イベント制作、出演、撮影、設営、運営などに携わったにもかかわらず、約束された報酬や業務委託費が支払われない場合、時間が経つほど「担当者を探すこと」に意識が向きがちです。しかし、報酬回収で重要なのは、公開情報と未確認情報を分けたうえで、誰と契約したのか、いくらの債権があるのか、支払期日はいつだったのかを証拠で固めることです。
2025年に沖縄で開催された「X BORDER 2025」について調査すると、公開情報からイベントの開催事実、主催会社、代表者などは確認できます。一方、「関係者への未払いが発生している」「代表者が別会社で勤務している」といった個別の情報については、2026年8月30日時点で信頼できる公開資料から事実として確認できないものがあります。
本記事では、確認できた事実を整理するとともに、イベント報酬が支払われない場合に取るべき現実的な手順を解説します。個別案件では契約内容や立場によって適用される法律が変わるため、高額な未払いについては弁護士などへの個別相談も検討してください。
X BORDER 2025について公開情報から確認できること
X BORDER 2025の公式サイトによると、イベントは2025年7月20日に沖縄県宜野湾市の沖縄コンベンションセンターで開催されています。公式サイトには、主催がXBP株式会社、共催がNPO法人OEPAと株式会社栄登、制作が株式会社PIFと記載されています。[参照] X BORDER 2025公式サイト
XBP株式会社が2025年7月22日に発表した開催レビューでも、開催日は7月20日、会場は沖縄コンベンションセンター、主催はXBP株式会社とされています。そのため、「2025年7月25日に開催されたイベント」という情報については日付に注意が必要です。少なくとも現在確認できる公式資料では、X BORDER 2025の開催日は7月20日です。[参照] XBP株式会社の開催レビュー
同資料ではライブ、映像コンペティション、ブラジリアン柔術、アルティメットシューティング、トークステージなど複数の企画が実施されたことも確認できます。したがって、業務の種類によって実際の発注元や契約相手が異なっている可能性も考慮する必要があります。
XBP株式会社と代表者について現在確認できる情報
XBP株式会社の公式サイトでは、2026年8月時点でも会社概要が掲載されています。そこでは会社名を「XBP株式会社」、所在地を東京都中央区日本橋2-3-21 八重洲セントラルビル9F、代表取締役を川邊晃氏としています。[参照] XBP株式会社 会社概要
同社公式サイトのメンバーページにも川邊氏が「代表取締役/CEO」として掲載されています。また、XBP株式会社の公式サイト自体も2026年8月時点で閲覧可能です。[参照] XBP株式会社 メンバー
一方、インターネット上のプロフィールは更新が遅れることもあります。現在の代表権や本店所在地などを債権回収のために正確に確認するなら、ウェブサイトだけに頼らず、法務局で会社の登記事項証明書を取得する方法があります。会社・法人の登記事項証明書はオンラインでも交付請求できます。[参照] 法務局「登記事項証明書(会社・法人)を取得したい方」
「別会社で働いている」という情報は確認できる?
未払い問題で特に慎重に扱う必要があるのが、代表者や担当者の現在の勤務先に関する情報です。2026年8月30日時点で公開情報を調査した範囲では、川邊晃氏が現在株式会社カスタムジャパンで勤務していることを裏付ける、同社公式サイトなどの信頼できる公開資料は確認できませんでした。
したがって、「カスタムジャパンに勤務している」「訪問したが本人に会わせてもらえなかった」といった情報を、裏付けのない状態で事実としてインターネット上に拡散することは避けたほうが安全です。第三者企業が関係している証拠がないのであれば、その会社に未払い債務の責任があるかのような表現も避けるべきです。
また、仮に代表者が別会社で勤務していたとしても、XBP株式会社に対する債権と、その勤務先企業は原則として別の問題です。勤務先と思われる会社へ押しかけたり、社員へ繰り返し連絡したりするより、契約上の債務者に対して正式な請求手続きを進めるほうが合理的です。
最初に確認するべきなのは「誰が発注者だったか」
イベント案件では「イベント主催者=自分に報酬を支払う会社」とは限りません。主催会社から直接発注された人もいれば、制作会社、広告代理店、出演者の所属会社、施工会社などから再委託されている人もいるためです。
