キャンセル不可に同意した事実だけから、不実告知などを理由とする法定の取消しまで当然に排除されるとはいえません。

消費者契約法には不当な勧誘による契約の取消しだけでなく、不当な契約条項を無効とする規定もあります。事業者が契約書に何を書いても法律上の消費者の権利を自由に排除できるわけではありません。[参照:消費者庁 消費生活の制度・環境づくり]

パーソナルジムなら無条件でクーリング・オフできるわけではない

ここでは「取消し」と「クーリング・オフ」も区別しておく必要があります。国民生活センターは、スポーツジム等について、店舗で通常契約した場合などは原則としてクーリング・オフできないと注意喚起しています。パーソナルジムだから契約後8日以内なら必ず無条件で解除できる、というわけではありません。[参照:国民生活センター スポーツジム等の契約トラブル]

一方で、契約の方法が訪問販売や電話勧誘販売など特定商取引法上の別の取引類型に該当する場合には話が変わる可能性があります。そのため契約した場所・勧誘方法まで確認する必要があります。

つまり、「クーリング・オフできない」「契約書上の通常解約ができない」ことと、「不当な勧誘を理由とする取消しが成立するか」は分けて検討することが重要です。

録音がなく「言った・言わない」でも直ちに諦める必要はない

契約時の会話を録音しておらず、スタッフと消費者の主張が正反対になるケースは珍しくありません。録音がないから直ちに主張できなくなるわけではありませんが、争いになれば「実際にどのような説明が行われたのか」を裏付ける材料が重要になります。

そこで、契約書だけでなく、料金表、コース比較表、オプション一覧、広告、公式サイト、LINE・メール・チャット、契約後に受け取った説明資料、問い合わせ履歴などを保存します。担当者との会話についても、日付、場所、質問した内容、回答、その場で悩んだ内容、契約後に何を言われたのかを記憶が鮮明なうちに時系列で書き残しておくことが有用です。

例えば契約直後のLINEに「今日初めて追加できると聞きました。契約前にはできないと説明されましたよね」と送っており、それに対する店舗側の返信が残っていれば、経緯を検討する材料になります。店舗側が後から示した説明内容や、オプション制度が当時実際に存在していたことを示す料金表なども保存しておきましょう。

契約後の担当者の発言も経緯を整理する材料になる

契約後に担当者から「追加できると知っていたらすぐ決めていましたか」といった趣旨の発言があった場合、それ自体だけで不実告知が証明されるとは限りません。しかし、契約前後にどのような情報共有があったのかを検討する事情の一つにはなり得ます。

重要なのは、その発言だけを切り取るのではなく、「契約前に何を質問したか」「何と回答されたか」「なぜ迷ったのか」「契約後に初めて何を知ったのか」「その直後にどのような会話をしたか」を一本の時系列として整理することです。

店舗側が「食事の有無で迷っていた」と説明し、消費者側が「サーキットを追加できるかどうかで迷っていた」と主張しているのであれば、その食い違いも明確に記録します。第三者へ相談するときにも、感情的な評価より、この時系列と客観資料を提示するほうが状況を理解してもらいやすくなります。

40万円規模の契約なら188へ早めに相談する

店舗と直接話しても「担当者と認識が違うので返金できない」という回答で止まってしまった場合、次の選択肢として消費生活センターへの相談があります。国民生活センターもスポーツジムやパーソナルジムについて解約などの相談が寄せられているとして、トラブル時には消費生活センター等への相談を案内しています。[参照:国民生活センター スポーツジム等の契約トラブルにあわないために]

全国共通の消費者ホットラインは188です。最寄りの消費生活センター等につながります。相談するときには、契約書、利用規約、料金表、広告、支払記録、メールやLINE、店舗とのやり取り、作成した時系列メモを用意しておくと話が進みやすくなります。

約40万円のように金額が大きく、取消しの可否について店舗との見解が完全に対立している場合には、消費生活センターへの相談に加え、必要に応じて弁護士など法律の専門家へ契約書と証拠を見せて相談することも検討できます。

店舗へ再度申し入れるなら「キャンセル希望」だけにしない

事業者へ再度申し入れる場合には、「気が変わったのでキャンセルしたい」という表現だけでは、通常の自己都合解約として処理される可能性があります。問題としている契約前の説明を具体的に示すことが重要です。

例えば、①契約前に低額コースへ当該オプションを追加できるか質問した、②追加できないとの説明を受けた、③その説明を事実だと認識してコースを選択した、④契約後に実際には追加可能だと説明された、⑤正しい情報を知っていれば契約判断が異なっていた、という順序で整理します。

そのうえで、消費者契約法上の取消しが成立する可能性について確認を求めていることを明確にし、できればメールや書面など記録が残る方法で回答を求めます。実際に取消しが成立するかどうかは個別事情によるため、店舗が拒否した場合には第三者機関や専門家へ資料一式を持ち込むのが適切です。

まとめ:キャンセル不可の同意だけで不実告知の問題まで終わるわけではない

パーソナルジムの契約前に、プランやオプションという契約判断に関わる事項について事実と異なる説明を受け、それを事実だと誤認した結果として契約したのであれば、消費者契約法の不実告知などを理由とする取消しを検討できる可能性があります。ただし、具体的な事実関係によって結論は変わり、単に説明不足があっただけで必ず取消しが認められるわけではありません。

また「契約後のキャンセル・返金不可」という契約条件に同意していても、通常の自己都合解約と、不当な勧誘を理由とする法定の取消しは別の問題として検討する必要があります。一方、通常の店舗契約によるパーソナルジムは原則としてクーリング・オフできるサービスではない点にも注意が必要です。

録音がなく「言った・言わない」になっている場合でも、契約書、料金表、広告、メッセージ、契約直後の問い合わせ、店舗側からの回答、当時作成したメモなどを可能な限り保存してください。高額な契約で店舗との話し合いが平行線になった場合は、自己判断で諦める前に消費者ホットライン188を通じて消費生活センターへ相談し、必要に応じて法律の専門家へ個別の契約内容と証拠を確認してもらうことが重要です。

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