例えば、X BORDER 2025について公式サイトではXBP株式会社が主催、NPO法人OEPAと株式会社栄登が共催、株式会社PIFが制作とされています。しかし、この記載だけから個々のスタッフや事業者への支払義務者を決めることはできません。
契約書、発注書、見積書、請求書、メール、LINEやチャット、業務指示などを確認し、「誰から、どの業務を、いくらで依頼されたか」を特定します。請求書をXBP株式会社宛てに発行したという事実だけでなく、発注時のやり取りまで確認することが重要です。
未払い報酬を回収する前に証拠を整理する
相手と連絡が取れなくなった場合には、電話を何度もかけ続けるより先に証拠を保存します。特にイベント案件では時間が経つにつれてメールやチャット履歴を失う可能性があるため、早めの保存が重要です。
具体的には、次の資料を一つのフォルダにまとめておくと、その後の請求や法律相談がスムーズになります。
- 契約書・業務委託契約書
- 発注書・注文書
- 見積書と請求書
- 報酬額と支払日が分かるメール・LINE・チャット
- 業務内容を指示されたメッセージ
- イベント当日に実際に業務を行ったことが分かる資料
- 納品したデータや成果物
- 交通費・宿泊費などの精算条件
- 相手への催促メールと送信日時
- これまでに一部入金があれば、その振込記録
正式な契約書がなくても直ちに請求不能になるわけではありません。メールやチャットに「○万円でお願いします」「○月末に支払います」といったやり取りが残っていれば、契約内容を裏付ける重要な資料になり得ます。
フリーランスなら「60日以内」の支払いルールも確認
個人でイベント制作、撮影、デザイン、出演、音響などを請け負った場合には、2024年11月に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法の対象となる可能性があります。ただし、発注者と受注者の属性など一定の要件があるため、すべての業務委託に自動的に適用されるわけではありません。
対象となる取引では、発注事業者は業務委託時に業務内容、報酬額、支払期日などを原則として書面または電磁的方法で明示する必要があります。また、原則として給付を受領した日・役務の提供を受けた日から60日以内のできる限り短い期間で支払期日を設定し、その期日までに報酬を支払う義務があります。[参照] 公正取引委員会 フリーランス法特設サイト
公正取引委員会は「請求書が提出されていない」という理由だけで支払いを遅らせてよいわけではないことも案内しています。イベント終了から長期間経過している案件なら、自分の契約がフリーランス法の対象か確認する価値があります。
連絡が取れない場合は内容証明郵便による請求を検討する
メール、電話、SNSなどへの催促に反応がない場合、次の段階として書面による請求を検討します。重要なのは感情的な文章ではなく、「契約」「履行した業務」「請求額」「支払期日」「振込先」「回答・支払いを求める期限」を明確にすることです。
例えば「イベント業務委託費○○円について、契約に基づく支払期日を経過しています。○年○月○日までに指定口座へ支払ってください」といった形で整理します。配達記録が残る方法や内容証明郵便を利用すれば、いつ、どのような請求をしたかを後から証明しやすくなります。
会社の公式サイトに掲載されている住所だけでなく、法的手続きへ進むのであれば登記事項証明書を取得し、現在登記されている本店所在地や代表者を確認してから送付するのが堅実です。
支払督促という方法もある
請求金額と相手方が明確で、金銭の支払いを求めるケースでは「支払督促」を利用できる場合があります。裁判所によると、支払督促は金銭などの給付について債権者の申立てに基づいて行われる手続きです。原則として書類審査で進むため、通常訴訟のように最初から法廷で審理する手続きではありません。[参照] 裁判所「支払督促」
相手が支払督促を受け取って2週間以内に異議を申し立てなければ、申立てにより仮執行宣言が付され、その後は強制執行へ進める可能性があります。一方、相手が異議を申し立てれば通常の民事訴訟手続きへ移行します。
法人を相手として支払督促を申し立てる場合、裁判所は登記事項証明書を必要書類として案内しています。この意味でも、会社の現状を登記で確認しておくことには実務的な意味があります。
60万円以下なら少額訴訟も選択肢
請求額が60万円以下であれば、少額訴訟を利用できる場合があります。裁判所によると、少額訴訟は60万円以下の金銭支払請求について、原則1回の審理で解決を図る制度です。[参照] 裁判所「少額訴訟」
少額訴訟では最初の期日までに主張と証拠を準備する必要があります。そのため、「仕事をしたことは分かるが報酬額を示す資料がない」という状態より、発注メッセージ、請求書、納品記録などを時系列で整理した状態のほうが対応しやすくなります。
なお、60万円を超えるから裁判ができないという意味ではありません。裁判所の案内では、原則として140万円以下の民事事件は簡易裁判所、140万円を超える事件は地方裁判所が第一審を扱います。報酬や請負代金については支払督促、調停、訴訟など複数の手段があります。[参照] 裁判所「簡易裁判所の民事事件Q&A」
金額が大きい場合は本人探しより弁護士への相談を優先する
未払い額が大きい場合、「代表者が今どこにいるのか」を個人で追い続けるより、契約書と証拠を持って弁護士に相談するほうが安全かつ現実的です。特に数十万円から数百万円規模になれば、債務者の特定、請求先、遅延損害金、仮差押えの必要性、訴訟手続きなどをまとめて検討する価値があります。
また、契約相手が法人なら、原則としてまず法人に対する債権として考えます。「代表取締役だから会社の借金を必ず個人で払わなければならない」というわけではありません。個人保証がある場合などを除き、会社と代表者個人の法的責任は区別して検討する必要があります。
勤務先や居場所を探し回ることより、「債務者は誰か」「請求額はいくらか」「契約を証明できるか」「どの財産に執行できる可能性があるか」を法律の手続きに沿って整理することが重要です。
複数の未払い関係者がいる場合も証拠の共有には注意
同じイベントに携わった複数人が「自分も支払われていない」と申し出る場合、その情報は状況把握の手掛かりになります。しかし、SNSで個人情報を晒したり、確認できていない勤務先・住所・家族情報などを共有したりすることには別の法的リスクがあります。
複数の債権者が存在する可能性がある場合でも、それぞれ契約相手、契約金額、業務内容、支払期日が異なることがあります。「イベント全体で未払いがある」という話と、「自分が特定の会社に対して○万円の確定した債権を持っている」という話は分けて考える必要があります。
情報交換をするのであれば、契約書、発注元、支払期日など債権回収に必要な事実を中心にし、未確認の私生活情報や勤務先情報を拡散しないことが安全です。
「詐欺」「逃亡」と断定するのは避ける
長期間報酬が支払われず、連絡も取れなければ強い不信感を抱くのは自然です。しかし、未払いが存在することと、刑事上の詐欺が成立することは同じではありません。
単なる債務不履行なのか、資金繰りの問題なのか、契約内容について争いがあるのか、最初から支払う意思がなかったのかによって法的評価は変わります。十分な証拠がない状態で「詐欺会社」「逃亡した」などと公開すると、未払い問題とは別のトラブルを生む可能性があります。
そのため公開記事やSNSでは、「○月○日に請求したが○月○日時点で入金を確認できない」など、自分が証明できる事実を中心に記録することが重要です。
まとめ|X BORDER 2025の公開情報と未払い時に取るべき行動
公開資料から確認できるX BORDER 2025の開催日は2025年7月20日で、会場は沖縄コンベンションセンター、主催はXBP株式会社です。XBP株式会社の公式サイトでは、2026年8月時点でも川邊晃氏を代表取締役として掲載しています。
一方、「イベント関係者への未払いが発生している」「川邊氏と連絡が取れない」「現在カスタムジャパンに勤務している」といった個別情報については、今回確認した公開資料だけでは事実として裏付けることができません。特に第三者企業の勤務情報については、確認できない情報を断定して拡散しないことが重要です。
実際に報酬が未払いになっている場合には、契約書・発注書・メール・チャット・請求書・業務実施記録を保存し、契約上の債務者を特定することが最優先です。そのうえで登記事項証明書による法人情報の確認、書面による催告、支払督促、少額訴訟または通常訴訟などを検討します。
特に高額な未払いでは、代表者の現在地を個人で探すことに時間を費やすより、資料一式を整理して弁護士へ相談し、債権回収の可能性と適切な手続きを判断してもらうほうが現実的です。フリーランスとして受注した案件なら、フリーランス法の適用対象となるかについても併せて確認するとよいでしょう。
※本記事は2026年8月30日時点で確認できるXBP株式会社、X BORDER 2025公式サイト、裁判所、法務局、公正取引委員会などの公開情報を基に一般的な制度を整理したもので、特定の個人・法人による未払い、違法行為、勤務先等を認定するものではありません。個別の債権回収については契約内容や証拠によって結論が異なります。